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非幸福者同盟  作者: 相羽裕司
第五話「彼の地よりきたる」
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106/苦しさを伴いながら歩く

  第五話「彼の地よりきたる」



 ジョーが菊一文字を片手にしばらく歩いて行くと、河川敷に巨体が打ち上げられていた。三メートル級怪人である。既に行動不能の状態で、地面に脱力して倒れ込んでいる様子からは、元人間という心象が抱きづらい。テレビで目にする市場の光景を思い出す。既に動く力は尽きている、大きい魚が横たわっているだけのような。


 もう少し観察すると、人間ならば気絶した状態にあるその三メートル級怪人は、半身が焼かれていた。志麻が作り出したガンディーラが、大火炎を吐いた時に負ったものだと思われる。


(この地から供給されるというオントロジカの回復効果で、治るのか?)


 打倒しなくてはならない敵である。しかし、その大規模な破壊に巻き込まれて倒れ伏すしかないというあり方を前に、ジョーはそんなことを考え始めていた。そして、ジョー自身も巻き込まれかけたこの大破壊を行ったのは、仲間である志麻である。


「なんか、違うんじゃないか」


 遠くにそびえ立つ巨大竜型機構怪獣の肩口に乗っている、この距離からは小さくしか見えない志麻に向かって目を凝らす。


(志麻、どうしてしまったんだ)


 どちらにしろ何もできないジョーは、倒れ伏す三メートル級怪人を後にしてまた歩き始める。元になった人間は、蝶女王が付けていたこの街の「優れた男」のランキングでいけば、上位十二人の男に入るはずである。そんな強い人間でさえ、今では身を焼かれ横たわっている。やるせない、を通り越して、ジョーは苦しいと感じていた。その通りだ。世界はこんなにも苦しい。


 苦しさを抱えながら、ただ重たい足を動かすことしかできない。何とかしたい。何かしなければと思うけれども、例えば元愛護大橋があった空間で全てを壊さんと向き合っている巨大機構怪獣と巨大蝶を前に、自分に何ができるというのか。ジョーの腕力で菊一文字をふるっても機械の怪獣には傷一つつけられず、ジョーがどんなに跳躍しても、巨大蝶が飛ぶ空には届かないように思われた。


 そんな中、一筋の光明。歩み続けた河川敷の先に、立膝で咳き込んでいる人影を見つけた。アスミである。ちょっとだけ気持ちが軽くなる。破壊的な出来事に巻き込まれて、何が何だか分からないうちに大事な存在を失っていた、何てのは嫌だったから。


「ジョー、君?」

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