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悪だくみ

ー漢嬰・陣屋ー


叡鞅は周勃の命令を復唱するやスッと立ち上がり


『では皆様これで♪』と言って引き揚げた。


『何だ?何を考えている?』


漢嬰は含む所が在りそうな叡鞅と周勃のやり取りに、説明を求めた。


『まだ明かせぬ…。只やる時は必ず声をかけるよ!』


周勃はそう言うと、漢嬰を見つめた。


その目は『いつも頼りにしている。』と信頼を物語っているように見えた。


『わかった…。信じよう♪』


漢嬰はポンポンと周勃の肩を叩くや、こう言った。


『何しろお前のやる事には無駄が無い。それに、お前の話しに乗って後悔した事が一度もなかった。』


周勃はフフンと呟くとそれに応えた。


『当然だ。俺は慎重だからな…。』


と言って漢嬰と軽く抱き合い、背中をポンポンと叩き返した。


『それにしても叡鞅という男は信用出来るのか?』


漢嬰は初対面ゆえに少々心配している。


すると、宋中が口を挟んだ。


『あいつは頼りに成りますよ♪何しろあいつと私はあなた方と似たような関係ですから…。』


『一緒に死線を越えた仲か…?』


漢嬰はそう言うと周勃を見つめた。


『そんなとこです。ですから心配していません。』


宋中は二人を見ながらそう応えた。


『俺もそう見たから頼んだ(笑)』


周勃はそう言うと、さらに付け加えた。


『宋中♪お前の連れはかなりやる奴だな。』


宋中は『ですね♪』と笑って応えた。


『では周勃健闘を祈る。』漢嬰は拝手した。


宋中もそれに合わせて拝手する。


『お前たちもな…。』


周勃も答礼するや(きびす)を返して陣屋を後にした。


『さて、忙しくなるな…宋中頼んだぞ!』


漢嬰はそう言うと宋中も『承知!!』と応えた。



ー漢嬰・陣屋外ー


周勃が陣屋をあとにすると、突如声を掛けて来る者がいた。


『周勃♪俺も()ませろよ!』


曹参(そうしん)だ…。


曹参は、本来は劉邦直属の将軍である。


劉邦や蕭何と同郷で、彼らの信頼が(あつ)い。


これ迄も、数々の功績を挙げているのだが、北方四国攻略戦から韓信の幕僚に組み込まれていた。


『曹参殿しばらくです。趙の方は落ち着いたのですか?』


曹参はニヤリと笑うと、


『新趙王・張義殿も心配無かろう。元々切れるお方だしな…離脱に際しては、念のため陛下の許可は得ているから心配するな♪』


韓信軍2万は先の趙国攻略戦で、20万の趙軍を背水の陣で撃破したのだが、戦勝後も残存する敵の降伏兵が余りにも多すぎ、叛乱を起こさぬように、目配りが出来て、兵が畏怖する存在の曹参を趙に残して念のため警戒に当たらせて居たという訳だった。


『わざわざ駆けつけていただいた上は、是非ともお声を掛けさせていただきますとも♪』


周勃も同郷ゆえ、曹参を無下には扱えない(笑)


それに周勃には韓信と違って元々処世術が備わっているため、そつない言い方が出来た。


『おぅ♪期待して待ってるよ、周勃♪』


曹参も周勃がけして約束を(たが)えない奴だと分かっているので『じゃあな♪』と(きびす)を返してその場を後にした。


周勃は『やれやれ…。』と苦笑いしながら見送った。



ー司馬信・客将の間ー


『只今戻りました。』


叡鞅はそう言うと、中に入りかけたが、何やら雑談をする声が聞こえるので、間を置いた。


すると、途端に雑談が止み、足音がこちらに近づいて来た。


『帰ったか…叡♪何を遠慮しておる。入れ♪』


叡鞅の父・司馬信が幕間を開け、手招きしている。


叡鞅は父と一緒に中に入ると、そこには父の友である李匠とその子である、李良が待って居た。


子と言っても叡鞅と同年(おないどし)である。


まだ若いが、秦の将軍を務めていたはずだ。


『李匠の叔父さんお久し振りです。李良、お前無事だったか…。』


『ああ…紆余曲折あったけどな…。』


李匠は秦の将軍・李信の子で在り、李良は孫という事になる。


李信は秦王・嬴政(始皇帝)の時代の将軍であり、秦の天下統一に貢献した人で、叡鞅の祖父・司馬匠の義兄弟でもあった。


そのため、子供が出来たら互いの名をつける約束をしたようで、李信の子は李匠、司馬匠の子は司馬信となったらしい。


始皇帝が崩御し、宦官・趙高が実権を握るや、司馬信は李家を自国に避難させた。


李信の子孫が、危ない時は必ず助けるようにとの、司馬匠の遺言を果たした物で在るが、司馬信は遺言など無くとも、幼なじみを見捨てはしなかったろう。


司馬家と李家の繋がりは三代に渡り、固い絆があった。


叡鞅と李良も昔から仲が良い。


李家が避難する際に李良は将軍として、反乱討伐に出ており、行方知れずとなっていた。


『おいおいその話はするとして、今は(いくさ)の準備が先だろうな。お前も出るのか?』


李良は叡鞅を見つめながら、そう聞いた。


『いや、別の仕事があるから、俺は出ぬ。』


叡鞅がそう応えると、司馬信が口を挟んだ。


『宋中殿のお役目かな?』


叡鞅は首を横に振ると、皆に相談するように

、事の次第を説明した。


『なんと!周勃殿のお役目とはな…。』


司馬信は仕方ないと言った体で吐息するや、


『では、李匠…久しぶりに一緒にやるか?』


李匠はそれに応えるように、


『そうするとしようか…。』


と立ち上がる。


『腕は鈍って無かろうな?(笑)』


司馬信は笑いながら立ち上がった。


『舐めるなよ♪これでも元将軍だぞ(笑)』


そう応えると、


『李良お前はどうする?』


と言った。


『俺は兄貴を手伝う…。兄貴いいだろう?』


李良は叡鞅を見つめながら頼んだ。


『叔父様、李良を借りて構いませんか?』


叡鞅は李匠を見た。


李匠は優しい笑みを讃えながら、


『若い者同士積もる話も在るだろう。認めよう♪』


と応えた。

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