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三者三葉

【一葉目・田氏陣営】


田黄一行は突然降って沸いた様な災難に見舞われたものの、紆余曲折を経ながら当初の目的を無事に達成して、帰国の途に着く事が出来た。


しかしながら、当初の予定は大幅に越えており、高密城が視界に入って来る頃には、もうすっかり夜が明けていた。


田黄は夜陰に紛れて戻る予定であったため、突然の待ち伏せに()わぬか不安があった。


そのため多少迂回するものの、東門まで回り込んで無事に高密城に帰着を果たす事が出来た。


斉王・田広は文武両官と共に、叔父である田黄を出迎えると、一行の長旅の労をねぎらった。


田黄はこの過酷な道行きにかなりの疲労を抱えていたが、一晩中恐らくは寝ずに待って居た王の心の内の不安を早く解消してやろうと、気持ちを強く持ちながら、田広に向き直った。


「陛下無事に務めを果たして参りました。締結書は此れに…。」


そう言うと懐から書簡を取り出してそれを差し出す。


田広の目は輝きに満ちて満足そうに何度も頷きながら、差し出された締結書を受け取った。


「本当にご苦労であった。そなたなら遣ってくれると信じておった。お疲れだろう…しばらく仮眠を取ると良い…此れから忙しくなる所以な…詳細は後ほど聴くとしよう…。」


田広はそう言うと疲労気味の田黄に肩を貸そうと気遣いをみせた。


それを観ていた官吏や将軍たちが慌てて王の代わりに肩を貸して田黄を支える。


田黄は両の肩を抱えられながら、田広の気遣いに感謝して、礼を述べた。


「確かに此れからが大変です。少しだけお言葉に甘えて寝ておくと致しましょう。」


そう言うと口頭して自室に引き揚げて行った。


田広は同行した者たちにも改めてねぎらいの言葉をかけて、同じく少し休む様にと気遣いをみせた。


すると一行はなぜか大変恐縮した様子で、困った顔を一様にみせた。


他の者とお互いに顔を見合わせながら、その中のひとりが意を決した様に進み出るとこう応えた。


「恐れながら陛下に申し上げます…。我々は所以あってかなり休ませて頂きましたので、此れより準備に入りたいと思っております。」


そう言うと赤面しながら恥じ入っている。


同行した者全てがその調子で下を向いてしまった。


田広は不思議そうな顔をしながらそれを眺めていたが、うんうんと何度か頷きながら、皆に伝えた。


「そなた達の気持ちはよく分かった。だが大事なのは此れからだ。けして無理はせぬ様に!」


そう言うと迎えに出ていた他の大臣達と共に一旦、引き揚げて行った。


後に残された者達は再び互いに顔を見合わせながら、ぞろぞろと各自の自室に引き上げて行く。


皆恥ずかしくて本当の事は言えなかったのであった。(゜Д゜;)…。



【二葉目・西楚陣営】


山の裾野から朝日が顔を覗かせると、木々の切れ間から陽射しが射し込んで来る。


その射し込んだ光の先には2人の男が互いに頭をつき合わせるようにして、机の上に突っ臥しており、気持ち良さそうに寝息を発てていた。


やがてその内のひとりが、射し込んだ光が顔に当たると、さも眩しそうに顔に手をやり起き上がった。


周蘭である。


彼は目覚めるなり、頭を抱えて(うめ)き声を挙げた。


「痛っ…。」頭痛が酷くて(すこぶ)る気分が悪い。


『どうしてこんな事に…。』


そう想いながら、ふと(そば)に龍且が居るのに気がついた。


まだ彼は深い寝息を発てながら、ぐっすり寝入っている。


『そう言えば…。』


昨晩、周蘭は陛下(項羽の事)に報告を行った後、龍且に誘われて酒を(かたむ)けたのであった。


彼を気遣った龍且の誘いを無碍(むげ)に断わる訳にもいかず、飲み始めた結果、かなり深く痛飮してしまったようである。


既に夜の闇の(とばり)は去り、お天道様が顔を出して居るのを自覚するや、周蘭はふと我に却ってある事柄を思い出し、慌てた。


『田黄一行はどうしただろう?』


昨夜陛下に報告に行く道すがら、報告を終えたら、田黄の同行者をどうにか起こさなければ…と自分に言い聞かせていたのを、すっかり失念していたのである。


慌てふためいた周蘭は、龍且を放置したまま、取り急ぎ陣屋に戻る事にした。


道中その事ですっかり頭がいっぱいになって、いつの間にか頭痛など吹き飛んでしまっていた。


陣屋に戻るや幕僚を呼ぶと彼は心配そうに歩み寄り


「大丈夫ですか?将軍、お顔の色がとても悪そうですよ…。」


そう言うと、目を白黒させながら言葉を続けた。


「今まで一体どちらにいらっしゃったのです…昨夜は色々とあり、まるで生きた心地がしませんでした…。」


そう言うと「ま…何とか成りましたが…。」と続けて言葉を切った。


周蘭は直ぐ様対応するべく慌てて戻って来た。


頭を必死に回転させようとするが、考えようとすると、「ズキッ」と痛さが伴うため、再び頭を抱えてしまった。


やむを得ず、昨夜は龍且に誘われて痛飮してしまった事を素直に伝えて、田黄一行がどうなったかを問い質した。


すると幕僚は『仕方ないなぁ…(-_-#)』と小声で呟くと、やれやれ┐(-。-;)┌…と言った呈で、昨夜に起きた事柄を順を追って説明してくれた。


「何!同行者は、うんうん、起きれた♪…どうやって?…たまたま目が覚めたのか?本当に?…で、うんうん、何!穣苴殿が、たまたま通りがかって、見送ったのか?…で、伝えに来てくれた…ほぉ~そんな事が或るんだな、驚いた!!…で?何、穣苴殿も…うんうん、父が危篤…龍且も知っているのか?で?去る前に薬を山ほど置いていった…へぇ~そら驚きだな…。」


