22/自室にて
夜、ようやくマンションの七階の自室に帰ってきたジョーは、板張りの床に直に腰を下ろした。
牛人のこと、アスミが使った不思議な能力のこと、色々と聞きたいことがあったが、アスミとは改めて明日、いや、日付が変わったので今日の早朝にもう一度会うことになっている。というのもアスミの身体に回復の時間が必要なことを告げられたからである。ジョーは牛人との戦いでアスミが深刻なダメージを負ったのを認識していたが、アスミいわく、彼女たちの力の源になっているオントロジカというものには、身体を回復させる類の性質もあるのだという。
「あくまで少し、そして少しずつだけどね。致命傷とかはダメよ。だからジョー君も今後の戦いで自分が傷ついても大丈夫だなんては絶対に思わないで」
とはアスミの言である。アスミの身体が淡い赤光に包まれていた点、実際、アスミの呼吸が少しずつ穏やかになっている点から、ジョーはその言葉を信じた。
詳しい話は早朝、また。とはいえ、信じられない経験をしたのだ。それまでの時間で、自分で確認できることは確認しておきたい。
実を言うと、帰り道で何度か、もう一度あの陸奥という少女を呼び出してみようと試みていたのだが、彼女は出てきてはくれなかった。また、あの様々な構築物が多様に、そして少し物悲しく存在していた世界にもう一度行くこともできなくなっていた。
両親は少し離れたリビングルームの横の和室で、眠っている。明りが届いて眠りを妨げてしまうのを憚って、部屋の電気は消したまま、暗闇の中で手をかざして、もう一度つぶやいてみる。
「『共存・開始』」
するとどうだろう。手を向けた部屋の中心部に牛人と戦った時に現れた立体魔法陣が、立ち上がったではないか。
さっきまではできなかったのに、何故。正直ダメで元々、という気持ちだったので、ことの他明るい紫の光に焦る。
やがてニュっと、魔法陣の中より、今度は顔を先に出して、黒髪の少女が出てくる。広くない部屋のせいもある。至近距離で目と目が合う。
「ジョーさん。また会いましたね」
そう言って、陸奥は微笑んだ。




