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桜、橘平と電話する

「ほんとすごいの!すごいすごい!」


『え?え?』


「すごいのよー!跳ね返しちゃう感じ!」


『ちょ、ちょっと落ち着いて!何がすごいの?』


 桜は昼間に優等生たちを撃退した八神の「お守り」について、橘平に報告すべく電話をかけていた。しかし、桜は興奮で具体的な説明ができず、橘平は困惑していた。 


「あー、ごめん。だってすごいもん。バリアしてる感じ」


 桜は制服のまま、畳に三角座りし、大きな丸いクッションを抱え込んだ。


 彼女の部屋は8畳ほどの和室。小学校の頃から使う学習机や大き目の本棚が置いてあり、本棚の一角には黒猫やピンクのウサギ、トイプードルなどのコロンとした小さなぬいぐるみが飾ってある。一見、シンプルで片付いているように見えるが、他の荷物は押し入れに詰め込んでいる。


『バリア?』


「森の巨大なバケモノがさ、私たちを踏みつぶそうとしたじゃない?」


『したした』


「あれとおんなじことが起こったのよ」


 放課後に起こった出来事を、桜は橘平に語った。彼女の話の最中、橘平は一言も発さずにじっくりと聞いていた。


『森のあれも、八神のお守りの効果だったってこと…なのかな』


「絶対そうだよ!」


『すごいんだな~お守り』


 橘平の言葉は、あくまでも「八神のお守り」に対する感想だ。


 桜はお守り自体というより、「…お守りっていうか、橘平さんの有術じゃないかな」。


 がた、ぼと、っと何かが落ちてぶつかったような音が、スマホから聞こえてきた。


「橘平さん?どうしたの?」


『まじで?え、俺が超能力者ってこと?』


 声の感じからすると、橘平は混乱しているようだった。


 それも当然だろう。今まで平凡な環境で育ち、学校でも目立たない生徒として生きてきたのに、突然、超能力に目覚めたかもしれないのだ。


「お守り自体に効果があるならさ、私が描いても効果があると思うけど」


『あー、八神の人間が書かないと効果ないって聞いたな』


「そういうことよ。八神の人しか使えない有術なのよこれ」


『…そう、か…』橘平はゆっくりと『父さんやじいちゃんも使えるのかな…?』疑問を口にした。


「可能性はあるよね。でも、今それを聞いていいかどうか」


『そうなんだよなあ、まもりさんのことより聞きにくい。それに封印の事とか桜さんたちの事とかバレたくないし』


「ごめんね、橘平さん。気を使わせて…」


 桜はクッションをぐっと掴む。


『こっちこそだよ!勝手に俺から首つっこんでるわけだからさ、ほんと、桜さんは気にしないでよ!!』


 何を言っても、何をしても、橘平はどこまでも優しい。優しすぎて不安になるくらいだった。


「ありがとう、橘平さ」


「おねえちゃん」


 桜が顔をあげると、横に妹が立っていた。


 話に夢中で、部屋に誰かが入ってきたことに気が付かなかったのだ。


「つ、ばき…!」


 橘平に何も言わず、桜は急いで通話を切った。

旧版にはないお話です~

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