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魔の血を引く少年  作者: yukkie
冒険者への道
5/16

出発の準備

「どうだった?マルコさんは何と言っていたんだい?」


おばあさんは手を止め、僕を見上げた。その目は心配と期待が入り混じっていた。


「冒険者になるのを応援してくれたよ。グリーンリーフのギルドに紹介状も書いてくれたんだ!」


僕はポケットから封筒を取り出して見せた。おばあさんはほっとしたように息をついた。


「そう、それは良かった。マルコさんなら信頼できる人を紹介してくれるはずだわ」


おばあさんは立ち上がろうとして、少しよろめいた。僕は急いで彼女を支えた。


「大丈夫?」


「ええ、ただ少し疲れただけよ。さあ、家に入りましょう。旅の準備をしないといけないわね」


家の中に入ると、おばあさんは古い木の箱を取り出した。埃をかぶっていて、長い間開けられていなかったようだ。


「これは…...」


「あなたのためにとっておいたものよ」


おばあさんは箱を開けた。中には、きれいな布に包まれた何かがあった。おばあさんはそれを取り出し、布を広げた。


僕は驚いて声が出なかった。そこには、美しい銀の留め具がついた深緑色のマントがあった。


「これはヨハンおじいさんが若い頃に使っていたもの。冒険者だった時のね」


「おじいさんが冒険者だったなんて知らなかった」


「ええ、あまり話したがらなかったの。でも、あなたが冒険者になると決めた時、これを渡すように言っていたわ」


僕はマントを手に取った。布地は古いが、しっかりしていて、不思議と暖かい。


「ありがとう、おばあさん」


「それだけじゃないのよ」


おばあさんは箱の底から、小さな革の袋を取り出した。


「これは?」


「開けてみて」


僕が袋を開けると、中には小さな木彫りの鳥が入っていた。精巧に作られていて、翼を広げた姿が美しい。


「木彫りの鳥……?.」


「あなたが来た時、持っていたものよ。大切にしていたようだから、成長するまでとっておいたの」


僕は木彫りの鳥を手に取った。見たことがないはずなのに、どこか懐かしい感じがする。指で触れると、鳥の目が一瞬、紫色に光ったような気がした。


「気のせいかな.…..」


「何か言った?」


「ううん、なんでもない」


僕は木彫りの鳥を大切そうにポケットにしまった。


「他に必要なものは...食料と水筒、それから着替えをいくつか。グリーンリーフまでは三日かかるからね」


おばあさんは手際よく荷物をまとめ始めた。僕も手伝いながら、明日からの旅に思いを馳せた。未知の世界への不安と期待が入り混じる。


「アルト、一つだけ約束してほしいことがあるの」


おばあさんの声は真剣だった。


「何?」


「どんなに辛いことがあっても、自分を見失わないで。あなたはあなたのままでいいの」


僕は黙ってうなずいた。おばあさんの言葉の意味は分からなかったが、大切なことだと感じた。


「約束する」


その夜、僕たちは静かに夕食を食べた。いつもより豪華な料理で、おばあさんの愛情がこもっていた。


「明日の朝、早く出発した方がいいわね」


「うん、日の出と共に出るつもりだよ」


「気をつけて行くのよ。そして…...」


おばあさんは言葉を詰まらせた。


「そして?」


「時々は帰ってきてね」


僕はおばあさんの手を握った。


「必ず帰ってくるよ。冒険の話をたくさん聞かせてあげる」


おばあさんは微笑んだが、その目には涙が光っていた。

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