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脱出【前篇】~手間は掛けぬ物♪

陳平が去った後、一連の有り様を見てきた副官は、上官である張良の行動にやはり意味が有った事をまざまざと見せつけられて、全てを理解した。


彼は張良が倒れた時に、いち早く歩み寄って助けなければならない立場だった筈なのに、在ろう事か今まで(ほう)けた様に、いつの間にか傍観者となってしまっていた。


そして、陳平が去り、ようやくその場が静寂に包まれた事で、事が全て完了した事を理解した。


その直後に、やっとの事で自分の判断力を取り戻す事が出来たのである。


副官としては失格かも知れないが、張良の中に秘められた激しさをまざまざと見せつけられている内に、いつの間にかその場の空気に呑まれて、意識が目の前で繰り広げられている展開に釘付けとなった事で『呆気に取られていた』という言葉がその時の彼の有り様を一番的確に表現しているかも知れなかった。


彼は『ハッ!』と我に返ると、張良に歩み寄って、


「閣下!大丈夫ですか?」


と心配そうに声を掛けた。


すると張良は突然、「フハハハ♪」と笑い出して、稟笥と副官の顔をまじまじと見つめると、こう口をついた。


(´▽`)「大丈夫!少し遣り過ぎた感は在るが、何とかこの場は(しの)げた。稟笥殿は巧く立ち回ってくれたしな…。一番心配だったのは、馬忠…お前が口を挟む事だったのだが…お前は呆気に取られていたせいか、下手に動く事も無かった。ある意味、成功したのはお前のお陰だ。だから自分を責める事はない。逆に良くやった…そう私は評価しているよ。」


馬忠とは張良の副官の名前である。


根が正直で、実務能力は高いが、突然の出来事に器用に振る舞える人では無く、武人向きでは無かった。


でもそれで良いのである。


彼は文官・張良の副官なのだから…。


馬忠は未だに恥じ入っているが、張良はそんな彼を非難するどころか、慰めて安心させると、


「もう大丈夫だからお前は引き上げなさい…」


そう言って馬忠を下がらせた。


そして外の衛兵にも声を掛けて礼を述べると、此れも引き上げさせたのである。


こうして部屋の中には、張良と稟笥の二人だけが残されて、騒ぎが重なる前の状態に戻った事になる。


「やはり…全て演技だったのか…?」


二人っきりになると、稟笥は驚くような顔をしながら、張良を見た。


張良はその稟笥の言葉を然も予感していた様に、彼の顔をまじまじと見つめ返すと、再び可笑しそうに笑い出した。


「お前さんが信じたのなら、事は大成功だったな…恐らくは陳平もすっかり信用した事だろうよ。だけどね…本音を打ち明けるとだ!、あの苦しみの表情は演技では無かったのさ(´▽`)♪確かに途中まではお前さんの演技に呑まれる事無く着いて行っていたのだけれど、私には少し遣り過ぎた感は有った。案の定…途中から心の蔵が痛く為って来てね、状況的には最高の現実味を与える事が出来て、してやったりという満足感はあったものの、苦しみからその後の演技を続けるのが厄介になった。最後まで良く身体が持ったものだ。此れこそはまさしく天の配剤と言うべきだろうよ♪」


張良はそう言って悪戯っ子の様な含み笑いを浮かべた。


「…でもそのお陰で結果は良好だ♪お前も無罪放免になったのだから悪くはなかろう?」


(*´▽`)『そうだろ?』張良はそんな表情を浮かべながら稟笥を見つめている。


(。-∀-)『……』稟笥はかなり呆れた顔を見せると、フゥ~と大きく溜め息を尽いた。


「あんたも相当な玉だね♪…正直、中華の人は(やわ)いと内心馬鹿にして居たが、貴殿の様な心の太い人も居るのだな…この稟笥、感服した。あんたには負けたよ…」


彼はそう告白すると、無条件降伏の姿勢を見せた。


張良は横目で稟笥の困った顔を眺めていたが、


「いやぁ~それ程でも無いさ♪」


そう言って(´▽`*)再び笑みを浮かべた。


そして話を切り換える様にこう尋ねた。


(´▽`)「さて…此れでお前さんは晴れてお役御免だ!もう自由にして貰って良いぞ♪しかしながら…もうあの囲みの中には戻れまい。いったいどう脱出するつもりで此処に来たのかね?お前さん程のやり手が、何の腹積もりも無く、こんな危険を犯すとも想えないのだが、いったいどうするね?」


