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第22話


 地獄のような空気が続く。


「……でさぁ、そいつヤバくね?」


「……」


 姫が岩島のことを無視し続けている……!


 どれくらい時間が経ったのかわからない。それぐらい重い空気が一帯に流れている。周りの人たちもこの空気を察したのか次々と人が掃けていく。


「てかさぁ、姫ちゃん」


「……」


「前から思ってたけど、マジで可愛いよね」


 ついこの前まで白崎と付き合っていたはずなのに、信じられない軽々しさ。


 姫も同じようなことを思ったらしく、そっぽを向いて今にも舌打ちしそうなほど苦々しい表情を浮かべている。


「空いてる日あったら遊び行かね? 絶対楽しませるからさ。俺結構そういうの自信あるし」


「やめなよ」


「……あ?」


 耐え切れず、口を出してしまった。


「姫が嫌がってるよ」


「何お前? 関係ねえだろ」


「関係あると思いますよ。姫さんは修司さんのお友達なので」


 ユリのどこか冷たい声が響く。


「あなた、声色からしてこの前のダサい人ですよね? 何が楽しくて嫌がらせなんかするんですか?」


「この声……ふーん、何? 寄ってたかって俺のこといじめようっての?」


「そ、そういうわけじゃないけど」


「じゃあ黙ってな。なあ姫ちゃん、連絡先」


「嫌です」


 決して岩島の目を見ず、しかし決して甘く見られないように、姫の強い言葉が一瞬の静寂を生む。


「なあ、何でそんなに意固地なん? ん?」


 岩島は何を思ったのか、俺と姫を交互に見て気味の悪い笑みを浮かべる。


「ははーん、さては姫ちゃん、こいつのこと好きなんだ?」


「っ!」


「要がこいつから俺に鞍替えしたから、姫ちゃんも俺のこと嫌いになった感じ? でもしょうがないじゃん。俺の方がこいつより魅力的なんだし」


 しかし一切怯む様子を見せず、岩島の口は動き続ける。


 そして岩島はあろうことか、無理やり姫をこちらに振り向かせようと手を伸ばす……!


「やめろっ!」


『バシャッ!』


 一瞬、目の前が真っ白になった。


 次の瞬間、冷たい雫が髪から滴り落ちて服を濡らす。その服は今更雫の一粒なんて気にしないほどぐしょぐしょに濡れている。


 水を、かけられた。


「マスター? マスター! 何ですか今の音? よく見えない……! ねえマスター!」


「気持ち悪いんだよお前ら。イケてない奴ら同士でわちゃわちゃして、幸せオーラ振りまいて」


「ねえ! マスター!」


「陰キャは隅っこで大人しくしてろよ。いきがんなゴミが」


 姫の目がスッと静かに据わる。右の拳を握り締めて岩島を睨みつける。


 何故か全てスローモーションに見える。きっと脳が逃げろと言っているんだ。だけど逃げられない。姫を止めに動くことも出来ない。


 足が震えて、動けない。


『ピシャッ』


 そのとき、冷たい水がおでこを叩く。


 目が覚めたように顔を上げると、岩島の頭がびしょびしょに濡れていた。


 白崎が、岩島に水をぶっかけたのだ。


「ねえ、私言ったよね?」


 白崎は逆さのコップを数回強く振り、それを放り投げる。


「私の邪魔、しないでって」


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