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1-3 人類の現実逃避と、ある二人のこと。

ガトンゴトン。

 

線路の継ぎ目を走り抜ける度に電車はそんな音を奏でる。

車内にはそんな音の他には床下から忙しなく稼働するモーターが生み出し続ける轟音が聞こえてきている。


ここはとある田舎町。家から学校までは電車四〇分徒歩一〇分。


朝の陽ざしが差しこむ車内はあまりにも閑散としていた。 


2017年――、教学、職のデジタル化開始で、この列車から人が消えた。

道から、町から、学校から。

至るところから人が消えて行く。


この列車もかつては、都会から落とされた古い電車が奏でる轟音の中でもめげることなく学生同士や職場仲間の会話が有った。

座れないほどの混雑をみせた自宅の最寄りから学校のある町までの列車も、今では長椅子をベッドにして大いびきをかいて熟睡することも容易だ。


乗客は低下の一途を辿り、本数が減ったので乗り過ごすと大惨事で、こちとら困る。

代わりに80年代までに衰退した貨物輸送が、通販利用などが格段に向上し物販需要が上がった事から復活。そして大増便。

普通の列車よりも貨物列車の方が多いんじゃないか、というまでにかつての立場は大逆転した。


というか普通の列車が風前の灯であったりする。

それもそのはずで、俺と一部の学生以外は老婆やら頑固に鉄道輸送に固執する爺さんや絶滅寸前のマニアぐらいだ。


まったく、この世の中は狂ってる。

本当に気に入らない世界になったもんだ。




 俺の趣味は、前述したか分からないが「ギャルゲ」集めだ。

 しかし、何度も言うがその”ギャル”目当てではないということをもう一度言っておこう。


 大事な事だからな。


 さて、そんなギャルゲの入手法はというと、だ。

 通販もまだシステム開始前までは使っていたが……硬貨や紙幣の電子化が進み、電子マネーが市場を占め始めてからは――

 銀行振り込み以外での現金支払いを拒絶するようにまでなった、もはや呆れを通り越して泣いた。


「ああ、そんなに電子化したいってか!」


 00年代の株券の電子化やら携帯支払いシステムの完成から嫌な予感はしたんだよ……そうしたらこれだよ。

 

「銀行や、一部の商店でしか機能しない金ってなんなんだよ……」


 ふざけてんのか、ああ?

 あの天下の日本銀行も日本銀行券こと紙幣の印刷を止めちまったしさ、本当この時代の流れには付いてけねぇわ。


 ……入手法の話に戻って、だ。 

 とある闇ゲーム店で、最新ギャルゲをDVDにインストールして貰っていたりする……少々割高だが、致し方ない。

 後は、DL販売完全移行前の作品群だろう。 駅前の中古ショップにはかなりお世話になっているものだ。

 実際昔の作品こそ良く出来ていたりする……そりゃちょっとキャラデザは古臭かったりするけども。

 

 ダ・●ーポなるものは、当時非難の声が上がったそうだが、俺は結構好みだぞ?


 それで今日は、学校帰りに中古ショップに訪れた。


「しょうやぁー はやくいこーぜー」


「あ、あと10分……」


 決して睡眠時間を伸ばそうとしている訳ではないぞ?

 俺はギャルゲ漁りをしているだけだ! 補足でエロゲもたまにやる! 


「お?」


 これは……ふーむ、絵は綺麗だな。


「RuriiroDa――」


「翔也っ! 電車行っちまうぞ!」


「うおお! そりゃやべえ!」


 先程手に取ったゲームを名残惜しいが元の位置に戻して店を出る。

 ……明日、金持ってきて買うかな。 ううむ、絵とシナリオの出来不出来が気になるぜ……


「走るぞっ!」


「おおうっ」


 シャッター街を駆け抜けて、本数の少ない列車で俺らは家へと向かう。

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