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橘平、神社の娘と出会う~少年は友達のいない少女と悪神を追い、結ばれない二人を気にかける  作者: 坂東さしま
橘平と桜、物語と重ねる

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橘平、友人と遊びの約束をする

『ありがとう』


「何が?」


『森の扉の絵、描き始めてくれて』


「ああ、うん」


『君のおかげだよ。これが終わったらさ、次は神様を描こうか』


「神様ってなんだ?」


 そこで橘平は目が覚めた。いつか見た夢であるが、起きた瞬間に内容は忘れていた。




◇◇◇◇◇




 終業式に返された橘平の通知表は、可もなく不可もなかった。1と2はないけれど、5もない。3と4が半々の内容だ。小学生のころからおなじみの、特徴のないことが特徴の成績である。


 しかし、今、彼には勉強よりも大事なことがある。


 悪神退治だ。


 明日から春休みに突入する。宿題は大してなく、残りの時間は悪神に関することや桜を守る鍛練に費やせるのだ。


 ゆるい陸上部の練習も、最近は鍛練のつもりで励んでいる。そのおかげか橘平のタイムは著しく伸びた。


 実は橘平、中距離走の選手。顧問に春大会へ出場するよう勧められたが辞退した。桜たちのために頑張れる時間を1秒でも増やしたかったからだ。


 さて、今日も今日とて放課後からそうしたい橘平だが、高校生にも付き合いというものがある。一番の友人、大四優真とのお付き合いだ。最近はあの3人とばかり会っていて、優真の誘いをすべて断っていた。そろそろ遊ばないと友人が消えてしまう恐れがあった。


「昼ご飯食べたらさ、うち集合ね!実は観たいものがあって、一緒にと。よっしーもくるよ」


 優真は下駄箱から本体も靴紐も白い運動靴を取り出し、ワクワクした表情で、橘平と遊びの約束を確認した。


「いつもの鑑賞会ね。何の映画?宇宙?魔法?サメ?ナマケモノ?」


 優真は海外映画、特にファンタジーやSFといった空想ものが好きだ。たまにドン引くほどのB級映画も持ってくるが、それはそれで突っ込みながら観るのが楽しかった。


 今日もきっとそういう類のだろう、と踏んでいると、優真は靴を手に「ううん、ええと」何か言いにくそうである。しかも顔はほんのり赤い。


 恥ずかしそうで言いにくそうな様子。もしかしたら彼の憧れ向日葵に似た人が出ている、高校生にはふさわしくない作品だろうかと橘平は考えてしまった。それを友人と鑑賞するなど、優真は一体何を考えているのだろう、と。


「もしかして、優真」


「クラシカ・ハルモニ」


 先日、桜と作り損ねたロボット。優真が口にしたのはあのアニメのタイトルであった。


「なーんだよ、それかー。なんで言いにくそうに」


「ほら僕、アニメ全然見ないからさ、なんか言うの恥ずかしくって」


 オタクっぽい、というよりオタクの優真だが、アニメは専門外。幼いころですら、幼児向けアニメは見ていなかったらしい。彼曰く、生身の人間が動いている方が面白いという。


「ほとんど見ないからさ、みんなにアニメのこと教えてもらおうかな~なんて」


「よっしーならめっちゃ教えてくれるね、確かに」


 よっしーこと五社良則(ごしゃよしのり)は彼らの友人で、坊主頭のアニメオタクである。その頭としっかりした体格で野球部に間違えられやすいが、バドミントン部。ちなみに優真は帰宅部だ。


 橘平は深緑地に白い線が入ったスニーカーをコンクリの床に落とし、「でもどうしたんだよ、いきなり日本のアニメ観るって」立ちながら履き始めた。


 優真はまだ靴を手にしたまま、早口でしゃべる。


「に、日本のアニメーションは?世界に誇る文化で一大産業であるから?社会勉強のために観るのも悪くないかなと思ったんだよ!こ、今度はアニメ映画も見ようかな!?おかしいかな!?」


「べ、別におかしかないよ。まあ、楽しんで観ようよ、うん」


 友人の様子がいつもと多少違うようだが、橘平はつい最近クラシカ・ハルモニの話をしたばかり。見直すいい機会ができた。


「じゃ、飯食ったらすぐ優真んちいくね」


「待ってる」優真はしゃがんで、やっと靴を床に置いた。「そうそう、もっと大事な事。橘平君にしか言えないから今言わなきゃ」


 橘平は靴を履き終え、リュックを背負い直す。


「いつ野宿する?」


 さっぱり忘れていた橘平だった。調べる、という予定もすっかりどこかへ消えてしまっていた。


「え、今?」


「春休みじゃん。これ逃したら夏休みじゃん。暑くて死ぬじゃん。今じゃん」


 どうもこれは逃れられないらしい。自らが招いた事故とはいえ、友人がここまで本気とは思わず、過去の自分を恨む橘平だった。GWもあるよ、と言いそうだったが、結局は先延ばしにするだけ。しつこい友人からは逃れられなそうだ。


「えー、うん。防寒、しっかりして。す、スケジュール確認して折り返す感じで?」


「即折り返してね!!春休み中だよ!!」


 もう逃げられないことを覚悟した橘平だった。

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