22.王宮でパーティー1
秋も深まり、庭園の木々も赤や黄色に色づいている。
冷たい風が心地良く通り過ぎた。
学園へ行く準備が早く終わったので、庭園を散歩していると、お兄様が迎えに来てくれた。
「メリア。そろそろ行こうか」
「はい。お兄様」
「朝早くから何をしていたの?」
「ストライブ様へお礼のお菓子を作ったので用意していました。今回のテストの結果がとても良かったのです!」
なんと、今までで一番良い成績となり、学年別の順位は15位!
前世を思い出してから勉強が疎かになっていて心配だったけど、むしろアップ!?
ストライブ様のおかげね!
「私も一緒に行こう」
「お渡しするだけなので、すぐに終わりますわ。午後の休憩時間に行こうと思っています」
「何かあったら大変だ。しかし、午後の休憩時間は生徒会の用事が…」
「ストライブ様とは何度もお会いしてしますし、教室も近いので大丈夫です。リエッタ様と一緒に行ってまいりますわ」
ストライブ様にはもう人見知りはしない。
「…気をつけて」
あと、元婚約者のジャガーに階段から落とされた件があったので、学園での私のことをお兄様は特に心配しているようだ。
「はい。ありがとうございます」
ストライブ様はとても優しい人だともう分かっているし、メリアーナが他に話をする男性は特にいない。
今日も麗しい兄妹愛だ。
私はお兄様の腕にギュッと抱きついた。
昼食を済ませたあとの休憩時間。
里英ちゃんは委員会の用事があるようだった。
早苗様はご令嬢達に数学の授業の質問を受けている。
私はお礼にと渡す包みを手にストライブ様の教室に向かった。
過去最高の成績だったことを早くお伝えしたい!
イッチくんマスコットも心を込めて作った!
こっそり教室の中を覗くとご令嬢達に囲まれているストライブ様が見えた。
…やっぱりモテるわよね。
あっ!あのご令嬢、くっつきすぎじゃない!?
それにあのご令嬢も!
ストライブ様が困っているのが分からないのかしら!?
困っている…わよね?
でもあの方とても綺麗な人だわ。
あんな人に好意を持たれたら嫌な気はしないわよね。
ハラハラしながら廊下から覗き込んでいたけど、どうしよう。
あれでは声が掛けづらいわ。
教室の奥の席のようだし…。
またあとからにしようかしら。
迷っていると私にうしろから声を掛けてくれる人がいた。
「フフッ。お呼びしましょうか?」
「!!?」
「メリアーナ・クリスク公爵令嬢ですよね?私はレイの友人のアレックス・ヴァリテです」
長い赤い髪に黒い瞳のスラリとした長身の男性が、ニコリと微笑んで挨拶をしてくれた。
「は、はじめま、まして…」
極度の人見知り発動!!
このパターンは考えていなかった!
ひとりで知らない教室に向かうなんて、人見知りメリアーナにはまだ早かった!!
カチーン!と固まってたらヴァリテ様がストライブ様を呼びに教室に入ってくれた。
いい人だったー!
「レイ!可愛いお姫様が来てるぞ」
一斉に教室にいる人達がこっちを見た!
ストライブ様の周りにいるご令嬢達の目が怖い!
ビクッとして教室の扉の陰にサッと隠れた。
怖いよー!!
「クリスク公爵令嬢!」
ストライブ様が近くに来てくれた安心感でホッとしたあと、ふにゃりと笑顔が出る。
「!!」
ストライブ様の頬が少し赤くなった。
「貸しだからな」
ヴァリテ様はポンッとストライブ様の肩を叩いてまた教室に戻った。
「…行きましょうか」
手で顔を隠していたストライブ様が連れて行ってくれたのは中庭だった。
「どうぞ」
空いているベンチにハンカチを敷いてくれた。
隣に座っていると勉強会の時にストライブ様の肩に寄りかかって寝てしまっていた時のことを思い出す。
『そろそろフレッド様が迎えに来ますよ』と起こしてくれた。
すぐ近くにストライブ様の顔があって驚いたわ!
蕩けるような笑顔で!!
私ってば肩と腕にくっついて眠っていたのよッ!!
だって温かくてとても良い香りがして…!
思い出して顔が赤くなっていたら、ストライブ様が上着を掛けてくれた。
「え?あ、ありがとうございます」
暖かいわ。それにこの香り…このあいだも。
「風が少し冷たいので」
微笑みながらサラリと言う。
ベンチにハンカチを敷いてくれることもそうだけど、こんなことお兄様以外にできる人がいるとは!
貴族令息ってやつは…。
さりげない優しさがとても様になってて格好いいけど!!
恥ずかしさを俯いて誤魔化す。
「クスッ。テストの結果のことですか?」
恥ずかしがってるのがバレた?
余計恥ずかしい!
「は、はい。今までで一番良い成績を残すことができました。ストライブ様、本当にありがとうございました」
お礼を伝えた。
「そ、それで…こちらを」
イッチくんマスコットをラッピングした包みを取り出す。
社交辞令で欲しいって言っただけかもしれないけど…。
「あの可愛らしい人形ですね。嬉しいです」
受け取ってくれた!
良かった!
「あ、あとこちらも…」
「これは?」
「私が焼いたクッキーです。先日はうちの料理人にお願いしたのですが、今回のクッキーは自分で焼いてみました」
「…」
「教えてもらいながら作りましたので、味は大丈夫だと思います。でも形が前回ほど綺麗ではないのですが…。よろしければぜひ」
マスコットだけではなく、お菓子も手作りしてお礼を伝えたかったのだ。
「ありがとうございます。…食べるのがもったいないですね」
私の手のひらの上にあるクッキーの包みを見ている。
「本当に嬉しいです」
クッキーを私の手ごとストライブ様の両手で包み込み、私を見つめる。
「ストライブ様?」
眉を少し寄せた泣きそうで、切なそうな瞳…。
どうしてそんな瞳で私を見るの?
また…目が離せなくなる。
どうして?
ドキドキと心臓が煩い。
人見知りのドキドキとは違う感じ。
胸が甘い痛みで苦しいような…。
「クリスク公爵令嬢、お願いがあります」
「え?」
「今度の王家主催のパーティーであなたのエスコートをさせていただけませんか?」




