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1-0 人類の現実逃避と、ある二人のこと。(11.12.22修正)

「お前のことが好きなんだぁぁぁぁ」

「ご、ごめんなさいっ!」


 ―BAD END―


 ちっ、また攻略失敗か。フラグを立てず特攻したのが敗因ってトコだな。


「あー、ヒロイン落とすの面倒くせぇ。だからギャルゲーは嫌いなんだよ」


 まぁ、俺そのものが異性と付き合うことを志望してないしな。

 ……夢も希望もなくてつまらない? けっ、ほっとけ。 それもこれも――



「それでいてなんでギャルゲーなんて買ってるのさ?」



 こいつのおかげだ。というかギャルゲーなんてギャル目当てで買っている訳じゃない。

 

「シナリオとCGに興味があるからな」


 ギャルゲーなるものはかなり安直な展開シナリオが多い。

 シナリオの出来が悪くなるのと比例するようにCGの完成度は高かったりする。もちろん、全ての作品に言えることではないが。 

 シナリオとCGの完成度共々良いものもあれば、シナリオ破綻にCG崩壊という残念極まりない作品もある。

 

 ギャルゲーという一ジャンルの中で良作を探し出す――というのが今の俺の楽しみであり、趣味だ。

 ラノベといっても、中にはラノベという括りを超えた素晴らしい作品も存在する。一般小説も探せば探すほどに良作に巡り合える。


 しかし、俺はあえてギャルゲーという縛りの中で良作を探すのだ。


 かといえば、駄作だからといってそれを忘却の彼方へと葬りさる訳ではない。

 駄作だとしても、少なからずは誇れる点があるものだ。それを探すのも面白い。

 救いようのないカス作品も見方を色々変えて、違う楽しみ方をするというのも面白い。


 ということで、一応俺はギャルゲーマニアだ。


「金の無駄遣いだと思うんだけど……」

「ふん、俺的には有意義な使い方が出来ていると自負している」


 楽しみ方は個々で見つけだすものだ。自分の金で何を買って、どう楽しむかなんて自由だろう? 抑制など受ける理由は無い。


「というか”女の子”が遊びにきているそんな時までギャルゲーというのはどうなんだろな?」

 

 女の子……はてさて?


「ふむ……誰だそれは?」

 

 すると背後で何かが切れる音がした、それは物理的な意味ではなくいわゆる逆鱗に触れたというところか。しかし気にしてしまうのには、果てしなく無駄な時間の浪費だと俺は考え、思考中止。


「……喧嘩を売ってるのが分からない?」

「いやいや、そうは言うがな。女の子なんて生涯一回も連れ込んだ事ないぞ?」

「いやいや! なんで純粋に疑問に思ってるんだよっ!」

「……今、この部屋にいるのは俺とお前だけだからな」

「アンタの中でアタシはどういう扱いになってんだよ!」


 ……?


