表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/113

橘平と桜、神社を見せる

 桜はベージュのショルダーバッグからタブレットを出し、八神家で見つけた神社の写真を葵と向日葵に見せた。


「本当にそっくりだな。むしろあれのまんま。森と鳥居まであるのか」


「ここ見て、狛犬みたいなものもあるのよ。八神家も封印に関係してるんじゃないか、って睨んでるの。その解明はこれからだけれど」


「それと、これ。描いてみたんだけど」


 そう言って橘平がリュックから取り出したのはスケッチブック。開くと、あのミニチュア神社のデッサンが現れた。全体図のほか、後ろから見た図、屋根、森、などさまざまな各部が写真のように描かれている。3人は見事な描写力にあいた口がふさがらなかった。


「描くことというより、観察を目的に描いてみたんすけど」


「うっま…」


 向日葵の「それ以外何が言えます?」な感想に、他二人も激しく同意する。


「へへ、そうですかねえ。まあ特に何も分かんなかったんですけど、森のバケモノって狛犬だったのかなって。ほらあいつら、口開いてるヤツと閉じてるヤツでしたよね」


 そう言われて、桜たちはあのバケモノの様子を思い出す。


「多分そうだったかも~?」


 向日葵は小さな声で発言する。葵は無言だ。彼女も葵も、戦うことに必至でそこまで覚えていなかった。


「確かにそうだった!」桜はピンときたようだ。「森の中に狛犬。じゃあこの鳥居もどこかにあるのかなあ」


「この模型通りだとすると、森の近くに鳥居のミニチュアがあるってこと~?」


「今まで見たことないけど……犬の散歩ついでにちょっと探してみますね。草むらのなかとかに隠れてんのかな」


 また桜は寛平から聞いた情報をもとに、一宮家でまもりに関する物を探していることも報告した。今のところは特にめぼしいものは見つかっていないという。


「まじで?お家広いから、一人で探すの大変でしょ。私もやるよ」


「俺も手伝う」


 向日葵と葵がそれぞれ答えた。


「ほんと?じゃあ、今度来てもらおうかな」


 ここで橘平は戸惑った。


 自分も手伝いがしたい。俺も行くと答えたいけれど、若い男性と会ってはならない桜の家へ、一宮家へ自分が行っていいものなのかが分からなかった。


 橘平の表情から察した向日葵は、何か助け船が出せないかと悩んだ。しかし、早々と桜が解決した。


「橘平さんも一緒に来て!友達の家なんだし!」


 喜びを深く感じる前に橘平は声を発していた。


「いいの!?」


「うん!」


 しかし直後「でも、男の子のお友達ができたなんて正直には言えないからどうしよう」問題がやはり発生した。


 向日葵がフレッシュ入りのコーヒーを飲みながらさらっと提案する。


「んなのさあ、私の友達にしちゃって、自由研究でお伝え様見学に来たとかいえばいいのさ。ほら、きー坊は役場の職員の子よ?私が面倒見てるって感じで通るじゃん。その時さっちゃんは…出かけたふりするして合流するとかね」


「おお、じゃあそれでおねしゃす!!」


「いえーい、解決!」


 と、橘平と向日葵はグータッチした。


 そこまでは良いとしても、結局、社会人のことを考えると捜索は土日に限定されてしまう。


「有休か」


「でもさ、いま有休取りにくいっていうか却下されるらしいじゃん。伊吹さん、お子さんの用事で有休申請して感知器にねちねち言われてた。そして取らず…ぶらっく」


「有休って難しいんすね」と橘平がこぼす。


「去年まではヒマで取りやすかったのよ~今年が異常なんだよ~」


 桜は何かを考えていたようだったが、「ねえ」とみなに呼びかけ「みんなで探すならさ、お伝え様の桜まつりの期間はどう?学校始まっちゃってるけど、この時期は神社が忙しくて、家の方はがら空きだから。その土日で。これなら有休取らなくていいよ」


 住人である桜の意見がもっとも、とこの件は解決した。気がしたが。


「ああ、そうだ、きゅーじつしゅっきん!ちょっと待って」


 そう、社会人組は地獄の休日出勤があり、土日だからと言っていられない現状があった。向日葵と葵はさっと課内のスケジュールを確認する。まだ、その日の出勤者は確定していなかった。


「すまん、決まったら連絡する」


「ああそうか、未成年とか他のオトナが使えるようなら、土日に入れてくんだっけ。スケ確定は来週以降か~」


 頬杖をついてままならぬ休日に悲しみを感じていた向日葵だが、ふと視線をテーブルに移すと、それぞれのカップが空になっていた。


 だいぶ長々と話していたし、みな喉が渇いたころだろう。「あら、もうみんなドリンクないね~。日本茶でいいかな。入れてくるね」と、台所へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