擬人化
ゴブリンたちの松村まで行こうと歩みだしたんだけど、ふとなったことがあるので訊いてみる。
「ところでフェンリル、そのまま行くのかしら?」
「そうだが何か問題が?」
「今のフェンリルってすごい魔力を身体から出してるのでしょ?分からないけど。その状態でゴブリンたちのところに行ったら逃げられるんないの?」
さっきフェンリルが魔力を大量に出したとき周りの動物たちがすごい勢いで逃げて行った。それならゴブリンたちも逃げるんじゃないかと思って訊いてみた。
いろいろと調べるためにもいきなり逃げられても困る。
「確かにそうだったな、ならばこうしよう」
そうフェンリルは呟くとその身体が光に覆われる。その光は全身を覆いつくすとフェンリルの姿が見えないくらい眩しく輝いていく。その輝きがだんだんと小さくなっていき輝きが収まっていくとフェンリルの姿が見えるようになる。だけど、
「え、」
姿を現したのは狼ではなくだった。
この人、どこから?もしかして紺の人がフェンリル?変身した?
「この姿なら問題ないだろう?」
そしてその人あら出てきた声は先程まで聞いていたフェンリルの声だった。
「フェンリルなの?」
「そうだ。人化の’魔法を使た。この姿ならだれからも我の正体をつかめないだろう」
そうどや顔で言うんだけど。
「なんで裸?」
そのフェンリルと名乗る人物は全裸で仁王立ちの状態だった。
羞恥心とかはないのかしら。
「ああ、忘れていた。我は普段から服を着るという習慣がないからな」
「…」
それだけ聞くと、かなりの変態に聞こえるんだけど、でも普段は狼ならおかしいことはないのよね。
「まあそこはいいわ。それよりもどういう原理で人の姿に?明らかに質量が少なくなってるんだけど、消えた質量はどこえいったのかしら?」
『ずっと観察していましたが、光の正体も謎。更に質量が完全に消失していました』
物質がなくなることはない。なくなっているように見えても何かに形を変えているだけなのだ。
そっれなのに目の前で起こった現象は明らかに物質の消失と言える。
メギドもあらゆる方向から見てたみたいだけどよく分からなかったみたい。
「質量だの言われても分からん。そういう魔法だ」
やっぱり魔法はいみが分からない。魔法って言えば何でもありなの?
分からないけど、とりあえず推測だけはしておこう。
まず質量、フェンリルの体積だけど、これはさっきから言っている通り減っている。そして消えるのはあり得ない。そうなると何かに変わったというのが考えられる。
そして何に変わったのかだけど、光じゃないかしら。
フェンリルの身体を構成している細胞等が光というエネルギーに変わった。それなら消えたことにはならない。
そして次に気になるのは姿だ。
今のフェンリルの姿は人。さっきは突円のことで気付かなかったけど、頭に獣の耳とお尻からは獣の尾が生えている。
「ねえ、その耳と尻尾って何なの?」
「我は人化の魔法を使うと獣人になるのだ」
獣人っていうと伝承とかで出てくる人と獣の朗報の特徴を併せ持つ生物だっけ。そう見ると今のフェンリルは獣人で有名な人狼と言えるかも?人狼はもっと狼や動物の姿に近かったと思うけど。
とまあ、姿が狼から人に変わったわけだけど、これは細胞組織の組み換えと推測する。
根本たるDNAを変えたならそもそもフェンリルが人だったことにできる。
それを一瞬でやるなんて、やっぱり魔法は何でもありね。
「ところでっフェンリルってメスだったんだ」
「確かにメスはメスだがその言い方はやめてくれ、せめて女と言ってくれ」
全裸の人の姿のフェンリルは女性的特徴のある身体だった。
身長は私と同じくらい。腰回りも引き締まっていてスタイルもいい。そして胸が私より大きい。目視計測でDカップだ。。
「とりあえずこれでも着て」
裸のままなのも何なので服を渡したんだけど。
「あまり着る習慣がないからうっとうしいのだが」
「でもそままだと人の街にはいけないでしょ。ずっと私についてくる気なのよね?」
「別にこのままでもよいだろ」
「人前に裸で出る気?」
「我は気にしないが」
「私が気にするのよ」
いつも服を着ない狼姿のフェンリルにはそうかもしれないけど、女の子が全裸で街を歩いていたら注目されるとかのレベルじゃない。見た目年齢も私と同じくらいに見えるしね。
「服を着てくれないとついてくるの許可しないよ」
「分かった。そこまで言うなら着よう」
そう言って服を受け取るフェンリル。だけど手に持った服をじっと眺めていたフェンリルだったけどむっとした顔をする。
「服がこの上のもんだけでよいか」
「へ?」
そう言って服の上の部分だけを私の方に見せてくる。
え、それだけ?それだと上半身しか隠れないんだけど。
「その下のものは尻尾が窮屈になるから遠慮したい」
ああ成程。確かにズボンだと尻尾が邪魔か。
フェンリルのお尻からは真っ白なフワフワの尻尾が生えているから、その上からズボンを履くのは苦しいのかもしれない。
「それならこっちならどうかしら」
そう言いながらスカートを取り出す。
「それなら問題ない」
スカートを受け取ったフェンリルはズボンを私に返してきてから服を着る。
地肌に直接パーカーを羽織り、膝上のミニスカートを履いている。一応下着類も渡したんだけど押し返されてしまった。
…ミニスカートなのに何も履いていないけど、やっぱりフェンリルは気にしていないらしい。見ただけじゃわからないから別にいいか。
「前のチャックは占めて」
「胸が苦しいんだが」
「…」
前も閉めずにパーカーを羽織っているだけだったのでチャックを閉めてあげると、そんな不満そうな声が聞こえてくる。
うん、気のせいだね。そうに違いない。
「それじゃあ行きましょう」
フェンリルの駄肉のことは気にせずゴブリン目罪して歩き出す。
「どうした急に不機嫌そうな顔をして」
『マスターは胸が小さいのが悩みですから』
「ちょっとメギド何言ってるのかしら!変なことを言わないでくれる!それに私の胸が小さいのは私が天才だからなのよ!」