作戦会議
ー同日・韓信陣営ー
皆、呆気に取られた顔で傅首を…いや勅使を見送ると、早速、韓信はどうする?といった体で四人を見回した。
まず漢嬰が口を開いた。
『ここまで来たんだ。やるだけはやりたい。だが、決定権はお前さん(韓信の事)に在るんだから、判断には従おう!』
常識家らしいもっともな意見である。
周勃は『俺もそれで良い♪』と、つい先程、垣間見せた知的な側面は再び影を潜め、また懲りずにムシャムシャと饅頭をクチに放り込んだ。
漢嬰は『仕方ない奴…。』と苦笑しながら見ている。
韓信は蒯通を見つめると、『お前さんは?』と聞いた。
蒯通は『私は最後に…。』と言って李左車に促す。
李左車は…、思いきってこう言った。
『酈食其さんが死んで良いなら攻略に入りますが、多分情勢を分析する限りでは、和平交渉は成功するんじゃないかな♪そう私は思うので停止に一票♪』
李左車は戦国時代、あの秦国と最期まで渡り合った趙の大将軍・李牧の孫である。
その血脈(DNA)は李左車にも受け継がれており、まだ若いが知略の片鱗を見せた。
すると周勃が突然、『あ!俺もそっちに一票♪』とまるで風見鶏オーケー♪てな具合で賛意を見せた。
攻略派が少数に転じた漢嬰はむすっとした顔で見ている。
韓信は再び、蒯通の方に視線を移した。
蒯通は…、冷静に韓信を見つめながらこう応えた。
『韓信殿…酈食其は己れの名を売るために単独行動に出ました。もちろん命は賭けているのでしょう。それは同じ縦横家として理解出来ます。』
そう言うと、一旦言葉を継ぐように、ひと息、容れる。
『先程、李左車とは話しましたが、私も李左車が言う通り、情勢が酈食其の成功を示唆しており、最早、何もせずとも、斉国は漢軍に帰すで在りましょう♪』
そう言うと、言葉尻に力を込めて話を続けた。
『ですが、皆さんはそれで良いのですか?』
それはそうだ。
彼らは命賭けで兵たちを鼓舞しながら、北方四国を攻略せしめて来た。
斉国を陥落させれば、最早、誰も無し得なかった大計を成した事になり、味方はもとより、民衆からも英雄として迎えられるだろう。
それを横からいきなり、鳶が油揚げをかっさらうが如く、酈食其は手柄を横取りしようとしているように見えたとしても、不思議では在るまい。
皆、一様に目線を彷徨わせて、週淳している。
蒯通は、
『もちろん無血開城が一番望ましい在り方なのは、承知しておりますが、奴ひとりに功をひとり占めされるのには、我慢がならんのです。』
そう言うと、『判断は皆様にお任せします。』と鉾を納めた。
韓信は皆を見回しながら、考え込んでいる。
皆も納得はいっていないらしい。
『さて、どうする?』
ここは大事な局面だ。李左車や周勃の意見も分かる。
韓信としても、大事な兵たちをむざむざ死なせたくは無い。
しかしながら、漢嬰の意見も蒯通の気持ちも理解出来た。
兵たちも死にたくはないだろうが、真実を知れば不満も出よう。
一旦不満が続出すれば、数の上では兵たちが圧倒的に多い分、抑えが効かなくなる可能性もある。
不満を解消するために、斉国入場の後に略奪や乱取りが続発すれば、斉国の民の怒りを一身に買うに違い在るまい。
そうなってからでは遅いのだ。
斉国の今後の統治にも影響するし、田広との関係も不味くなろう。
韓信たちも、陛下からお咎めを受ける事になるだろう。
『やれやれ…陛下も質が悪い…命令すれば良いものを、現場に判断を押しつけるとはな…。』
この展開は全くもって気に入らないが、事ここに至っては、自ら判断するしか在るまい。
責任は自分だけで取れば良いのだ。
韓信は決断を下した。
『責任は俺が取るから予定通り今夜攻めるぞ!』
それを聞いて皆、一様に覚悟を決めた!というように、襟を正すと準備のためにひとりふたりと散って行く。
李左車だけは、『………』無言で呆けていた。
『裏目に出ぬと良いが…。』
