出会い
地上に出るためエレベーターに乗る。地上付近は自然の状態なのでその部分は強引に土を掘り進めていった。後で整備しておこう。
地上に出たエレベーターから降り周りを見渡す。
「久しぶりの地上ね。二千根前より空気がおいしい気がする」
久しぶりと言っても私の感覚としては昨日今日のことだけど。実感は殆どない。
でも空気がおいしい気がするのは本当。二千年前は世界大戦で空気が汚れていたけど今はすごく綺麗な状態だ。さっきの空調調査で汚染物質なんかは殆ど確認できなかったから間違いない。
「さて、これからどうするか」
これからはやることが本当にない。二千年前も戦争からは嫌で逃げてきただけだから特にやることはないのだ。
「とりあえず、人を探そうかな」
とりあえずは情報集め。そのためにまず人を探す。今の文明とかもづなっているのかも確かめなくちゃいけない。
「メギド、ドローンあと三つ追加で、それを四方向に飛ばして」
『了解しました』
メギドにドローンのことをお願いする。脳内にメギドの声が返ってくる。
メギドは私が組み上げたAIだ。いろいろとサポートしてくれる。さっきの施設にメインコアがあって、そこと常に私は繋がっている。
「あ、あとここの整備もお願い」
『了解しました』
次からはスムーズに出入り出来るようにエレベーターの整備もお願いしておく。
『マスター、大型の生物が近づいてきています』
そこでメギドからそんな報告がくる。
「大型生物?」
『はい。全長三メートル程の四足歩行の生物です。右方向からもうすぐ視界に入ります』
「オッケー。ありがと」
右方向を向きながら銃を取り出す。
三メートルとなるとっけ工大型の生物だな。熊とかだろうか。それにしても大きすぎる気がするけど、二千年前にはこの辺りにそんな熊はいなかった。まあ二千年も経っているし製提携が変わっていてもおかしくないけど。
そしてすぐにその姿を現した。
私の目に映ったのは大きな白い犬、というより狼だった。
「おぉ。狼」
驚いた。まさか狼とは。しかもこの大きさ。二千根前には生息していなかった。この二千年で生まれたんだろう。それにしても狼って絶滅してなかったんだ。私の知ってる限りは絶滅してたけど、実はしてなかったていうのもよくある話だ。
「さて、襲ってこないみたいだし、生体調査のために捕まえてみようかな」
私と正面に向かい合う狼はこちらをじっと見ているだけで襲い掛かってくる亀背がない。それなら捕まえるのも面白いかもしてない。
そう思って餌を用意しようと思った時のことだった。
「貴様、我を恐れないのか」
「?」
どこからそんな声が聞こえてきた。おかしいなだrも居ないはずだけど。キョロキョロと周りを見渡す。やっぱり誰もいない。
「こっちだ人間」
「…」
今、狼から声が聞こえた気がするけど、気のせいだよね。
「聞いているのか」
「…」
やっぱり狼から声が聞こえる。
「おい」
「もしかして、貴方がしゃべってる?」
「祖霊がい誰がいる」
狼が話してるね。驚いた。
「何でしゃべれるの?それも日本語を」
「何故と言われてもな。まさか我を下級の魔物と勘違いしているのか」
「魔物?」
何かよくわからない単語が出てきあけど、とりあえずこの狼は言葉による意思の疎通ができるみたいだ。驚いたけど都合がいい。
「気になることも多いけど、とりあえず自己紹介ね。私はまきな。よろしくね」
「なかなか肝の座った人間だな」
多分この狼は進化した狼だろう。私とこうもスムーズに会話が出来ているのもそれだけ脳が進化したということ。言葉は声帯が進化した。そう考えたら納得できる。その大きな口で流ちょうに言葉を話せるのはびっくりだけど。
それよりも今一番気になるのはこの狼が日本語を話しているところ。
二千年経っても日本語が使われているのか。
「その言葉はどこで覚えたの?」
「我にいきなり質問か。まあいい、我も訊きたいことがあるし答えてやろう。言葉は自然と身についたどこでと言われても答えられん」
「成程」
それもそうか。つまりは日本語は普通に使われているんだな。少なくとも日本語を使う知的生命体がいることは分かった。さっきの口ぶりから人間もいると思う。
でも、人間の最大の武器である知能が追い付かれた以上、簡単に動物たちに蹂躙される。つまり、人間はこの世界において低い地位にいるかもしれない。
もし動物たちが自分たちで武器を作れるようになったら人間に勝ち目なんてない。
「我からも質問だ。貴様、何故恐れない」
と、狼が問いかけてきた。
何故って言われても、そういえばさっきもそんなこと言ってたけど。
「貴方に襲い掛かってくる意思がないから?こうして話も出来るし」
「そうではなく、我の魔力が恐ろしくないのかと訊いている」
魔力?なにそれ。オカルトの話?
急にそんなこと言われても訳がわからないんだけど。
「その魔力って何?」
「まさか魔力を知らないのか?」
私の質問に心底驚いた顔をする狼。それってそんな常識的なことなの。
「貴様から全く魔力を感じないのも関係あるのか。いや、とぼけているだけか。おい、我を騙しているのではないだろうな」
「何で騙す必要があるのよ。私は色々あって常識がないから教えてくれると嬉しいかな」
コールドスリープのことは面倒なので黙っておく。
「魔力がな何と言われてもそれこそ答えられないな。空気と同じように自然に満ちているもの、としか言えないな」
なにそれ。
「メギド分かる?」
『何らかの物質をこの時代では魔力と呼んでいるのではないでしょうか』
「ふむ」
メギドの言っていることはわかる。でも、それを生身だけで感知するのは無理なんじゃないかな。
「誰と話している?」
「ああ、そっか紹介するね。この子はメギド」
『よろしくお願いします』
メギドの声は私の脳内でしか聞こえていなかったので狼は不思議そうに首をかしげていた。
なので紹介した。
私の持っている携帯端末から少女の姿がホログラム投影されて頭を下げる。
「これは、幻影魔法。いや、しかし魔力は感じない」
突然現れたメギドに驚く狼。この時代だとホログラムは珍しいのかな。
「ところで魔力の話に戻るんだけど、それって物質、エネルギー?」
「貴様、マイペースだな」
それは自覚している。よく言われる。
「まあいい。エネルギーだな」
溜息交じりにこたえてくれる狼。そんあ狼に質問を続ける。
「それって目に見える?」
「普段は見えないな」
素直に答えてくれる狼。優しい。
「じゃあどうやって感じるの?」
「なんとなくだ」
意味が分からない。何んとなくなんて言われてもわからない。五感以外、つまり第六感というやつだよね。それが感情によってできたものなら分かるんだけど自然界にあるものっていうのがよく分からない。
「貴様ら、本当に人間か?貴様らからは一切魔力が感じないのだが」
「私は一応人間だよ。メギドは違うけどね」
魔力とは人間の中にもあるものなのか。
「メギドは機械だね」
「機械?」
追加で説明すると首をかしげる狼。
「魔力を持たない機械。まさかオーパーツか」
また知らない単語だ。単語の意味自体は確か現代では再現不可能なものとかだったと思うけど。
二千年経って本当に色々変わってるみたいだね。