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非幸福者同盟  作者: 相羽裕司
最終話「大楼閣と古の戦艦」
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274/277

274(最終節)/「唸れ!愛と勇気の主砲八連撃!」

 ユイリィ・ネクロス・ヴァルケニオン・デビルの咆哮(ほうこう)に、宇宙が鳴動する。


 しかし破滅の悪魔を前にして、「世界」の涼風に黒髪を靡(なび)かせる二つの存在――宮澤ジョーと戦艦陸奥は「ゆうゆう」と無形(むぎょう)の構えをとった。


 不可思議な二つの「たましい」は、支配し合うでなく、依存し合うでなく、ただ並び立ちゆらめき合っていて。


 二人の瞳はどこか、童心の少年/少女めいている。


「やはり、D(ディー)D(ディー)T(ティー)でいきますか!?」

「や、あれは組みやすい相手じゃないと。デビル、凶々(まがまが)しくて組みづらそうだし、ここは、打撃(パンチ)でいこう」

「ラジャー!」


 ジョーと陸奥が並んでユイリィ・ネクロス・ヴァルケニオン・デビルへ向かって突撃する。


 これで最後だ。


 行くぜ!


「「主砲・八連撃!」」


 歴史に記されたる、戦艦陸奥の主砲は八門。


 紅の発光は、ジョーと陸奥に四つずつ宿った。


 一撃。


 デビルの右フックをダッキングで交わしてからの、ジョーの左ボディーブロー。


 爆裂。


 ニ擊。


 ぐらついたデビルの脳天への、陸奥の跳躍からの踵(かかと)落とし。


 灼熱。


 三擊。


 デビルの下がった顎への、ジョーのアッパーカット。


 鮮烈。


 ひぃじーじの縁で陸奥が助力してくれる。


 お祖父ちゃんとお祖母ちゃんの愛はこの胸に宿ってる。


 父と母から貰った体がある。


 何も怖くなかった。


 四擊。


 陸奥の金的。


 強烈。


 デビルの体が僅(わず)かに浮いて。


 五擊。


 デビルの胸板へのジョーの肘鉄。


 激烈。


 悪魔の体に激痛が駆け巡って。


 六擊。


 陸奥の脳天(のうてん)唐竹(からたけ)割(わ)り。


 峻烈。


 悪魔の頭頂から尾まで衝撃は迸(ほとばし)って。


 七擊と八擊。最後の攻撃。


 ジョーは左の、陸奥は右の、渾身の中断突き。


 炸裂。そして決着。


 重なった赤光に貫かれたユイリィ・ネクロス・ヴァルケニオン・デビルは大の字にひっくり返った。完全にノックアウトである。


 燃え盛る闘争の時間は収束を始め、宇宙という暗闇の中に響く、自分という存在の静けさの音が意識され始める。


 勝ったか。


 地球が遠方に仰望できる。


 地球って本当に青かったんだな、何て感慨深く思いながら。


 倒れ付していたヴォーちゃんに手を差しのべ、片膝立ちになって優しく上体を起こしてやったジョーだったが。


 あ、れ。


 ヴォーちゃんを抱き起こすどころか、自分がヴォーちゃんの胸に顔を埋めるように突っ伏してしまう。


「ジョー?」


 何だろう、体が熱い。


 ああ。俺の体、燃えているのか。


 デビルが吐いた火炎の残滓?  違う、俺が内側から、燃えているんだ。


 それにこれ、もう、俺という存在の中心は、燃えてしまっている。


「悪い、ヴォーちゃん。ここまでっぽい」


 俺、燃え尽きていくのか。


 瞳を瞑る。


 なるほど。


 納得は、ある。大楼閣。ちょっと無理し過ぎたもんな。


 俺の生還は、ならずか。


 ジョーの異変に気づいたヴォーちゃんの悲痛な声も、どこかもう遠くて。


 もうちょっとで、ばっちりスヴャトが歩んだ歴史の先まで行けたのに。


 ここは、更新できずか。


 残念かな。


 でも、アスミが生きていて。明日も「世界」に陽は昇る。良くやったよ、俺。



――ああ、何か。



 これが、ニ0一三年にあった戦いの終わり。


 戦艦陸奥・朧が崩壊していく中、一条の流星が「彼方」へと飛び立って。



――真っ白に、燃え尽きていく感じなんだな。



 宮澤ジョーという少年の物語の終わり。


 ジョーの意識が消えていく。


 ジョーの世界が消えていく。


 ジョーの存在が消えていく。


 全ては「虚構(ニセモノ)」だったとでもいうように、やがて何も残らない「無」へと至った。



  /最終話「大楼閣と古の戦艦」・了

 グランドエピローグへ続く

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