116/特攻
芯が砕けてしまったようにいう事を聞かない体をジョーは無理やり引き起こした。
目にしたのは、アスミの特攻だった。
アスミは『ハニヤ』の光球をその身に纏い、彗星のように大巨神の背部に突撃を仕掛けた。志麻、と口が動いたように見える。大巨神の眼前には、上体が粉砕された元ガンディーラだった何か。アスミはこの地の守人としてというよりは、純粋に友達の志麻を助けたかったのだと思う。
しかし、おそらくは残された『ハニヤ』の最後の時間と力を込めたアスミのその突撃も、大巨神に傷一つつけることはできなかった。背中に何か当たっている。その程度だ。とでもいったように大巨神テンマは意に介さない。
アスミの『ハニヤ』に関してお金の例を出したのはジョーだった。その例えで言うならば、借金も含めて四億円分のエネルギーを外界に出現させたアスミだったが、大巨神テンマは既に兆の世界の住人であるかのようだった。
一点、アスミの意志が報われたのは、大巨神がトドメの一撃を志麻に振り下ろす前に、意識をアスミの方に向けさせ、振り返らせた点である。大巨神は空中で発光し続けるアスミをその大きな手で掴むと、光をアスミが潰される寸前まで圧縮してしまった。今やアスミは、大巨神の手の握りから肩から上だけを出して、最後の『ハニヤ』の光で握りつぶされるのに抵抗している。しかし、アスミのその最後の抵抗可能時間、『ハニヤ』の起動時間もあと僅かまで迫っている。




