274(最終節)/「唸れ!愛と勇気の主砲八連撃!」
ユイリィ・ネクロス・ヴァルケニオン・デビルの咆哮に、宇宙が鳴動する。
しかし破滅の悪魔を前にして、「世界」の涼風に黒髪を靡かせる二つの存在――宮澤ジョーと戦艦陸奥は「ゆうゆう」と無形の構えをとった。
不可思議な二つの「たましい」は、支配し合うでなく、依存し合うでなく、ただ並び立ちゆらめき合っていて。
二人の瞳はどこか、童心の少年/少女めいている。
「やはり、DDTでいきますか!?」
「や、あれは組みやすい相手じゃないと。デビル、凶々しくて組みづらそうだし、ここは、打撃でいこう」
「ラジャー!」
ジョーと陸奥が並んでユイリィ・ネクロス・ヴァルケニオン・デビルへ向かって突撃する。
これで最後だ。
行くぜ!
「「主砲・八連撃!」」
歴史に記されたる、戦艦陸奥の主砲は八門。
紅の発光は、ジョーと陸奥に四つずつ宿った。
一撃。
デビルの右フックをダッキングで交わしてからの、ジョーの左ボディーブロー。
爆裂。
ニ擊。
ぐらついたデビルの脳天への、陸奥の跳躍からの踵落とし。
灼熱。
三擊。
デビルの下がった顎への、ジョーのアッパーカット。
鮮烈。
ひぃじーじの縁で陸奥が助力してくれる。
お祖父ちゃんとお祖母ちゃんの愛はこの胸に宿ってる。
父と母から貰った体がある。
何も怖くなかった。
四擊。
陸奥の金的。
強烈。
デビルの体が僅かに浮いて。
五擊。
デビルの胸板へのジョーの肘鉄。
激烈。
悪魔の体に激痛が駆け巡って。
六擊。
陸奥の脳天唐竹割り。
峻烈。
悪魔の頭頂から尾まで衝撃は迸って。
七擊と八擊。最後の攻撃。
ジョーは左の、陸奥は右の、渾身の中断突き。
炸裂。そして決着。
重なった赤光に貫かれたユイリィ・ネクロス・ヴァルケニオン・デビルは大の字にひっくり返った。完全にノックアウトである。
燃え盛る闘争の時間は収束を始め、宇宙という暗闇の中に響く、自分という存在の静けさの音が意識され始める。
勝ったか。
地球が遠方に仰望できる。
地球って本当に青かったんだな、何て感慨深く思いながら。
倒れ付していたヴォーちゃんに手を差しのべ、片膝立ちになって優しく上体を起こしてやったジョーだったが。
あ、れ。
ヴォーちゃんを抱き起こすどころか、自分がヴォーちゃんの胸に顔を埋めるように突っ伏してしまう。
「ジョー?」
何だろう、体が熱い。
ああ。俺の体、燃えているのか。
デビルが吐いた火炎の残滓? 違う、俺が内側から、燃えているんだ。
それにこれ、もう、俺という存在の中心は、燃えてしまっている。
「悪い、ヴォーちゃん。ここまでっぽい」
俺、燃え尽きていくのか。
瞳を瞑る。
なるほど。
納得は、ある。大楼閣。ちょっと無理し過ぎたもんな。
俺の生還は、ならずか。
ジョーの異変に気づいたヴォーちゃんの悲痛な声も、どこかもう遠くて。
もうちょっとで、ばっちりスヴャトが歩んだ歴史の先まで行けたのに。
ここは、更新できずか。
残念かな。
でも、アスミが生きていて。明日も「世界」に陽は昇る。良くやったよ、俺。
――ああ、何か。
これが、ニ0一三年にあった戦いの終わり。
戦艦陸奥・朧が崩壊していく中、一条の流星が「彼方」へと飛び立って。
――真っ白に、燃え尽きていく感じなんだな。
宮澤ジョーという少年の物語の終わり。
ジョーの意識が消えていく。
ジョーの世界が消えていく。
ジョーの存在が消えていく。
全ては「虚構」だったとでもいうように、やがて何も残らない「無」へと至った。
/最終話「大楼閣と古の戦艦」・了
グランドエピローグへ続く