「そりゃ、退屈しない話相手および小学校時代からの友人と言っぐはっ――」


 横から来る肘が俺の顔を捉え、見事にスッ飛んだ。


「……なにすんだよ」

「お前は本当にデリカシーの欠片もねぇな! アタシは立派な女子だバカっ!」


 らしい。まぁ、名義上は女子だけどな……不確かなのには理由があり――


「……その体で女と言い張るには、乏しい胸だな」


 そう彼女の身体は女生徒見えるには起伏に富まず、特に胸辺りに至っては貧相極まりなかった。


「っ! 仕方ねぇだろ! ここだけは成長が遅いんだよ!」

「…………」

「どうした? アタシの体をまじまじと見て」


 彼女は少し頬を赤らめながら胸辺りを腕で覆い隠すのだが、隠すものがないというのはなんと悲しいことだろう。


「いや……ブラジャーという拘束具は拘束するものがないから不要だなぁ、と考えていた。というか付けてるのか?」

「っっ! 完全なセクハラだぞ! 失礼飛び越えて変態だ! というか付け取るわっ!」

「……絆創膏で十分だろ」

「それこそ変態だ!?」


 お金もかからず、ブラ線が雨天などで濡れた際に浮かび上がらない、そしてマニアに受ける。

 もちろん俺にはそんな性的嗜好存在しないわけなので、イマイチ分からないのだが。


「黙れ、その胸とは言い難いまな板の上でキャベツでも千切りにしてろ」

「千切……!? 流石にアタシも怒るぞ!」

「どーぞどーぞ」

「……失せたわ。というかなんでこんな性悪で最悪な奴に家に遊びに来てんだろうな」

「まぁ、それは習慣みたいなもんだろ。人が食を三回摂るように」

「アタシの訪問は食と同レベル……どう反応すればいいんだ?」


 ということで彼女(文面では一応彼女と呼んでおこう)とは長い付き合いだ。

 俺だけがこんなにボロクソに言い捨ててると言えばそうでもない。 彼女は彼女で――


「胸の事を、こんな平凡を具現化したような容姿のアンタに言われたくないわ!」


 そんなことを言ってくる、まぁそれに関しては俺も重々承知してるが。


「まぁ、平たい同士気長にやろうじゃねぇか」

「……性格容姿が平凡な男と胸がす、少ないアタシじゃどっちがいいと思う?」

「体を洗うのが楽でいいだろ?」

「●ね! いい加減に●ねっ!」


 と言う訳で、彼女を一女性として見た事は一度もない。胸が存在しているというのも憚れるほどに無く、とにかく色気がない。

 女子高生でこの胸は正直今後に期待出来ない。


 友人として過ごしてるだけで、異性と捉えたことはない。というか、彼女が一応異性であるせいか異性に興味を失くしたのも事実。


 ギャルゲをやっても「かわええ~」とか「萌え~」とかは感じない。「綺麗」と感じることはある。

 実際彼女はブサイクとは対極的な位置にいると言って良い。

 日本人としては高く細い鼻と、釣り目がちながらも左右対称に整った美麗な栗色の瞳。

 しかし「邪魔だから」と髪は伸ばさず、肩口まで来る頃には少しツンツン気味の髪は男子張りに短く切りそろえられてしまう。

 細型で引き締まった腰辺りと肉付きの一切ないながらもどこか健康的な容姿で、足も細く長くつけ根までスラリと伸びている様はまさに美脚と太鼓判を押せる。

 要所要所のパーツにはまったくもって劣る部分は存在しない、人間の一個体としては完璧な完成品とも評価できる。


 しかし、それは性別を度外視してのことだ。彼女を「女子」と考えるとおのずと、評価が変わって来る。

 容姿もどことなくボーイッシュで、男らしい上に。運動大好きで、男子に混じって校庭を走りまわっていたとしても一切の違和感も生じることはないだろう。

 そして日焼けを気にしないので夏になれば真っ黒、美肌・白い肌を維持する為にお金と命を賭けている近代の女性とはまったく対照的で、焼くのが楽しいとのこと。

 仕草に女性要素を見つけ出すもの困難を極め、座るところはあぐらは基本、髪をわしゃわしゃとかく癖もあり、制服姿ならばスカートに風を送り込むのは当たり前、言動然り喋り方然り、それらも決して女性とは思えない代物である。


 まあ、それを十数年見てきたわけだ。

 女ってこんなもんなんだ、と諦めと偏向したイメージが固定されてしまったわけだ。

 だからあくまで彼女を彼女とは扱わない、少し中性的な容姿の男友達というのが俺の中での彼女の見解となる。


 何度も言うが彼女は友人だ。

 話していて退屈しない友人。 

 今日の俺の冗談と本音が混じった事も仲が良く、ジョークが通じるから口にする。

 

 あんな反応をすれど、分かっていると思う。

 

「●ねはしないな、ミサキと話すことはいくらでもあるからな」

「……へ、へぇ? 話すって、どんな?」

「貧乳と巨乳、果たしてどちらの需要が高いのか」

「当てつけか!」


 異性として見ずに、ミサキと見れば良い友人だ。

 異性としてはみていないが、大切な友人ではある。 勘違いはしないでほしい。


「まぁ、そんなお前好きだけどな」

「え?」

「ライクとしてな」

「期待持たせんな!」


 もちろん友人としての、だ。

 で、まあ薄々感づいてしまっているのだが……鈍感でなくそれなりに鋭敏な俺は、どうやらこいつに好意を抱かれているらしい。 

 しかし異性への興味などない、ましてや彼女だとまったくもってクルものが無いのだ。 

 それにどう対応していいのか困惑するばかりだ、彼女とはこのまま良い友人関係を続行したいのが俺の希望でもある。

 噛みついてくる、そしてその反応が大げさで面白い。俺は遊び感覚で、冗談感覚でこう言い捨てた。


「ふん、なら俺をトキメかせて見ればいい」 


 まあ、ない。有り得ないことこの上ないけどな。と内心ほくそ笑んでいたのだが、彼女の様子は違った。

 俯きがちに、いつもの自信に満ちた声でもなく……どこか慎重な物言いで。

 

「……トキメかしたら、アタシを女だと認めるのか?」

「さぁな」


 無理だろうに……少なくとも二次元という括りとはいえ高水準な女子が揃うギャルゲで、何の反応もしない俺が。

 そして俺と彼女との付き合いは長過ぎた。その長い時が彼女のキャラクターを固定化してしまっている。

 まったくもって今更な話だ。


「……わかったよ」


 何が分かったのだろう? 彼女は尻すぼみにそう言うと、やがて沈黙した。

 

 


 ――ちなみに俺が今までどんな事を言っていたのか、書き出して分かったことがある。

 

 酷い。


 今日は特に酷い。なんだろうね、流石にここまでじゃない……俺のギャルゲー趣味が否定されたからムキになってしまったのか?

 もう、これは嫌われてもしょうがない。自分が愚かすぎて言葉も出ない。


「(そう、か)」


 もしかしたら、彼女が友人でなく異性になるのが怖かったからなのかもしれない。

 関係が変わってしまうのが嫌だったからとか?

 気軽に話せる相手を失いたくなかったから?


 これで、関係が終わるのなら……仕方ないのかもな。今の俺には後悔するしかなさそうだ。 



 そして案の定、俺と彼女の関係は終わった。そして変わった。

 しかし、それは異性として意識しなくて済む友人の関係のことで――



「……ど、どう?」



 画面に映る、確かに彼女な彼女は――見違えていた。



「……困るな」


 

 ときめいた。初めて胸が熱くなった。

 というか一瞬で惚れた。


 ……と、彼女への緻密な感想を述べる前にあらかたの日常をお話したい。

 今日のように罵詈雑言を連ねている日は少ない訳で、俺を誤解しないでほしい。まぁ、弁解の意を籠めて、話していこう――

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