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魔の血を引く少年  作者: yukkie
冒険者への道
8/16

グリーンリーフへの道

朝日が窓から差し込み、僕の顔を照らした。目を開けると、リナはすでに起きて、荷物をまとめていた。


「おはよう、アルト。よく眠れた?」


「うん、ぐっすりと!」


僕も急いで起き上がり、身支度を始めた。


「今日はグリーンリーフに着くよ。楽しみだね」


リナの声は明るく、その元気さが僕にも伝わってきた。


二人は宿の食堂で朝食を取り、すぐに出発した。朝の空気は清々しく、鳥たちのさえずりが森に響いていた。


「昨日よりも道は開けているよ。午後には森を抜けて、平原に出るはずだ」


リナは前を歩きながら説明した。彼女は本当に道に詳しい。


「リナはどれくらい冒険者をしているの?」


「えっと、正式に始めたのは一年前かな。でも、その前から父と一緒に狩りに行ったりしてたから、森には慣れてるんだ」


「親も冒険者なの?」


「うん、Bランクの。すごく強いんだよ」


リナは誇らしげに言った。


「いいな...…僕は両親のことは、ほとんど知らないんだ」


「そうなんだ...…」


リナは目を少し伏し目がちにしている。


「でも、これから自分の道を見つければいいんだよ。過去より、未来が大事だって父が言ってた」


「そうだね」


僕は微笑んだ。


二人は歩きながら、様々な話をした。リナの冒険の話、僕の村での生活、将来の夢...。時間が経つのも忘れるほど、話は尽きなかった。


昼頃、小さな丘の上で休憩することにした。リナはバッグから干し肉とパン、それに水筒を取り出した。


「はい、どうぞ」


「ありがとう」


僕たちは丘の上から景色を眺めながら、昼食を取った。遠くには、森の向こうに広がる平原が見えていた。


「あそこに見えるのが、グリーンリーフの見張り塔だよ」


リナが指さす方向に、かすかに高い塔が見えた。


「あれがグリーンリーフの?」


「うん、グリーンリーフの中心にあるんだ。冒険者ギルドも、その近くにあるよ」


「すごい...…!」


僕は感動して見つめた。ついに目的地が見えてきたのだ。


休憩を終え、再び歩き始めた。午後になると、森はだんだん開けてきて、木々の間から日光が差し込むようになった。


「もうすぐ森を抜けるよ」


リナの言葉通り、しばらく歩くと、森の終わりが見えてきた。そして、一歩踏み出すと、広大な平原が目の前に広がった。


「わあ...」


僕は思わず声を上げた。こんな広い景色を見たのは初めてだった。緑の草原が風にそよぎ、遠くには街の輪郭が見えている。


「あれがグリーンリーフだよ」


リナが指さす方向に、大きな街が見えた。高い城壁に囲まれ、中央には先ほど見た塔がそびえている。


「すごい...…こんな大きな街、見たことない!」


「グリーンリーフは三国の中でも大きな商業都市なんだ。色々な人や物が集まる場所だよ」


二人は平原を横切り、グリーンリーフに向かって歩き続けた。日が傾き始める頃、ついに街の門に到着した。


「ここがグリーンリーフの東門だよ」


大きな石造りの門の前には、鎧を着た衛兵たちが立っていた。彼らは旅人たちを検査している。


「冒険者ギルドの紹介状があれば、すぐに通してもらえるよ」


リナは自分のギルドカードを取り出した。僕もマルコさんからもらった手紙を用意した。


「冒険者か?」


衛兵が声をかけてきた。


「はい、私はギルドのFランク冒険者、リナです」


リナはカードを見せた。衛兵はそれを確認し、うなずいた。


「そちらは?」


「僕は...…これから冒険者になろうと思っています。紹介状があります」


僕は手紙を差し出した。衛兵はそれを開封し、中身を確認した。


「マルコさんからの紹介状か。あの人には昔世話になった。通っていいぞ」


衛兵は手紙を返し、僕たちを通した。


「ありがとうございます」


僕たちは門をくぐり、グリーンリーフの街に足を踏み入れた。


街の中は活気に満ちていた。様々な店が立ち並び、人々が行き交っている。商人たちの声、子供たちの笑い声、馬車の音、すべてが新鮮だった。


「すごいね...…」


僕は圧倒されて、あたりを見回した。


「初めて来る人は、みんなそう言うよ」


リナは笑いながら言った。


「さあ、まずはギルドに行こう。エレナさんに会わないといけないんでしょ?」


「うん、そうだね」


僕たちは街の中心部に向かって歩き始めた。道は石畳で、両側には様々な店が並んでいる。食べ物の香りや、人々の声が混ざり合い、活気あふれる雰囲気だった。

リナは立ち止まり、僕を見つめた。


「ギルドに行く前に、少し身なりを整えた方がいいかも。第一印象は大事だからね」


「そうかな...…?」


僕は自分の服を見下ろした。村で着ていた古い服に、おじいさんのマントを羽織っている。確かに、少冒険者というよりは小間使いのようだ。


「大丈夫、すぐそこに服屋があるよ。冒険者向けの服も売ってるから」


リナは僕を小さな店に連れて行った。店内には様々な服が並んでいる。冒険者らしき人たちも何人か見かけた。


「いらっしゃい」


店主の老婆が声をかけてきた。


「この子が冒険者になるの。何か良い服はある?」


リナが僕を指さして言った。老婆は僕をじっと見つめ、うなずいた。


「ちょうど良いものがあるよ。ちょっと待ってね」


老婆は奥に行き、しばらくして戻ってきた。彼女の手には、シンプルだが丈夫そうな服と、深い青色の帽子があった。


「これはどうかしら?丈夫で動きやすいし、魔法の糸で縫ってあるから、少々の攻撃なら防げるよ」


僕は服を手に取った。確かに丈夫そうだ。


「試着してみる?」


リナの勧めで、僕は着替えの場所に行った。新しい服に着替え、鏡を見ると、自分でも驚くほど印象が変わっていた。


「どう?似合う?」


リナが声をかけてきた。


「うん、いいと思う」


「見せて」


僕が出てくると、リナは目を輝かせた。


「わあ、すごく似合ってる!冒険者らしくなったね」


僕は少し照れた。新しい服は体にフィットし、動きやすかった。青い帽子も、僕の髪をうまく隠してくれる。


「いくらですか?」


老婆に尋ねると、彼女は少し考えた。


「初めての冒険者さんだから、特別価格で...銀貨5枚でどうかな?」


マルコさんからもらった旅費で十分払える金額だった。


「ありがとうございます」


僕は銀貨を支払い、古い服をバッグにしまった。おじいさんのマントだけは、新しい服の上に羽織った。


「さあ、これで準備万端だね」


リナは満足そうに言った。


「ギルドに行こう」

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