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時司の愚痴日誌

大丈夫大丈夫。心配し過ぎ ~時司の愚痴日誌

作者: 時司 龍
掲載日:2026/03/31

「そのくらい、すぐ終わるよ」


 そう言われる仕事ほど、誰のものでもない顔をしている。

 私の職場には、ちょっとお高めで、少しばかり気を遣う荷物を相手先へ届ける仕事がある。

 壊れれば困る。紛失すれば困る。けれど、その責任の所在は妙に曖昧だ。


「これ、今日中に届けてもらっていい?」

「・・・精密なものですよね。配送の方が安全じゃないですか」

「いや、そこまでじゃないって」

「もし何かあったら困りますし」

「大丈夫大丈夫。心配しすぎ」


 軽く笑って会話は終わる。終わらせられる、という方が正しいかもしれない。

 別の日も似たやり取りをした。


「やっぱり配送にした方がいいと思うんですけど」

「うーん、でも送料高いからなあ」

「記録も残りますし、トラブル防止にはなると思います」

「そこまで大げさにしなくていいよ」

「・・・」

「近いんだし、ぱっと行って帰ってくるだけでしょ?」


 なるほど、と私は思う。つまりこの荷物は壊れてはいけないが、コストはかけられない程度の価値らしい。

 結局、その役目はいつも私に回ってくる。社用車が用意されるわけでもなく、当然のように私の自家用車で行く。

 ガソリン代については、話題にすらあがらない。


「近いから」「すぐ終わるから」

 そのすぐが何度積み重なったかは、もう数えていない。ガソリンの価格は上がり続けているのに、こちらの負担は空気のように扱われる。



 そして、今回の話だ。

 その荷物を届ける日、私は有給を取っていた。当然、私は運ばない。運べない。


 では、どうなったか。

 ・・・上司が、配送を手配していた。あれほど「高い」と言っていた配送代を、あっさりと払って。

 しかも、その上司は当日、相手先の近くに行く用事があったらしい。つまり普通に自分で運ぶ事もできた。


 それでも選んだのは、「配送」だった。


 その瞬間、すべてがはっきりした。

 コストの問題ではなかったのだ。

 責任の問題でもなかった。


 ただ単に、「自分はやりたくない」というだけの話だった。


 そして、そのやりたくないは他人に押し付けることができる程度には、軽いものだった。

 私が運んでいたあの時間も、あのガソリン代も、あの微妙な緊張も。

 すべては、「誰かがやればいい仕事」だったのだろう。

 誰か・・・つまり、私が。


「すぐ終わるよ」と言う人は、そのすぐを自分では使わない。そして、その時間もガソリン代も緊張も差し出す側の事を、想像もしない。

 それだけの事だ。


 でも、今回は少しだけ事情が違ったらしい。これまですぐ終わるとされていたそれは、いざ自分がやる番になると、お金を払ってでも避けたいものだったらしい。

 しかも、その支払いは自分の財布ではない。会社の経費だ。


 なるほど、と思う。


 時間も労力も、誰のものかで重さが変わる。世の中は、そういう風に出来ているのはわかっている。

 そしてその重さは、「節約」という綺麗な言葉で調整される。

 だからきっと、また同じように言われるのだろう。


「近いから」「すぐ終わるから」


 自分がお金を払ってでも避けた仕事を今度も軽く押しつける。そして、もし何かあれば、その責任も同じように軽くこちらに流れてくるのだろう。


 その方が都合がいいからだ。

 それ以上でも、それ以下でもない。


読んでくださってありがとうございます(*_ _)

ポイントを入れてもらえると、嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
  時司 龍さん、こんにちは。 「大丈夫大丈夫。心配し過ぎ ~時司の愚痴日誌」拝読致しました。  すぐ終わる仕事。でも、責任があいまい。  高価なものをキチンと届ける。それってあいまいな責任だと、マ…
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