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1-9 人類の現実逃避と、ある二人のこと。

片鱗1。


午前授業終了後の休み時間の出来事。

いっつも通りの俺と岬以外は電子パネルなカス空間が健在だ。

電子パネルが向きあって会話したり、電子パネルを歩行モードにしてで学食向かったり――

……電子パネルで学食行っても何の意味もねぇだろよ。 相田曰く「雰囲気を楽しむのだよ、雰囲気を」とかほざいていたが、全く賛同出来ないから仕方ない。

そうして俺は軽蔑の視線を送りつつも相田を学食へと見送った。


それで生身の人間こと俺は、普通にここで飯を食わなければならない。


さてどうしたものか。

相田の居る電子パネルに溢れた学食か、教師と参考書データを購入する電子パネル野郎共しか訪れない購買か。

うむ……


「あのさー、翔也ー」


そんな時、思考を妨害してくる声がした。

……しかし受け答えしないと、後々面倒なので――


「ん? どした岬」


「……今日は弁当か?」


? 何を言い出すのかと思えば。


「いや? 今日は学食か購買の予定だが……」


「なら――」


なら?



「作ってみたんだけど」



「? 何を?」


メイク? メイドインミサキ? 何を? What?


「……翔也、アタシの話聞いてたか?」


ああ、聞いていたともさ! というのは嘘だから適当に言い繕っておこう。


「ああ……じゃあお前の事だから懐古武器の”釘バット”か? マニアックだなぁお前」


「アタシの人物像どうなってんだよ!」


「違うのか?」


いかにもな不良共を瞬殺しそうな程の力を持ち合わせているコイツに、釘のバッド?

鬼に金棒ならぬ、鬼畜に釘バットが……こいつぁ恐ろしいな。


「違う」


違うのかよ。 俺の妄想に使用したエネルギー請求するぞ、オラ。

違うとなれば――


「じゃあ……まさかアレか? 水圧で飛ばすペットボトルロケットを対戦闘用に――」


「だからアタシの人物像おかしいだろ!」


いや、大体あってるんだが。


「……じゃあなんだよ。 俺がアッと驚くような代物か?」


「うーん、どうだろな」


これは何かとってもサプライズな予感がするのは何故だろうか。


「ほう、期待しよう」


「てーことで」


すると岬は持っていた鞄からおもむろに何かを取り出し始めた。

出てきたのは――形巾着袋に入った角ばった……?


プラスチック爆弾か! こいつ、遂にやりやがったな――



「弁当作ってきた」



「!」


その時俺は思った――この世界は近い内に滅亡すると。


「はい?」


この展開は、冗談混じりながらも予測していたプラスチック爆弾より恐ろしく感じた。



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