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立場の違い

その頃、稟笥は張良の部屋で待機して居たのだが、この際、自分の撤退路も今のうちに確認しておこうと、再び懐から別の羊皮紙を取り出すと綿密に眺めていた。


此れは先程の物とは全くの別物で、西夏国が独自に作り上げた地下迷路の地図である。


読者諸君の中には、臨淄で叡鞅がいみじくも語った言葉を憶えておられる方も居るだろう…。


『こんな城などその気に為ればいつでも(おと)せる…』


そう…西夏国とは元々その先祖を『()』とする国で在り、かつては中華の盟主で在った。


彼らはその頃から地下の迷路を構築していて、あらゆるところにその出入口を造り上げていたのである。


つまり…移動に地下迷路を使う事が出来た訳で、それは今この時も秘密裏に、随時工事が行われていた。


叡鞅や司馬信の目的は単に中華の平和を維持するだけでは無く、中華に派遣した工作部隊を動かして、あらゆる地域の地図を綿密に作成する為の、検地を行う事、そしてそれと同時に張り巡らされた地下迷宮の修復と、新たな構築を推進する事で在った。


彼らは特に中華を取り戻して、再び帰り咲こうという気は毛頭無いが、中華の出入りを自由にして、備蓄を貯めたり、拠点を増やそうと考えていた事は確かな様である。


貿易を促進させたり、救援を行ったり、武装するのには、拠点は欠かせない。


王や太子の主たる目的は、交易による国の活性化は勿論、各国の検地を進めて、時には利便性を高める為の地下通路を造り上げて、自由な交通手段を構築し、貿易のための拠点を造る事にあった。


だから事は中華に限らず、他国の中にも、秘密裏に地下通路が造り上げられた地域もあった様である。


稟笥も西夏国の一員であるから、当然その事は職務の一貫で在った。


彼は司馬豪の副官であるから、立場は趙燕や関起と同じ立場にある。


つまりは自分の判断で集合を掛けられる部隊が存在している。


それだけの地位に在る者でも、身を呈して此処まで危険を犯さねば成らないのだから、西夏国の地位のある者たちは皆、過酷な環境に身を置いていた事が判るだろう。


司馬信や叡鞅、穣苴や関起が行動して来た経緯からもそれは伺えようと言うものである。


話をもとに戻そう…。


稟笥は滎陽城内から、東に抜ける為の出入口を眺めている。


どうやらそれは地下の兵糧庫の床下にあたるらしく、その地点に『✕』印が付けてある。


西夏国の脱出口は造り上げられた時代に応じてその構築方が異なる。


此ればかりは行って見ないと判らない。


(^o^;)『なるべく早く確認したかったが、この状況では仕方ない…あの優男の口車に乗って、お人好しにも手伝ってやる羽目になったからな。まぁまだ時間はたっぷり在るし、誰も居ない方が都合は良いから、まっいっか?』


そう想いながら、懐に羊皮紙をしまい、張良を待つ。


するとちょうどそこで声を掛けられた。


稟笥はドキッとしながら扉の方を振り向く。


本来、彼らは人の気配に敏感であり、直ぐに気が付く筈であるのだが、熱心に考えていた余り、多少の油断があったかも知れなかった。


彼の心の中では、もはや段取りが決まっており、危険は無いと判断していたので、やや意識が緩慢に為っていたのかも知れない。


喩え西夏国の勇士で在っても、所詮は人には違いない。


ある意味当然ではあった。


「おい!お前はいったい何者なんだ?」


扉の外に佇む男はそう呼び掛けて来た。


稟笥は男を見ると、フッと笑みを浮かべると、


「何だ…(おど)かすなよ♪お前さんか…何でこんなところに居るんだい?」


と呟く様に口をついた。


すると相手もフッとほくそ笑んで言葉を返して来た。


「ハハハッ…驚いただろう'`('∀`) ,、お前さんでも油断は在るのだな…少し安心したよ。まぁ私が相手で幸いだったな。しかし久し振りだね…元気そうで安心したが、いったいどうしたんだい?」


男はそう言うと、事の経緯を知りたがった。


稟笥は溜め息を尽くと、経緯を話してやった。


「成る程…相変わらず危険な商売なのだな…御苦労さん(*´▽`)…まぁ私も似たようなもんさ!立場は違うがな…お前さんは東に用があるらしいから、どうだ!私も一緒に連れて行って貰えまいか?(^。^;)私も東に野暮用が在るのでね…何なら一肌脱いで手伝うから、どうだ!お願い出来ないかな?」


男はそう言うと両手を合わせて頼み込んで来る。


稟笥は再び溜め息をついて男を見ると、


「まぁ、お前さんなら良いだろうが…相変わらず煙たがられているらしいな、判った!手伝うなら同行を許そう♪お前さんとは持ちつ持たれつだからな…運命共同体の様なものだ。その変わり、脱出した後の足は無いから、それは勝手に見繕ってくれよ!いいな?」


「話は決まったな…なぁに心配するな、迷惑は掛けんよ♪足ならもう来ている頃だろう。」


男はそう言ってカラカラ笑っている。


そこへちょうど張良が戻って来て、扉の外にいる男に気がついたらしく、声を掛けた。


傅首(ふんす)…お前こんなところで何をしている…」


そう…男は傅首で在った。


傅首は韓信への(みことのり)を伝えた後に、劉邦の元に復命しており、蕭何(しょうか)の元にも帰れずに、ただ無駄に時間を浪費させられていたという訳だった。


「張良殿か…あんたもこいつと面識を得たらしいが、私はこいつとは腐れ縁でね♪たまたま見掛けたので少し話し込んでいたという訳なのさ!だから事の次第は承知している。私もお手伝いさせて貰うから、この際、こいつと離脱する事を認めて頂きたい…如何だろうか?(^。^;)…」


傅首は律儀にも張良に断りを入れた。


稟笥は手を顔にやって、苦笑している。


張良は『そうなのか?』といった顔で稟笥を見つめた。


稟笥は嫌が鞅にも認めざるを得ない。


「あぁ…こいつの言った通り。昔からの腐れ縁て奴さ!好きで組んだ縁では無いがな…」


「それは無かろう…あれだけ食わせてやったんだからな!感謝して欲しいものだ♪」


稟笥と傅首の会話を聞いていた張良は、こちらも溜め息交じりに「判った!お前の好きにせよ…」そう言って、核心に入った。


「稟笥殿!いよいよ出番だ…一緒に陛下の寝殿に来て貰いたい。傅首!お前さんも頼もう…」


「良し!話は決まった…行くぞ♪」


稟笥は傅首にそう声を掛けながら、三人は劉邦の寝殿に向かった。


いよいよである。

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