表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/88

濰水へ

「それでは行って参りますぞ!仔細は(かね)てからの手筈通りに…くれぐれも軽挙妄動せぬよう!貴方が最後の砦なのですから。」


田横はそう告げると、甥の斉王・田広を励ました。


「判っている。叔父上もくれぐれもお気をつけて…明るい行く末をきっと実現して下され!彭城には既に使いを出してあります。無事をお祈り致します…」


田広も覚悟を示して叔父の田横を送り出した。


「では皆の者!参る♪我に続け!」


「「「おう~!!」」」


斉国軍の士気は最高潮に達して、返す言葉にも覇気が感じられた。


こうしてゆるゆると、田横率いる5万の斉軍は動き始めた。


向かうは『濰水(いすい)』である。


『……』


楚側の主力も斉国の進軍の報を受け取ると、こちらもゆるゆると動き始める。


「では皆の者、参ろうか!」


大将・項它の檄に応えて、こちらも兵の士気は最高潮に達していた。


「「「おう~!!」」」


こうして楚軍も濰水で斉軍と合流すべく彭城を発した。


項它を大将に龍且・周蘭・李心が続く。


総勢20万の大軍勢である。


龍且は真一文字に口許を結び、威風堂々と馬を進める。既に決戦への覚悟は決まっていた。


周蘭はもはや迷いは禁物と、やや不安気な顔をしながらも、気持ちを切り換えて臨むべく、手綱を握る手にも力が入る。


李心は(ひょう)々と割り切った気持ちで、沈着冷静である。あくまで脇役に徹して地味に努める。


項它はやや緊張気味だが、既に大将としての自覚を持ち、泰然自若に振る舞っている。彼は叔父・項羽との力量の差を心得ており、背後に陣取り、采配する予定である。


一路~濰水へ。大軍勢が動き始めた。


『……』


その頃、叡鞅は濰水の戦場が見渡せる山の頂上に、既に陣取っている。


彼は早朝、稟笥の放った伝令・関寧の訪問を受けて、斉楚が動き出す事が判ると、直ぐに大将の韓信の耳に入れて、その足で父・司馬信の陣に参じた。


そして工作隊隊長の岳嬰に(ブツ)を届ける様に依頼すると、濰水を見渡せる山の頂上に陣取ったのである。


まだ陽の光りは射しているとは言い難い。


大空には白い雲海が漂い、ゆっくりと流れている。


『晴天になると良いが…』


叡鞅は上空を眺めながら、そう案じていた。


雨天では、狼煙(のろし)が見え難くなってしまう。


けれども、此ればかりは最早(もはや)運を天に任せる他に無い。


頼みの綱の狼煙竹が功を奏する様に願うばかりであった。


『……』


一方、叡鞅の一報を受けた韓信も即座に主だった軍団長らを召集して、作戦の決行を告げた。


曹参・漢嬰・周勃・李左車・司馬信・李匠である。


無論、蒯通も軍師として韓信の傍らに控える。


「諸君!!いよいよ本番の時を迎えた。今まで苦労に苦労を重ねて、準備して来た成果が結実する日がやって来たのだ。我々は情報管制を敷き、罠を張り、兵の鍛練をして、士気高揚に努めた。準備は万端である。後は諸君それぞれの力を最大限に発揮して貰いたい。以上だ!勝利は我らの手に♪」


韓信はそう告げると、右手の(こぶし)を天に突き上げた。


皆も一斉に右拳を突き上げる。


「「「「えい!えい!おう~!!」」」」


韓信を中心に漢軍の将達は一致団結し、(とき)の声を挙げた。


此れ以上は無い程の意気高揚であり、士気は最高潮に高まった。


「目指すは濰水だ!!我に続け!」


こうして韓信軍も濰水に向けて出発したのである。


『……』



≪濰水の戦い・陣容図≫



【韓信軍 6万5000】


【司馬信・李匠軍】 【周勃軍】

(5000) (10000)


【漢嬰軍】 【韓信軍】 【曹参軍】

(10000) (20000) (10000)


【李左車軍】

(10000)


********************


濰水(いすい)


********************


【田横軍】 【龍且軍】 【周蘭軍】

(50000) (100000) (70000)


【李心独立遊軍】 【大将・項它本陣】

(10000) (20000)


【西楚・斉連合軍】

(25万)



