迎えに来た友達
語られることも多く、結構有名な怪談です。
元ネタは世にも奇妙な物語の「あけてくれ」になるのでしょうか。
私は稲川淳二さんが語ったこのタイプのオチが一番怖くて好きですね…
こちらは百物語八十二話の作品になります。
山ン本怪談百物語↓
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私の友達であるS子が修学旅行で体験したお話です。
クラスのみんなが楽しみにしていた修学旅行。
S子は仲が良かった友達とグループを組み、色々な思い出を作る予定でした。
修学旅行2日目。
2日目は朝から自由行動になっており、S子が班長を務める5人グループは夕方まで観光を続けていました。
「ガシャン」
帰りのバスに乗っていた時のことです。
S子はバスの中で奇妙な音を聞いたそうです。
しかし、バスは止まることなく宿泊先のホテルへ無事に到着。
友達に音の事を話しても、みんな知らないと首を横に振るばかりだったそうです。
事件が起きたのはその日の夜の事でした。
部屋で友達と雑談していた時、外へ飲み物を買いに行っていた友達が青ざめた顔で部屋に戻ってきたそうです。
そして…
「S子…落ち着いてきいてね…さっきB君が車にはねられて死んだって…先生が話してた…」
震える声でそう言いました。
B君とは、当時S子が付き合っていた彼氏だったのです。B君は隣のクラスの男子生徒で、当然修学旅行にも参加していました。
「う、嘘!?そんなことって…ちょ、ちょっと先生に話を聞いてくる…!」
S子が部屋を飛び出そうとした時、友達のA美が慌てるS子を止めました。
「ちょっと待って!何かの間違いかもしれないし…明日になるまで待ってみようよ…?」
S子はパニックになっており、A美はそれを落ち着かせるためにS子を止めたのでしょう。
「そんなこと言ってる場合じゃない!私先生と話してくる!」
しかし、S子はもう止まりません。A美の手を振り切って部屋を飛び出そうとしたその時…
「お~い、S子いるか~?」
部屋のドアの向こうから、B君の声が聞こえてきたのです。
「えっ?B君?」
それはありえないことでした。だってB君は車にはねられて死んだのだから。
「な、なんだ…!B君大丈夫じゃない!心配して損しちゃった!」
安心したS子は部屋のドアを開けようとします。しかし…
「ダメよ、S子!」
部屋にいたA美が再びS子を止めます。
「どうして…B君が来てるんだよ!?」
A美はS子の腕をがっしりと掴みながら、怯えた表情で首を横に振っていました。
「B君は死んだんだよ!あそこにいるB君はもう…この世にはいない存在なの…!」
ほかの友達もS子を止めに入ります。
「あれはB君の幽霊だよ!きっとS子を連れていこうとして…」
「絶対に開けちゃダメ!開けたら大変なことになっちゃう!」
友達は必死でS子を止めます。しかし…
「幽霊だってかまわない!私はB君に会いたいの!だから離して!」
B君に会いたいS子、S子を守りたい友達。部屋の中は異常な熱気に包まれていました。
「S子、ここ開けてくれよ~」
B君の声も止まりません。何度も何度もS子の名前を呼びます。
「離して!」
「行っちゃダメ!」
「B君に会いたいの!」
「連れて行かれちゃう!」
「連れて行かれたって構わない!」
「ダメだよ!」
「早く行かせて!」
「行っちゃだめ」
「行かなきゃ!」
「行くな」
「B君のところへ!」
「行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな」
S子は全員を振り払うと、部屋のドアを思いっきり開いたそうです。そこで見たものは「真っ白な景色」でした。
S子が次に目を覚ました時、そこは病院のベッドの上だったそうです。そこでS子は、自身に何が起こったのかを聞かされました。
修学旅行の2日目。S子が帰りに乗ったバスは大きな事故を起こしてしまい、崖の下へ転落してしまったそうです。
乗客はS子とごく一部の乗客以外全員死亡。一緒の乗っていた友達も全員亡くなってしまいました。
「そうか…私…もう少しで…」
S子も生死の境を彷徨っており、非常に危険な状態でした。
あれは夢の中の出来事でした。
当然B君は死んでおらず、S子の無事をただ祈っていたそうです。
「みんな私だけ戻ることが嫌だったんだろうね。友達だったから…」
S子は悲しそうな顔でそう話していたことを、私は今でも忘れていません。
この事故があったから、S子はすっかり変わってしまいました。
卒業してからは同じ大学へ通っていましたが、身体はすっかりやせ細り、声をかけることも段々少なくなっていったのです。
そして大学3年生の冬、S子はトラックにはねられて亡くなりました。
事故か自殺かはわかりません。
ただ、私たちの間でS子は「あの子たちに連れて行かれた」のだと思っています。
詳しいことはわかりませんが、なんとなくそう思ってしまうのです。
だってあの子は、友達思いだったから…