出発
『マスター、村らしきものを発見しました』
フェンリルとの話がひと段落したところでそうメギドが報告してくれる。
「そっか、それじゃあまずそこに行きましょう」
村に行けば更に色々な譲歩を得れるだろう。フェンリルからも色々と訊けたけど分からないことも多かったし、情報は多ければ多いほどいい。その有用性を判断するためにも出来るだけ多く集めておきたいのだ。
『しかし問題があります』
「問題?」
さっそく村に行こうと思っていたのだけどメギドが何かもんだがあると言ってくる。何かしら。
『どうやらそこに住んでいるのは人間ではないようです』
そう言いながらメギドは空中にその問題の村と思われる映像をホログラムで映し出してくれる。
「うーん、確かに人間ではなさそうね」
そこに映っていたのは貧相な村のようなもの。森の一部の開けたところに草小’積み?のような枯草を積んでテントのようにしたものがいくつもある。その近くに何かの生物も見える。
二足歩行の生物なのだが肌は緑色で故意に汚いぼろ布を巻いているだけの半裸状態。その顔も目も尖っていて口は避けるように大きい。その顔はまるで悪魔に取りつかれているのでは思うような凶悪な顔つき。人間には全く見えない。
でももしかしたら、進化した人間の姿なのかもしれないわね。
「ねえフェンリル、これって人間だったりするかしら?」
「これのどこが人間だ。どう見てもゴブリンだろう」
「ゴブリン?」
知らない生物だ。でも空想上の生物とかでは聞いたことがあるわね。フェンリルと同じような存在なのかも。
「これが魔物だ」
「魔物?ゴブリンが?」
「うむ」
「神獣とは違うの?」
「このような低俗な魔物と我ら神獣を同じにするな」
フェンリルは私の疑問にお怒りのよだ。
まだ私は神獣と魔物の区別も分かっていなのだけど、フェンリルの口調から魔物と一緒にされるのは気に食わないらしい。
ゴブリンも妖精っだか精霊だかの神秘的な存在だと思うのだけど彼らは神獣にはならないようだ。やっぱり分からない。
「とりあえず、この村?っぽいところに行ってみましょう」
なんにせよゴブリンたちのもとに言って話を訊いてみることにしよう。
そう思ったんだけど。
「何だ、ゴブリンどもを殲滅しに行くのか?」
「そんなことしないわよ」
何故か唐突に殲滅とか物騒なことを言いだすフェンリル。どうしたらそうなるのかしら。
「話を訊きに行くだけよ」
「奴らと会話など出来るわけがないだろう「
「そうなの?」
「当り前だ」
私に今の世界の当り前とか言われても困る。一般的な常識であろう魔力のことなんかも知らないのよ。
「ゴブリンとは意思の疎通ができないの?もしかして魔物って意思の疎通ができないのかしら?」
「魔物の種類によるがゴブリンは無理だな」
確かに映像で見る感じだと知能が高いようには見えないけど。それでも魔物は魔力を持った動物なのよね。なら意思の疎通なんて簡単だと思うのだけど。
「ゴブリンは人間のことなど餌としか思ってないからな」
「え、人を食べるの?」
フェンリルが付け足して教えてくれた。もさかの人を食べる危険な存在だった。でも肉食の動物も不通にいるし魔物に肉食の者がいても当たり前か。その対象がゴブリンにとってたまたま人間だっただけだ。
それでも危険なことに変わりはないと思うけど。
「ゴブリンが魔物ってことは、魔法とかも使うのよね」
今の技術レベルがどの程度か分かたないけど、それによっては私のいた頃の時代よりもかなり危険な存在かもしれない。
「普通のゴブリンに魔法は使えないぞ」
フェンリルがそう言った。
…魔物は魔法を使う動物じゃなかったの。
「さっきと言ってることが違う気がするのだけど」
「我も詳しいことは知らん」
と、フェンリルは言う。詳しくりりたかったら専門家に訊けとのことだ。
「ならそこまで危険な存在じゃないのかしら?」
「ゴブリンなど最底辺の魔物だ。大した危険にはならぬ」
だそうだ。
「うーん。それならどうしようかしら」
「何がだ?」
「捕まえて声帯観察とかしたかったんだけど、それは倫理的にダメよね」
動物の生態観察は科学の発展には欠かせないけど、やりすぎると倫理的にまずい。私は出来るだけそこは守るようにしているのだ。でないと何でもかんでもやりたいほうだいだからね。
「我も人間社会について詳しいわけではないが害のある魔物を捕まえたところで倫理的には何も問題ないだろう」
「そうなの?」
「うむ」
それなら捕まえに行こうかな。意思の疎通も出来るか萠出。
「よし、行こう。メギドこの場所はどこ?」
『ここから西に約1kmほど言ったところです』
「了解。フェンリルはどうする?」
「そうだな。お前と暫く行動を共にしよう」
「了解」
須古井だけ悩むような間があったけど、すぐにそう言ってくれるフェンリル。私もフェンリルのことをもっと知りたいし一緒に来てくれるならうれしい。
「よしそれじゃあ出発よ」
そして私たちはメギドの案内でオブリンたちのもとへと向かうのであった。