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180/消える煌めき
一方、大王が降り立った場に到着するなり先制攻撃を仕掛けたアスミは、胸の内に怒りが満ちているのを感じていた。
アスミが信じたこの街の灯、人々の営み。そういったものを一瞬で消し去ってしまう存在。既に多数の死者が出てしまった状況に、怒号のような気持ちが押し寄せてくる。
しかし、星の煌めきのように大王に向かって降下したアスミが作り出した火炎は、大王の体に触れる前に、跡形もなく飛散してしまった。
(何らかの、敵の能力?)
アスミは、陸奥が現界しているのを確認すると、目配せを送る。
頷いた陸奥との間には、今は「あちら」の世界でも出会っていたゆえの、深まった信頼を感じている。
陸奥は胸の徽章を指で弾いて宙に舞わせると、稲妻と共に菊一文字に変化させた。
(確かめてきて)
この場の一番の戦力である、陸奥に託す。存在変動者同士の戦いである、敵の能力を確かめ、攻略しないことには勝利はあり得ないのだ。
陸奥は抜刀すると、猛獣のような前進を続ける大王に向かって、高速で駆け出した。




