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非幸福者同盟  作者: 相羽裕司
最終話「大楼閣と古の戦艦」
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271/277

271/一つの詩を二つの言葉で

 暗黒大巨神が「祝吉屋」に入ると、球体世界の下半分である「墓地(ネクロポリス)」が空白となったために土台を失い、「境界域」――「構築物(コンストラク)の(テッド・)歴史図書館(ヒストリア)」は崩壊をはじめた。


 おそらく「構築物(コンストラク)の(テッド・)歴史図書館(ヒストリア)」は消滅し、残るのは「祝吉屋」だけとなる。


「さっきの『炎(ザ・プリンセ)輝(ス・オブ・ザ)姫(・フレイム)』で私が貯めてたオントロジカ、全部使っちゃって。残念だけど宇宙(そら)までジョーを助けにいけない……というか、私、もう眠くなっちゃって」


 崩れ落ちる夢守永遠を。アンナを陽毬が抱きとめる。


「アスミさんは、理華さんとアンナを抱えて脱出を。今のあなたの能力なら、この『境界域』が崩壊する前に、宇宙へは無理でも、もといた『S市』に逃れることができるでしょう。二人とも、私の大事な人です」

「陽毬さんは、どうするの?」

「私は、ここまで。元々仮初めの身なれば。兵司から借り受けた現界のためのオントロジカも尽きた今、ここまでです。ですが、それは私、宮澤陽毬の話で、彼女(・・)はジョーの元へ行くと言ってます。


 あなた達が『なかったことにしない』を選んでくれたから。


 彼女はたぶん、世界が『次』へ進んだ証拠」



――願いを叶えるために。



「アスミさん、どうか詠じてください。私が日本語を、あなたが孫娘(カンナ)が訳してくれた英語のパートを。同時に存在してもイイという世界の、祝福の祝詞として。同じ詩を。二つの言葉で」


 アスミは納得した。


 そうだね。


 世界が終わる今だからこそ、言葉を踊らせよう。


 陽毬とアスミ、二つの存在、二つの言葉で、「詩」が場に響き始める。



――『非幸福者同盟~少女のケニング』 | -The alliance of unhappiness, and a Kenning of a girl-




――右手に橋を。 | A bridge on the right hand.



――左手に塔を。 | A tower on the left hand.



――胸には祠。 | A shrine in my heart.



――私を作っていたのは、なぁに? | What am I constructed with?



――それは和の場所で百色に揺らぎ続ける花雪。 | That is a beautiful snow flower swinging with various colors in the place of harmony.



――あるいは虚無の中で補い合い続ける暗闇と星アカリ。 | And the darkness and twinkle supporting each other in the inanity.



――そう、私を作っていたのは、この世界が何度巡っても途切れない。とっても綺麗な永久(とわ)色のチェーン | I see that the eternal chain made me, it is the beautiful chain not ended if the world refrains many times.



――そんな私は誰を待っているの? | Whom am I waiting for?



――誰かを待っている。 | I am waiting for someone.



――何処で待っているの? | Where am I waiting for someone.



――分かってる。分かってる。待ってる場所は分かってる。 | I see, I see I am knowing the place where I am waiting for someone.



――西のマリアと東のソフィアが手を繋げる場所で待ち合わせ。 | I am waiting for someone in the place west Maria and east Sophia shake hands each other.



――いずれその場所を訪れる、君の名前は。君の名前はなぁに? | What is your name? You, who will visit the place someday.



――知っている。知っている。君の名前は、「同盟」の名前。 | I know, I know your name. That is the name of the alliance.



――さあ伝えよう。伝えよう。その「同盟」の名前を伝えよう。 | I tell you, tell you, the name of the alliance.



――静かに伝えよう。その「同盟」の名前は――。 | I tell you calmly, the name of the alliance is...



――――『非幸福者同盟』。 | "The alliance of the unhappiness".



――待っている。待っている。返ってこないかもしれない返事を待っている。 | I am waiting, waiting, the reply that may not reach me.



――信じてる。信じてる。この、幸せで幸せじゃない「繋がり」を信じてる。 | I believe, believe, the band that come from happiness and unhappiness.



――ああ、やっぱり今日も。輝いた「日常」のレコードが回っている。 | Yes, An shining record of an usual day turns today.



――愛してる。愛してる。私が愛しているのはなぁに? | I love. I love. What do I love?



――分かってる。分かってる。私が愛しているものは――。

 | I see, I see the thing I love is...



――響いてる。響いてる。この世界に今日も「言葉」が、響いてる。 | Chiming. Chiming. Language is chiming in the world today.



 言葉が交わり、世界が輝くと。


 宮澤陽毬の身体から、光が飛び立っていった。


「これで私と二重に存在していた彼女に、許可がおりたのだと思います。


 この世界が破滅するかという間際において、なお、生まれるものがある。紅の彗星よ、生まれたその血潮を、閉ざさないように。どうか、思うがままに生きて」


 失った半身は、同時に全てでもあったというように、陽毬が淡い光を放ち始めた。


「エッフェル塔さんに遅れましたが、私も、ここまで。アスミさん、最後に抱きしめても、イイですか」


 アスミはそっと陽毬の胸に顔をうずめる。


 陽毬は、アスミの肩を優しく抱きしめる。


 二人の関係は複雑で、よくは分からないけれど。


「ひいお祖母(ばあ)ちゃん、ありがとう」


 とアスミは伝えた。


「アスミさんも、ごきげんよう。縁があったら、いつかどこかで」

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