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魔の血を引く少年  作者: yukkie
冒険者への道
4/16

見た目の違い

「魔物の子だ!」


僕が村の広場を通りかかると、どこか嗤うような声が聞こえた。振り返ると、同い年のレンと、その弟のタクが僕を指さしていた。


「無視しろ」


マルコさんが小声で言った。僕はうなずき、前を向いて歩き続けた。


「おい、聞こえないのか?」


レンが僕の前に立ちはだかった。彼は村長の息子で、いつも僕をからかう一人だ。


「どいてくれ」


僕は静かに言った。


「帽子を取れよ。みんなに見せてやれよ、その気持ち悪い髪を」


レンが僕の帽子に手を伸ばした。僕は反射的に後ろに下がった。


「やめろ」


「何だよ、怖いのか?」


レンの目には嫌悪感と好奇心が混ざっていた。彼は本当に僕を憎んでいるわけではない。ただ、違うものを理解できないだけだ。


「レン、やめなさい」


マルコさんの声は厳しかった。レンは一瞬ひるんだが、すぐに反抗的な表情に戻った。


「なんでこんな奴をかばうんですか?村の人たちは皆、アルトが魔物の子だって言ってます」


「人を見た目で判断するな。それが大人への第一歩だ」


マルコさんの言葉に、レンは何も言い返せなかった。


「行くぞ、アルト」


僕たちは再び歩き始めた。背後でレンたちが何か言っているのが聞こえたが、振り返らなかった。


「気にするなよアルト。彼らはまだ子供なんだ」


「僕も子供です」


「お前は違う。お前は早く大人になることを強いられた」


マルコさんの言葉に、僕は何も答えられなかった。


マルコさんの家に着くと、彼は机に向かって手紙を書き始めた。僕は窓の外を見ていた。村の風景は美しい。緑の野原、小さな家々、遠くに見える森。ここで生まれたわけではないが、僕の記憶はすべてここにある。


「できた」


マルコさんが手紙を封筒に入れた。


「これをグリーンリーフの冒険者ギルドのエレナに渡せ。彼女がお前を助けてくれるだろう」


「ありがとうございます」


僕は封筒を受け取り、大切そうにポケットにしまった。


「いつ出発する?」


「明日の朝です。おばあさんとも話して…...」


「分かった。では、これを持っていけ」


マルコさんは棚から小さな袋を取り出した。中には銀貨が数枚入っていた。


「これは...」


「旅の資金だ。遠慮するな」


僕は感謝の言葉も見つからなかった。マルコさんは僕の肩を叩いた。


「さあ、帰ってマルタに報告しろ。彼女も心配しているだろう」


僕はうなずき、マルコさんの家を後にした。


家に戻ると、おばあさんは庭で野菜の泥落としをしていた。僕が帰ってきたのを見て彼女は微笑んだ。

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