*以上が簡単な濰水の戦いの陣容である。


因みに先に現地に到着したのは、韓信軍であった。


此れは稟笥の機転に依る関寧の報告が早かったからであり、叡鞅の情報戦略の一環である仕込みが功を奏する結果と為ったためである。


韓信軍は早々に先着すると、紡錘(ぼうすい)陣形に陣立てを組んだ。


司馬信・李匠軍は司馬信軍が4000、李匠軍が1000である。


因みに司馬信軍の4000は司馬信を守る近衛黄金兵なので、実質的には4万とも5万とも謂える軍に匹敵するので、決して侮れない。


李匠軍の1000でさえ、かつての大秦の誇る鉄壁の防御力と攻撃力を兼ね備えている唯一無二の生き残りであるため、その破壊力は顕在であった。


かたや西楚軍は大陣容なだけ在って、決戦の地・濰水に入るのに少々時間を要した。


先陣の龍且軍が濰水に到着した時には、田横軍は既に配置に着いており、合流を果たした直後に田横は龍且に拝命を願い出た。


「斉国・丞相の田横で御座います。この度は強力(ごうりき)下さり、(かたじけ)ない。」


田横は龍且と周蘭に感謝の意を述べた。


「此れはどうも♪」


周蘭は顔馴染みの田横に笑みを浮かべながら会釈する。


龍且はぶっきらぼうにブスッとしながら、


「それは大将閣下に挨拶せよ!儂らは目の前の敵を叩き潰すのみだ!!」


と横目でチラッと田横の(つら)を舐める様に見ただけで、相手をしようともしない。


ここは周蘭が機転を利かせて田横に声を掛けると、


「田横殿、どうぞこちらへ♪大将にご紹介致そう!」


そう言って、田横の肩を抱くように龍且から引き離すと、本陣へ案内(あない)した。


「周蘭殿!何なんですか…あの朴念仁(ぼくねんじん)は?幾ら我々が弱小勢力とは言え、私は斉国を代表して従軍しておる国の丞相ですぞ…余りにも無礼では在りませんか?」


田横は横柄な態度を取られた手前、必用に抗議する。


(^^;)「誠に相すみませぬ…悪い奴では無いんですが、性格が大雑把と言うか、気が利かないと言うか、御無礼致した。許されよ!大将はそれに比べると、天地の如く違いの判る御方…お気を直されよ、田横殿!此れからは団結が大事ですぞ♪」


周蘭は必死に仲を取り持とうと、穴埋めをする様に、田横をおだてて、龍且の無礼を相殺しようと、懸命である。


『本当にそう想うなら、彼奴(あやつ)の態度を何とかして欲しいものだ…』


田横は龍且の不粋(ぶすい)な対応に(ごう)を煮やして止まない。


やがて本陣に辿り着くと、大将の項它が出迎えた。


「(*´∇`)ノ♪やぁ、貴方が田横殿ですな…周蘭将軍よりお聞きしております。本日は宜しくお願いします、共に頑張りましょう♪」


項它の親愛を込めた出迎えに、田横はすっかり機嫌が良くなって、先程までのイラつきは影を潜めた。


「此れはご丁寧な挨拶、痛み入ります。万難を廃して、互いに力を(あわ)せましょうぞ♪」


田横はニッコリ笑うと、感謝の返礼を述べた。


周蘭は項它の傍に近づくと、ボソボソっと短く呟いた。


項它はウンウンと相槌を打ちながら、頷く。


そしておもむろに田横を見つめると、額に汗を掻きながら、陳謝した。


「此れは此れは、うちの龍且が無礼な物言いをした様で相すみませぬ。あの者は武骨者でして、他意は無いので御座るよ。力は或る男です、必ず役に立ちますので、どうか大人の対応をお願い出来れば幸いに存じます。」


項它は在らん限りの言葉を総動員して謝意を示した。


(^^;)『成る程…大将でさえ、もて余している厄介者か…じゃあ是非も無い。恐らくかなり面倒臭い輩なのだろうな…ここはひとつ私が大人になるほか或るまいな…』


田横はそう承知すると、理解を示した。


「判り申した。ではそのように…」


こうして項它との挨拶も済み、田横は周蘭と共に龍且の元に再度合流した。


龍且は相変わらずブスッとしているが、田横はもう気にもしていない。


「で!どの様に動きまする?」


彼は龍且を試す様に、澄ました顔で尋ねる。


龍且はそれを聞くと、突然ゲタゲタと下品に笑い出し、


「此れは此れは…斉の丞相殿は戦場の機微を知らぬらしい…」


(はな)から遠慮する気も無く、(さげす)んだ目つきで小馬鹿にした。


田横は一瞬カァっと顔を赤くし、頬を膨らませて、腹を立てたが、周蘭が(かぶ)りを振るのを目にすると、グッと(こら)えた。


そして冷静な顔でさらに尋ねた。


「ほぉ~さすがは龍且将軍ですな…ではこの田横、拝聴致しましょう。どうか御教授いただきたい!」


龍且はそれを耳にすると、少し態度が和らいだ。


そしてほくそ笑むと、自慢気にこう述べた。


(^.^)「ほぉ~春宵(しゅんしょう)心懸(こころが)けですな…善きかな善きかな♪ではお教え致そう!それは戦場の空気を読み、相手の出方次第で臨機応変に対応する事だ!それこそが必勝の道で或る(^^)どうかね?判ったで在ろうが!!」


龍且はそう堂々と(のたま)うと田横の顔を舐める様に見下(みくだ)した。


( ´゜д゜)『何だとぅ…こやつ真面(マジ)で言っとるのか?此れ程、天文学的な阿呆には初めて()ったぞ…この(いくさ)大丈夫なのか?』


田横は何か馬鹿らしく為って来て、想わず溜め息を()らした。


が!無論、心の中でそう想っただけで、尾首(おくび)にも出さない。


(*^^*)『物は考えようだ。我々は楚が漢と潰しあってくれれば幸いなのだからな…適当に立ち回って高見の見物と洒落込むか、はたまた漁夫の利を得るかだっ(´▽`)♪』


田横も心の中でほくそ笑み、龍且を天下無双のド阿呆と認定した。


『こいつが突撃敢行でもして、漢軍を食い破れれば、それも良し!(まか)り間違って、寝首を掻かれても何の問題も無い!こちらが巻き込まれぬ様にするだけの事だ(´▽`)♪』


田横の作戦(プラン)は此れで決まった。


周蘭や項它には気の毒な事だが、仕方が無い。


龍且は田横の心など知る由も無いから、言いたい事を一方的に口ずさみ、かなりご満悦である。


周蘭はとても困った顔をしながら、苦虫を噛み潰していた。


そんな三人を…もといそんな田横をジ~ッと見つめる男が居た。


そう…李心その人である。

【後書き】


遂に濰水(いすい)の戦いが始まります。


(^^;)誠にお待たせ致しました。


此れからの展開をお楽しみ下さい(*^^*)♪


byユリウス・ケイ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