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軍師二人

赤面しながらこちらを見つめる陳平に、張良は苦笑しながら、


「"達磨さんが転んだ!…"て所ですかね…やれやれ…陳平さん!貴方もかなりひつこい御方ですね…それでは気苦労が絶えないでしょう♪そろそろ心穏やかに御過ごしに為りませんと、禿()げますよ…いったい何の用です?」


そう苦笑しながら(たしな)めた。


陳平はその張良の言葉に一瞬イラッっとしたが、ひっくり返ったままの自分に気がつくと、一旦自分を自制して、ゆっくりと起き上がりながら、まず身体のあちらこちらについた(ほこり)や灰をパンパンと両手で貴重面に(はら)った。


そして「ふん!」と言って部屋の主に向き直った。


張良の副官も(>_<")「アタタッ」と痛さを(こら)えて、ほぼ同時に立ち上がる…。


副官は陳平の顔を一瞬恨めしそうに見つめると、張良の顔をチラッと見ながら、何か言いたそうな顔をしている。


それは張良も察していて、気持ちは痛い程に判るが、相手は何と言っても、あの陳平であり、今これ以上、事を荒立てると、後々根に持たれて面倒臭い…張良はゆっくりと首を横に振り、目配せして、副官を静止した。


副官は長年に渡る付き合いから、張良の姿勢には意味がある事が痛い程判っているので、多少の不満は抱えたままそれに従った。


事の起こりは騒ぎが持ち上がった少し前に(さかのぼ)る。


張良は夜は余り寝つきの良い方では無く、大抵の場合、昼の空き時間に仮眠を(むさぼ)る事にしている。


そのため、夜の差配は比較的買って出ており、今宵も御多分に漏れず、待機しながら書に目をやっていた。


そのため、直ぐに騒ぎに気がついて事を納める事が出来たのである。


一方…陳平の方は、日中は何かと公務に追われたり、いつ陛下より諮問(しもん)があるか判らないので、常に神経を尖らせて、準備万端にして居なければ為らず、そのためか1日が終わるとかなり疲弊してしまう。


そういった自然の流れから、夜は必ず熟睡する必要があり、いつもで在るなら朝まで目覚める事は無かった。


しかしながら、昨今自分が計画を立案した『逃亡計画』を見直しておく必要に迫られたため、今夜に限っては珍しく夜長をしていた。


そろそろ現実的に兵糧が尽きそうなため、万が一の時の為に食い扶持を得る方法を模索していたのである。


(;^_^A『くっそ~!食いつくなら早く食いついてくれないと、食い物が無くなるぞ…』


陳平は頭をカリカリと掻きながら、ブツクサ文句を言っている。


項羽を食いつかせる為に、意識的に餌巻(えま)きしたまでは良かったが、あれから数日経過しており、その影響からか兵の間でも困惑が拡がっていて、此のままでは逆効果に為りかねない。