彼は酈食其の無事を祈りつつ、只ひとり最期まで佇んで居るのだった。
隊に戻る最中、周勃が、漢嬰に声をかけた。
『頼みがあるのだがいいか?』
日頃は自分から声をかける事も珍しい寡黙な男が、自分に頼みがあるという。
漢嬰は少々驚きをもって周勃を見つめながら、
『何だ?』
と問うた。
すると、周勃は一計在りと言った顔で願い出た。
『お前の懐刀…何て言ったかな?』
『宋中の事か?』漢嬰が応える。
『そうだ!その宋中を少しの間、俺に貸してくれ!』
周勃の望みを叶えてやりたいのは山々だが、これから攻略戦という時に、タイミングが悪過ぎる。
宋中が居なければ、漢嬰軍はその力が半減してしまうため、漢嬰としても困るのだ。
だが、曲がりなりにも周勃の頼みである。
周勃とは付き合いが長い。
盟友と認めた数少ない親友である。
奴もその辺りは承知の上であろうから、即断で却下も出来ない。漢嬰は、
『理由による。時間が無い。早く言え!』
そう言うと立ち止まり周勃を見た。
『臨淄城に潜入させる。』
周勃の驚きの提案に、漢嬰は度肝を抜かれて絶句した。
『なっ…どう言う事だ!』
周勃は漢嬰の驚愕した顔をまじまじと見ながら、
『酈食其の成否を確認して置きたい。』
そう言うと、ニコニコ笑っている。
漢嬰は『??』いまいちその意図が理解出来ない。
周勃はいったい何を考えているのだろう?
すると、周勃は『後々のためさ♪』と応えた。
漢嬰は正直…周勃の意図がいまいち飲み込めないが、奴は無駄な事はしないタイプ…と解っているので、
『一緒に来い!』と周勃と連れ立って陣屋に戻った。
ー漢嬰の陣屋ー
主が戻って来るなり、呼び出された宋中は、『殿、準備出来てますよ♪』と言いながらお気楽に入って来た。
すると、周勃将軍が一緒に居たので、慌てて拝手する。
宋中は『やっちまった…。』と冷や汗…頻りだ。
『相変わらずお前は愉しいね♪』
周勃はクククッと笑いながら『頼みがある!』と唐突に言った。
『な、何でしょう??』恐る恐る応える。
『臨淄城に潜入して欲しい…。』
宋中は驚きの余り、『へ?』と真顔でびっくりしている。
すると周勃は、沈着冷静に説明を始めた。
『酈食其は和平交渉に臨んでいる。その成否では、斉国は項羽の大楚に身売りするかも知れない。斉と楚が連合して襲って来たら、さすがに無敵の韓信軍団もやばいだろ?てな訳で詳しい状況を知りたいのさ♪』
成る程…漢嬰もようやく状況を理解する。
宋中は暫し考えていたが、思い当たる事があるらしく、ニコッと笑うとこう応えた。
『それなら、私よりも適任者がおります。』
宋中はそう言うと、『叡鞅殿をお連れしてくれ!』と伝礼兵に声をかけた。
しばらくすると、叡鞅が入って来る。
『この者は私の連れでして信頼が置けます。必ずやご期待に応えるでしょう♪』
叡鞅をそう紹介しながら、
『やってくれるだろ?』
と確認をした。
『何なりと♪』
叡鞅はお使いに出掛けるくらいの冷静さで応えた。
そこで、『宋中の推薦なら間違いあるまい。』
と、周勃は再び状況を説明した。
それを聞いている間も、何の事も無いと言った具合に、殊更に動揺する事も無く、じっと話しに聞き入っている。
叡鞅は話しが終わるや『やりましょう♪』と述べて、周勃に分かるようにだけ、言葉を告げた。
『将軍も準備に怠り無く♪(笑)』
他の者は意味が分からないが、周勃だけは分かるらしく、苦笑しながら『頼んだぞ!』と言った。
(>.<)y-~こんにちは♪ユリウス・ケイです。
(^-^;正直話しが膨らみ過ぎて困ってます(笑)
三話くらいの予定が…余裕ではみ出してきてます(汗)
(-.-)y-~いよいよ開戦に成りますが、新たに登場した叡鞅さんは、周勃将軍の期待に応えられるのか??
最後に残した謎の言葉とは?
いろいろ謎が増えて来た本章ですが、引き続き宜しくお願い致します♪