(*´ー`*)『……』稟笥は張良の疑問にじっと聞き入っていたが、不意に「ククククッ…」と含み笑いをすると、その問い掛けに応えて、口をついた。


(o≧▽゜)o「あぁ♪それなら簡単だ!元々俺様は忍び込みのプロだからな…それがどんな虎口(ここう)で在ったとしても、如何(いか)ようにも脱出は出来るが、今回に限っては(あるじ)の温かい計らいに依り、(はな)から脱出口は用意されているのでね…そこを楽に抜けるだけさ♪なるべく手間は掛けぬ物…それが俺様の主義(ポリシー)なんでね♪」


稟笥はそう言うと(*`▽´*)不敵な顔で張良を見た。


(‘∀‘ )!! 張良はじぃ~とその大言壮語を聴いていたが、おもむろにこう重ねて聞き直した。


(‘∀‘ )「それさぁ…良かったら私達にも使わせてくれないかなぁ…そうすれば無駄な命が散らずに済むんだけどなぁ~…お前さんだって脱出した後、大勢が亡くなったら寝覚めが悪いでしょ?皆がにこやかに此れからも命を全う出来たら、その方が良いじゃん!!手間は掛かん無いんだったよね?だったらお願い出来ないかなぁ…お前さんが参ったと認めた此の私が頼んでるんだけどなぁ~。助けてくれたら、この先、一生恩に着るけど…どうする?」


張良の詰めの深さは凄みが或る。


然も気楽に問い合わせている様に感じるかも知れないが、実際は有無を言わせぬ嫌いがそこにはあった。


まずは相手の情けを衝いて、必ず恩に報いる姿勢を示し、すかさず労苦も無くそれが出来る事を意識させて、自分の目的に協力させる様に誘導するという…まさに逃げ道を完全に(ふさ)ぐ手法である。


張良だって出来得る事なら、此処まではしたく無いが、大勢の命が懸かっているので妥協は出来ない。


他に手が無いなら陳平の苦肉の策を履行するつもりでいたが、今まさに稟笥から聴いた方法ならば、その必要が無くなるのだから、此処は譲れない所だった。


一方の稟笥はお気楽に説明したまでは良かったが、その結果が大事に発展するとは夢にも想わなかったので、張良の申し出を聞いた瞬間に後悔する羽目に陥って絶句した。


(;´∀`)『まず~い…調子に乗って喋り過ぎちまった。解放された安堵感で少し気持ちが欧陽に為り過ぎたかも知れん。凝りゃあ後で雷が堕ちるかも…』


f(^ー^;そりゃあそうだ…間諜の務めは秘密裏に行動し、余計な事は言わず秘匿する事にあるからね…。


(-∀-`; )稟笥は真面目に困っていた。


『ど~ちよぅ(*T^T)…』


するとそこにすかさず張良が助け船を出す。


(´▽`)「大丈夫じゃない?私は西夏国の王・司馬信殿の親友(まぶダチ)だし、この中華で彼が不自由な想いをしない様に、今までだって、さんざんぱら協力してんだから…私のたってのお願いならば、多分許してくれるよ♪それどころか良くやった!でかした!…って褒められると想うけどなぁ…どうする(*´▽`)?」


そのタイミングの良さも絶妙である(^-^;…。


(;´д`)稟笥は元々無駄な殺生は嫌いなので、戦場以外では、かなり慎重に振る舞って来たし、元々人の情けには弱い側面もあった。


そうで無ければ、彭城脱出時もわざわざ眠らせておくだけで殺さない手法など取らない。


しかも…我らが王様の親友(まぶダチ)だと聴かされた日には、断り様も無かった。


(^-^;見殺しにしたらしたで後で恐ろしい事になる…。


(^。^;)『…しゃあね~か?』


稟笥は完全に詰められた。


どちらを選んでも、王手…飛車角取りである。


(^。^;)「判りましたよ…協力しますよ…」


(´▽`*)「その意気や良し!さすがは司馬信殿の配下の御方…情け深い。感謝しますぞ♪」


張良はそう言って微笑むと稟笥を完全に味方に着けた。

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