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55/アスミからの伝達事項(2)
「それともう一つ」
アスミの声のトーンは暗い。
図書館に隣接する地下鉄の駅からは、疎らに帰宅途中の人々が出てきては、各々の目指す方角に向かって歩みを進めていく。そんな家路へ向かう流れからは切り取られたように、図書館脇の石のベンチにアスミは座っている。
「明日以降の戦いの中で、ジョー君が私と志麻、どちらかしか助けられないという場面になったら」
アスミは、自分の中では長い時間かけて考え抜いていて、結論が出ていることを、ただ共有してほしい。そんな事務的とも取れる口調でジョーに告げた。
「絶対に志麻の方を選んで」




