1-7 人類の現実逃避と、ある二人のこと。
セカンドデイズ。
それは俗に言う日常ゲーだ。 ただデータ世界の中で過ごすだけ……というのがゲーム内容だ。
ゲームのデータ世界内には現実を都合よく投影したかのような町や景色が広がっている。
そこでただ過ごすのがこのゲームなのだ。
厳しい現実から逃げる逃避先。
現実のことは忘れて、データでかたち造られた偽りの世界に身を投げ出すのだ。
まるでそこに自分が居るかのように、自分が生活しているかのように。
それに同じデバイス上にゲームがあれば、例えジャンルが違えども入り込むことが出来る。
RPGなら自分が勇者になって大活躍。 周りには慕われ、金は貯まる一方。
恋愛ゲーなら主人公になってそのヒロイン達を口説き落すことも選択次第で可能。
ゲームの世界で人は幸せを手に入れることが出来る。 例え世界が偽りで、その幸せも偽りでも。
偽りだとしても、本物そのもが無い厳しい現実よりは少なくとも幸せになれるだろう。
自室で未だに稼働するのに疑問を抱く古典型ブラウン管テレビで番組を何気なく眺めていた。
画質も現在浸透したものに比べるとカス同然であるが、面倒なので壊れるまで買い換えるつもりはない。
「……つまんねー」
土日の午後のテレビこそ退屈なものはない。
やっているのは深夜バラエティの再放送やらドラマの再放送やニュースぐらいで。 非常につまらない。
『今日午前3時頃ウシロ市コノエ町で失踪事件が発生しました。
”セカンドデイズ”というオンラインゲームのプレイヤー
かつゲームをプレイ中に失踪していることが今までの失踪事件と共通しており
”セカンドデイズ”を公開するオンラインゲーム会社は「そのようなことは関知しておらず当社のゲームとは無関係だ」
とのことで、警察は”セカンドデイズ”と失踪事件との因果関係を調査中です』
「…………」
物騒な世の中だ。 こんな失踪事件が多発していて、そのニュースを見ない日はない。
……そうだ。 この事件が起こり始めたのも”セカンドデイズ”が流行り出した頃からだった。
「……ゲームなんかに現をぬかしてるからだ」
……というのはギャルゲーマーの俺が言えた口じゃないが。
だが、これだけは分かっているつもりだ。
「ゲームと現実は別。 ゲームはただの娯楽でお遊びだ」
しかし、現代を見渡してみるとどうだろうか。
あの”セカンドデイズ”が生活の一部になっている奴も見かける。
「……こんな世界じゃロクな未来はねぇよ」
それが原因でいつか根本的な破滅がこの世界には訪れる――昔流行った「厨ニ病」みたいだが、あながち間違ってはいない気がする。
「取り返しがつかなくなっても知らんぞ」
今の発言を誰に言ったかは……皆まで言わなくてもわかるだろ?