ひと通り報告が終わった幕僚は預かっていた薬の包みを(あるじ)に手渡すと、


「万事うまく行ったから結果良好ですが、今後は一言ご伝言をお忘れなく…!」


そう釘を刺すと(きびす)を返して「あ~忙しい」と言いながら、役目に戻って行った。


周蘭もこのしくじりを挽回するべく龍且と準備に入らねばならない。


『しかし…この痛み、何とか成らんかな??』


元はと言えば自業自得なのだが、痛みの酷さは益々、拍車が懸かって来る。


周蘭は包みを開くと中身を物色していたが、【頭痛薬】と書いた袋を見つけると、喜々として中から丸薬を一つ取り出すと、(おもむろ)に口に放り込んだ。


周蘭は余りにも穣苴の眠り薬の効果が覿面(てきめん)なので、他に良い薬があったら欲しいと頼んであったのだが、その約束通り、色んな種類の薬包を入れてくれてあったのだった。


『【頭痛薬】か…これは重宝しそうだな…。そうだ!龍且にも飲ませてやろう…。』


そう思い至ると、包みを小脇に抱えるや再び龍且の陣屋に向かうのだった。


この包みの中身が後日大騒動に発展するのだが、まだこの時は周蘭も全く(´~`)知る(よし)も無かった。



【三葉目・韓信陣営】


臨淄に無事入城を果たした韓信は、最低限の守備兵を配置に着けると、残りの兵にはよく寝ておくように指示を出した。


各地の占領を完了した軍団は、順次、臨淄に到着して来る。


まずほぼ中央を攻略し終えた韓信と李左車が入城をすると、西側一帯を進軍して来た漢嬰と司馬信・李匠も合流を果たした。


そして、思ったよりも時間を取られたが、東側一帯を進軍して来た曹参と周勃も、お昼前には合流を果たせたのであった。


六方面とも、田氏一族が城を捨てて再結集を促した事や降伏する城が大勢を締めた事なども相まって、韓信側は無駄に兵力を削られる事無く、斉国の南一帯と筥・即墨を除く、全ての城を一昼夜で占領する事に成功したのである


他方面よりも遅れて到着する事になった曹参と周勃は、連れ立って韓信に面会し、遅参を詫びた。


その上で筥と即墨の状況を説明した。


韓信は「承知した」旨、伝えると両将軍の判断を「是」とした。


そして改めて、2人の将軍に気遣いを見せるや、明朝に作戦会議をするので、それまで身体をゆっくり休めるようにと薦めた。


2人は韓信に礼を述べて退出した。


再び連れ立って歩きながら、曹参は周勃に声をかけた。


「時に周勃…。【陛下の書簡】だが…、あれは誰の発案なんだ?まさかとは想うが、お前じゃあ無いだろうな?」


曹参はかなり奇妙な展開に、乾坤一擲を投じたのが一体どんな輩なのか興味津津といった呈で、周勃の顔を穴が開く程に見つめている。


周勃は実は既にあの件はすっかり忘れていたのに、曹参が話を蒸し返した事で、あの時の有り様を思い出して、再び彼の壺が刺激されたためか、急にケラケラ笑い出した(´▽`)ウヒャハハハ♪


その姿は、もう勘弁して♪というくらいの勢いで、腹を抱えて笑っているのだ(´▽`)ウヒャハハハ♪


曹参は急に人が変わったような周勃を観て、目を白黒させながら(;゜Д゜)…心配そうに、眺めている。


すると周勃は急に真顔になって曹参の顔を見つめると右手拳を口唇にあてがい「( *´艸`)プププ♪」と含み笑いをしながらその答えを披露した♪


「(*^^*)あれは、司馬信殿の発案だ♪それを張良殿が陛下に具申して書かせたらしい…。(´-ω-`)しかも陛下もノリノリで書いたそうだぜ(´▽`)エヘヘ♪笑っちゃうでしょう♪」


そう言うや再び(´▽`)ウヒャハハハ♪と笑い始めた。


曹参は疑問が解けたので納得はしたが、周勃がかなり壊れそうになっているのを観て、気の毒に思い、改めて問題を蒸し返した自分を戒めるのだった。


「つまらぬ事を聞いてすまんな…。本番は此れからだ。少し寝てお互いに疲れを取るとしよう♪」


曹参は周勃にそう言うと、陣屋に戻って行った。


後に残された周勃は曹参の背中を見送りながら、


『帰って饅頭(まんじゅう)でも咀嚼(そしゃく)しよっと♪』


そう想いながら(きびす)を返すとスタスタと自分も陣屋に引き揚げたのだった。




此れが明朝にかけての三者三葉の動向である♪

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