身内の暴動に発展すると困るのである。


『無いものねだりは出来んからな、とっとと仕掛けて仕舞うほかないか…』


彼は何事にも計画性を持って臨む事を、美徳としており、不測の事態により計画変更を余儀無くされる事を嫌う。


そう書くと不思議に思う方も居るだろう。


無論、権謀術数を好む者に取って、時には相手に裏を掻かれる事もあるだろうし、予定通りに事が進まない事も多々ある。


要は想定内かどうかという点にあるのだ。


しかもこの場合、実質的に限りある物資の問題があるため、必然的に打つ手は限定されてしまう。


『やむを得ぬな…』


陳平はそう呟くと変更した場合の問題点を洗いだすため、頭を切り換えようと、ひと息ついて茶を(すす)った。


その時である、外が騒しいのに気がついて、咄嗟の事に、取り急ぎ部屋から回廊に飛び出すと、後方から慌てて走って来る者がいる。


陳平はそれを静止する様に呼び止めると、


「何の騒ぎなのだ?」と尋ねた。


呼び止められた兵も、相手が陳平だと判っているので無視も出来ない。


すぐに立ち停まると、


「楚側で何か動きがあったそうです…詳細は存じません!」


そう言うと、解放されたため、再び走り出した。


陳平はその背中を見送りながら、


『確か今夜の差配は張良殿…任せておけば良いか…』


一度はそう想い部屋に戻ろうと、(きびす)を返したものの、「いや待てよ?」と想い直した。


楚に動きがあるなら好都合ではないか。


此れは時局好転の兆しかも知れぬと、自分も直接、見に行く事にした。


『ついでに張良の奴を少しからかってやろう!』


初めはその程度の軽い気持ちで、城壁に向かったのだが、いざ着いてみると面白い事が起きていた。


陳平が着くと、そこには見掛けた事も無いお客人が立っていて、「セイカの…オレの事だ…」と(のたま)わっている。


するとそれを(いた)わる様に挨拶し、そそくさと伴い連れて行く、張良の姿を目撃したのだ。


『これは可笑しいのではないか?』


陳平はそう判断せざるを得ず、黙ったまま()いて行く事にした。


『怪しい( ¬ ω ¬ ;)…』


彼の心の声がそう代弁していた。


ちょうどその時、張良の副官も、緊急召集した兵を解散させた直後であり、訳が判らなかったため、その足で上官の部屋に向かった。


陳平は衛兵に扉を開けるように命じたが、張良からくれぐれも開けぬように指示されているものだから、当然開ける事は出来ないで、困っていた。


そこに合流した副官と、『扉を開ける、開けない」でどちらも譲らず、軽く()み合いになっていたのだが、密封されている扉の中の二人は知る(よし)も無い。


張良が項羽の出陣に、慌てて会議を召集するべく、扉を開けるように強く叩いた物だから、衛兵は指示を履行しようと急に扉を開いた。


その結果として、陳平は辱しめを受ける破目になったと言うべきだった。


『……』


こうして陳平は、屈辱を抑えて張良と対峠していた。


「そなたが私の事をどう思おうが、そんな事はこの際、どうでもいい事だ。問題は彼が誰であり、何の悪巧みなのか、説明していただこうか?」


陳平はその点を強調して、張良に迫った。


それを傍観する様に眺めていた稟笥は、


『ほぉ~あれが陳平という人か。噂通りの切れ者らしいな、あれだけ恥を掻いたのに、自制した上で 核心を衝いてくる。俺様としては、陳平の方が気が合いそうだが、此ればかりは組した陣営の問題だから仕方無い。せいぜい張良(コイツ)を助けて、調子を合わせてやるとするか…。俺様の口撃を舐めてもらっては困る…』


そう思いながら、出番を待った。


張良は、極めて冷静に、理路整然と尋ねて来た陳平に困惑していた。


彼と1対1で論じ合う限りに置いては、負ける気はしない。


しかしながら、今ここには稟笥といういまひとつ想定出来ない不確定要素が存在するため、慎重に対応せねば、言質を取られ兼ねない。


司馬信殿の身内である限り、よもや寝返る事は無いと思うが、下手な行動を取られたり、言葉を間違える様な粗忽者(そこつもの)だと、非常に不味い(^-^;…。


張良は決断を迫られていた。


彼が果たして、華々しい登場の仕方の阿呆なのか…はたまた、短い会話から感じた知的な男なのか…。


『(;^_^A ええい!ままよ!』


張良は即時決断し、返事を返す。


(^.^;)余り…陳平さんを待たせるのは不味い…。


「陳平さん…悪巧みとは失礼千万…私は貴方を助けようと努力しているのではないですか?彼は私が放った間諜なのです!」


張良はそう言い切ると陳平を見つめた。


言葉尻に違和感があると鋭く突かれるし、返事が遅くなると疑われ兼ねない。


正にギリギリの所で理性を保った張良は、なかなか絶妙な間の空け方で応える事が出来たと言えよう。


『へぇ~(^^)この張良って奴も冷静に切り返したな…なかなかやるもんだ。さてどう展開するかね…』


稟笥は全くと言って良い程、会話を楽しんでいる。


陳平はそれを食い入る様に聞いていたが、ここが彼の(あま)邪鬼(じゃく)たる由縁であり、只では転ばない人なのであった。


『(^.^)ほぉ~巧く応えやがったな…さすがは張良だ…一筋縄ではいかないな…しかし城壁の上での奴は間違いなく狼狽(ろうばい)していた…一瞬で立ち直ったから、私以外はコロリと(だま)せたろうが、この陳平はそんなに軽くないぞ…』


陳平はそう当たりをつけて臨んでいるので、そう簡単には引き下がらない。


『そうだ!核心に触れる前に揺さぶりを掛けてみようか…( *´艸`)プププ驚く奴の顔が愉しみだわい!』


彼はほくそ笑みながら直ぐにその考えを実行に移した。


「(*^.^)ねぇ~そこの君♪君は何て名前何だっけ?」


陳平は意地悪そうに稟笥に語り掛けた。


Σ( ゜ε゜;)『そう来たか…しかしここで口を挟むと疑いを呼ぶ…運を天に任せて、ここは彼に任せるほか在るまい…』


張良は明らかに痛い所を衝かれて参ったものの…一か八かと賭けに出る事にした。

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