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正しい宇宙の歩き方  作者: コンタクトメガネ


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第11話 水面の下にて

 

 第三会議室。


 蛍光灯の白が冷たい。


 


「処理不能対象を」


 


 江戸文字は資料を閉じた。


 


「組織管理外へ連れ出した」


 


 天田の背筋が強張る。


 


「規定では、処理不能対象は本部隔離室へ収容。

 再検査、拘束、経過観察」


 


 一拍。


 


「なぜ、外へ出した?」


 


「現場判断だ」


 


 塚原は椅子にもたれたまま答える。


 


「精神状態が不安定だった。

 研究室に放り込めばパニック起こす」


 


「だから?」


 


「一時的保護だ」


 


「本部外で?」


 


「落ち着かせるためだ」


 


 江戸文字の目が細くなる。


 


「所在は?」


 


「監視を外した隙に逃走。

 ショック状態だったからな」


 


 即答。


 


「……塚原」


 


 静かな声。


 


「あなたほどの腕で、

 “逃した”と?」


 


 わずかな圧。


 


「買い被りだ」


 


 視線は逸らさない。


 


「現在、服部に捜索をかけている」


 


 天田が反応する。


 


「服部……?」


 


 聞いたことがない名前。


 


 だが口は挟まない。


 


「捜索は継続します」


 


 江戸文字は立ち上がる。


 


「確保でき次第、研究部へ」


 


 扉が閉まる。


 


* * *


 


「はぁ〜〜〜……怖かった〜」


 


 塚原は椅子にもたれ、首を回す。


 


「何で私まで巻き込まれるんですか!」


 


「ごめんごめん」


 


「いやー、それにしてもあいつ。

 真面目すぎだろ」


 


「塚原さんがサボりすぎなだけじゃないですか?」


 


「お、言うねぇ」


 


「成長したな〜、偉い偉い」


 


 ぽん、と軽く尻を叩く。


 


「⁉︎」


 


 ゴンッ。


 


 頭に鈍い音。


 


「痛ぇ!」


 


「次やったら切りますよ」


 


「江戸文字より怖ぇな、お前……」


 


「私、次の仕事ありますので」


 


 キレ気味に資料を抱え、退出。


 


 静かになる。


 


 塚原は頭を押さえながら、小さく笑った。


 


「……真面目が過ぎるのも、考えもんだな」


 


* * *


 


 会議室に一人。


 


 塚原は内ポケットから小型端末を取り出した。


 通常回線ではない。


 地上と“庭”を繋ぐ古いルート。


 


 数秒の無音。


 


『……何だ』


 


 低い声。


 


「様子見だ」


 


『問題は起きていない』


 


「変わった客は?」


 


『いない』


 


 短い。


 


「入口の出入りは?」


 


『通常通りだ』


 


「……念のためだ」


 


『何だ』


 


「逃走経路、一本増やしとけ」


 


 わずかな沈黙。


 


『理由は』


 


「勘だ」


 


 即答。


 


『了解した』


 


 通信が切れる。


 


 塚原は端末をしまった。


 


* * *


 


 優太の体内に仕込まれたナノマシン型追跡装置は、

 すでに作動している。


 


 それは、あのスキャンの瞬間――

 江戸文字が額に端末を当てた、わずかな接触時に送り込まれた。


 


 体内に侵入したそれは、優太の特異性によって“自己の一部”として扱われたため、

 ETG入場時の多重検知にも異物として認識されなかった。


 


* * *


 


 江戸文字は廊下で端末を開く。


 


「……反応あり」


 


「侵入成功」


 


「境界、検知」


 


 一瞬だけ笑いながら、端末を閉じた。


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