1-6 人類の現実逃避と、ある二人のこと。
_セカンドデイズ_
それはゲーム会社の「NEXT FEEL」が発表したゲームとしては日常系に分類されるオンラインゲーム。
しかし在来のオンラインゲームとは一線を画したものだった――
「セカンドデイズシステム」と呼ばれるある画期的なシステムが搭載された。
”第二の日々”その名もそのままで「人の生きる二つ目の世界」という煽り文句で展開する。
かつてのオンラインゲームは、ゲーム全般にも言えることだがプレイヤーがただゲームのキャラクターを動かすだけだった。
ゲームにはプレイヤーの技能が要求され、指使いに慣れないとゲームなんてロクに出来やしなかった。
しかしこのシステムは「自分そのものがゲームの中に入り、行動出来る」というもの。
プレイ者に無料には配布される、ゲームと自分を繋ぐコネクションを使用しネット世界へとトリップする。
そのコネクションと言えばゴーグルのような形状で目を覆い隠す物となっているのが特徴、通称「DNA ドリームネットアイ」と呼ばれる。
ワイヤレス式ではなくコード式で、意識・記憶・感情をゲーム世界に移動出来た時点で取り外す事が可能。
取り外すというのも、ゲーム内で意識展開中でも現実世界の肉体を操作出来るが故で、現実に戻る時は改めてコネクションを装着すれば完了する。
オンラインゲームとして、ゲームにプログラムに設定されたゲーム内容をプレイすることも可能だが。
同じくパソコンのデータベース上にあれば、別のゲームをプレイ出来るから一気に人気が爆発した。
そうして人はこのセカンドデイズを入口に、二次元世界へと旅立っていく――
「なぁ、相田。 またお前、あれやってんの?」
「ああ? ”あれ”? ああ”あれ”な」
「……で、やってんのか?」
「そりゃあ、やりまくりだよ」
不気味ながらも諦めて電子パネルに映った相田と会話している。 まぁ世の中には妥協ということが必要なようで。
何の話をしているかというと、”あれ”の話だ。
「いんやぁー”セカンドデイズ”たまらねーよ、マジで」
セカンドデイズ、最近流行りのゲームソフト……と言ったらあまりインパクトが無いが。
実際の流行りっぷりは尋常じゃない、まさに社会現象に違いないほどの普及っぷり。
00年代で言えば「DS」とかいう古いのゲーム形態のものがブームなったそうだが、それ以上らしい。
まったく、つくづく嫌になる。 ここまでデジタル化が進行するとな。
「昨日はギャルゲーの主人公になって、ハーレム主人公を満喫しちゃったよー」
「はーい、さいですか」
「……んだよ、翔也。 お前ギャルゲー好きだろ?」
「好きには違いないが、入ってまでやろうとは思わん」
「よくわかんねーな」
「お前の方がよくわからんわ」
大体俺はシナリオや絵の出来を重んじるだけで、ヒロイン勢は興味が無いのは何度も言ったことだ。
わざわざ主人公になったらシナリオの考察がしにくいではないか。
「いやぁ……現実世界では味わえない、あの胸の感触が――」
「消えろ、変態」
「って、本当に電源を押そうとするなよ!?」
ちなみに電子パネルは緊急時に備えて電源ボタンが備えられており、長押しするとシャットダウンされる。
イラっとした時はこうやって脅かしていたり。
「電源切られたら、怒られるのは俺じゃんかよー」
「知るか、んなもん」
という訳で、そんなゲームが流行っているらしい。
くだらん。
現実逃避にもほどがある。 現実を捨てて二次元に生きるなんて「生」というのを踏みにじってる。
人はこうして体を貰えたんだから、神様にありがたく思いながら精いっぱい生きるのは当たり前のことだと言うのに。
こんなゲーム、俺に言わせればどんなゲームよりもクソゲーだ。
というかあえてクソゲヱとでも言ってやろうか、古風にして皮肉を誘ってやるよ。
……こんのクソゲーが。




