表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非幸福者同盟  作者: 相羽裕司
第八話「夢星」(後編)
168/277

168/Aドライブが必要

 早朝、ジョーが志麻の家を訪れると、まずは解析を依頼していた百色(ひゃくいろ)ちゃんから貰った四角い物体について、志麻から報告があった。


「フロッピーディスクよ」

「何だ、それは?」

「うーん。十年前くらいまではまだ見かけたらしいのだけど。PC用の記録媒体。その後、CDになったりMOってのがあったり。今だとDVDとかUSBメモリに相当するものよ」

「へー」

「で、オークションでAドライブ付きの古いノートPCを落札して、中身を見てみたんだけど……空っぽだったわ」

「マジで?」

「そ。魂のない器。百色ちゃんの話、やっぱり夢でも見てたんじゃないの?」


 百色ちゃんとの顛末(てんまつ)は、アスミには話さず志麻にだけ話していたが、志麻は未だに半信半疑のようである。ジョーとしてもあの夜のことは何だかフワっとしていて、積極的に論証する意欲も湧いてこなかった。


「じゃあまあ、この件はこの件で。それは志麻が持っててくれ。Aドライブ付きのパソコンなんて家にないし」

「いいけど。これ、1.4メガくらいしか入らないから。使い道はあんまりないかも」


 そこで話題は次に移った。


「志麻も、アスミの誕生日に何かプレゼントとかするのか?」

「するわよ。私なりに、アスミが今一番欲しいものを準備してるつもり」

「へぇー」


 それが何なのか。直接は聞かなかった。ジョーとしては、自分で考えてそこに辿り着かないといけないと思ったから。


「私。アスミの裸の写真いっぱい持ってるんだけど、隅々まで凝視して今考えてるの」


 その言動には、ジョーはちょっと引いた。


「し、志麻は本当にアスミが好きなんだなぁ」

「好きよ。宮澤君が考えてるような意味とは違うかもしれないけれど」


 穏やかな語り口だが、志麻の言葉には内に秘めた熱情のようなものがこもっている。その熱は、少しジョーにも伝播した。


「じゃ、ま、俺も考えてみるわ」

「宮澤君は」


 そこで何故か、志麻は目を伏せた。


「お母さんに愛されてきた人だから、アスミが本当に欲しいものは分からないかもしれない」


 ジョーも欧州に行っているというアスミの母・アリカ小母(おば)さんのことは気になっていたのだが、母親に関して事情がある志麻の前ではその話は避けていた。志麻の方から「母」の話を振ってきたのは意外だ。


 志麻はジョーと視線を合わせないまま、こう告げて話を打ち切った。


「でももし、宮澤君がアスミの本当の願いに気づいたら。その時は、一人で叶えようとしないで、私にも連絡頂戴ね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