斉楚連合
ー彭城内・周蘭の陣屋ー
全てが読めた!そう思った田黄は殊更に冷静にとぼけて見せた。
『条件ですか…。話の内容に依りますが、そちらの希望をお教え願えますかな?何しろ私は余り込み入った交渉事は苦手でして、ぜひ御教授賜りたい。』
そう言うと周蘭を見つめた。相手の出方を待つ。
『チッ!何が苦手だよ(笑)空々しい。』
周蘭は不思議と冷静なままの田黄を眺めると、
『まさかこちらの狙いに気がついたのではあるまいか?』
と疑いを感じた。だが顔に出す訳にはいかない。
『これはひょっとすると、相手が悪かったかも知れぬ。奴が一枚上手かも?』
周蘭は少々不安を感じていた。元々彼は素直で温厚な男だ。
だが、ここが正念場なのはこちらも同じ、負ける訳にはいかぬ。
或る意味、交渉の駆け引きではあるが、戦争と変わらぬ。
ここで撤退すれば敗けは決する。
そうなれば、怒り狂った項羽に周蘭がくびり殺されかねない。
周蘭はゾクッと首の辺りが凍りつく感覚に陥った。
『ええい…。ままよ!』
周蘭はまだ今なら主導権を握っている。
ここははっきり意図を伝えて従わせるしかあるまい!
元々駆け引きは苦手なのだ。
腕ッぷしの強さでここまでのし上がったのだからな。
だが、項羽直々に命ぜられたこの交渉は何としても成功させる必要があった。
ゆえに知恵を絞って考えて出した結論が、小細工ではあるが、主導権を握ってその勢いで相手を追い込もうという策であったのだが、果して吉と出るか凶と出るか二つに一つだ。
周蘭はまだやれると、平静を装い、意向を伝える。
『こちらの条件は服従です。援軍を出して、斉国を取り戻した暁には、我らに臣従し、臣下の礼をとっていただきましょうか?承諾するのなら、こちらは20万の援軍で救援して差し上げる。如何かな?』
田黄は『やはりな…。』と読み通りだった事に満足した。
しかしそんな事は尾首にも出さずにこう応えた。
『有難い。我らは斉国の存続が成り、民が安心して暮らせればそれで良いのです。20万も出していただけるとは思ってもみませなんだ。感謝致します。』
とあくまでも、低姿勢で拝手した。
周蘭は驚いた。
『こやつ…いとも簡単に国を売りよった…。何て奴だ。』
少々言っている意味は違うのだが、周蘭に傅いている田黄の姿はそう映った。
いやむしろ、田黄がそう見せていると言った方が正解かも知れない。
田黄にとっては援軍さえ出れば、本交渉は成功なのである。
後の事はどうにでもなるというものだ。
『ここはこやつに花を持たせて実利を得れば良い。』
田黄は一度、項羽を欺いている。
項羽が制覇した斉国を再び掠め取り、今の田広政権を復活させたのは、他ならぬ田黄なのだ。
『それを忘れて援軍を出すとはな…お人好しめ!』
そもそも田黄に言わせれば、周蘭がこの交渉に勝利したとしても、そんな事は一切関係ない。
項羽本人が、服従と引き替えに援軍を出すと決めた時点で、こちらの勝ち。周蘭の交渉の是非ではない。
『一度掠め取れた物はまた掠め取れる。』
そういう自信がある以上、この交渉に乗るほか在るまい(笑) 万々歳である。
がしかし、ここはひれ伏して、涙ながらに感謝する場面だろう(笑)…そう田黄は感じていたのである。
田黄は再び感謝の意を表明すると周蘭に口頭してみせた。
そうしながら、『やり過ぎると却って不味いな…』
そう思い、頭を上げるとこう言った。
『誤解しないでいただきたい。私も本心で国を売るような真似はしたくない。国家の存続の危機なので御座る。そこの所をよく御汲み取りいただきたい。他にどんな選択肢が在りましょうか?』
田黄はここで涙してみせた。
周蘭はひつこいようだが、根は真面目な男である。
国を売る売国奴だと一度は嫌悪感を持った相手なのだが、この物言いと涙にすっかりはぐらかされて、自分も観ていて涙が出て来てしまった。
田黄の姿に絆されたのである。
『判り申した。ではそのように為さりませ。こちらは喜んで受け入れましょうぞ!援軍を早速用意致しますのでどうぞこちらにおいで下さい。条約の締結をしましょう。』
田黄は再び『感謝致します。』と述べて締結に応じた。
『しめた♪旨く行ったぞ♪♪』
こうして斉楚同盟は締結されたのである。
(^。^)y-~こんにちは♪ユリウス・ケイです♪
斉楚合わせて25万の大軍が韓信を狙って牙を剥きます。
韓信は・周勃は・叡鞅は…果してどんな策で迎え撃つのでしょうか?
引き続きよろしくお願いいたします♪




