2/勝てなかった話
第一話「思いがけない助力」/
植物の蔦が絡みついた道路沿いのブロック壁に、電柱の影が伸びている。照りつける日光はアスファルトの地面を焼き、生物という生物が日陰に避難したい。そんな気持ちを共有しているかのよう。
今日から夏休み。だが、開放感と鬱屈感が半々くらいの複雑な心境で、宮澤ジョーは二年半でだいぶ修復された街中を、夏季講習のための登校という目的で歩いている。
抜けるような空。だが、その先に続いて行く未来のことを考えると、気が重くなる。
少し、面白くなくても「敵わない」という話をする。
柔道、というスポーツを知っているだろうか。人を投げたり、関節を決めたり、首を絞めたりする。中学生の一時期の頃、ジョーが打ち込んだ、闘争から派生したスポーツである。
幼いなりに、力を求めていた。その道を追う過程で、少しばかりの勝利と、そして人生観に関わる敗北を経験した。
戦歴から言えば、中学の最後の夏。県で個人戦ベスト三。そして、全国大会の初戦敗退、である。
悪くは、ない。だがそれだけでは、生きていけない。
夏の暑さと最後の全中での敗北経験は、ジョーの中でリンクしている。