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第21話


「ねえ、あんたは要のことどう思ってんの?」


 お昼時の食堂で、一足先に菓子パンを食べ終わった姫にそう聞かれ、危うくうどんを喉に詰まらせそうになる。


「ど、どうとは?」


「そのまんまの意味」


「えっと」


「好きなのか、嫌いなのか」


「……嫌いではない、かな」


「はあぁ」


 姫はわざとらしくドデカいため息をつき、俺はうどんを一本飲み込む。


「あんた優しすぎるよ」


「……」


「というか、他人に興味が無い?」


「えっ、いやっ、そういうわけでは全然っ」


「ふーん」


 姫からの懐疑の目に耐えられずスマホに視線を落とすと、ユリから着信が来ていることに気付く。


 そういえば一体これはどういう仕組みなのだろうと首を傾げていると、ニヤニヤしている姫と目が合う。


「ユリちゃんにも意見聞こっか」


「え、それはちょっと」


「良いから良いから」


「あっ!」


 姫は俺の制止を振り切り、人差し指で画面をタッチする。次の瞬間、



「姫さんこんにちは! よろしければマスターのお人好しを直してくださいませんか?」


 色々と聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。


「ユリちゃんお疲れ~。ところでマスターって何?」


「あーえっと、最近ユリと一緒にゲームして、その感覚がまだ残ってるんだと思う」



「へー、どういうゲーム?」


「まあそれはそれとして、まず俺はお人好しじゃない」



 一瞬の静寂、数回の瞬き。姫とユリが目を見合わせているかのような時間が流れる。


「ユリちゃんどう思う?」


「何事も善意に捉えて、悪い人に騙されそうな危うさがある。その他の要素を考慮しても、修司さんがお人好しと評価されるのは当然だと思います」


「ユリ先生はそう言ってるけど?」


「……そう見えるんだ」


 何だか馬鹿にされている気がして、嫌な気分になって俯く。


「俺だって最初、白崎のこと嫌いだったよ。大嫌いだった。けど」


 思い出したくないことも含めて、まるでスライドショーのように次々と白崎に関する記憶がフラッシュバックする。


 最後に見えた一枚は白崎の後ろ姿だったが、もう怒りの感情は湧いてこない。


「恨めないんだよ」


「それがわからないのよねぇ、恨むでしょ、普通」


「私もそう思います」


「……本気だから」


「え?」


「本気の人の目をしているから」


 水を一口飲んで、ユリに本気で恋をしていたあの頃の熱を押し戻す。


「諦めない人の目をしているから」


「「……」」


「わからないけど、共感しちゃったんだと思う」


「そういうことなら、これ以上私らから言うのは無粋か」


 恐る恐る顔を上げると、頬杖をつき、少し目尻を下げた姫と目が合う。


「あんたの考え尊重する」


「ありがとう」


「結果は一つでも、色々な解釈の仕方があるんですね。勉強になりました」


 ユリのちょっと人工知能すぎるセリフを聞き流し、箸を置いて手を合わせようとしたそのとき、


「お、ここ空いてんじゃん」


 聞き覚えのある声。見上げると、岩島成樹が水と菓子パン二つを持って姫の隣に座った。


「あ」


 そして、俺の顔を指さす。


「要にふられた奴じゃん」


 岩島がそう言った瞬間、穏やかだった姫の目つきが鋭く変わった。


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