勅使の到着
ー同日・韓信陣営ー
北方攻略軍司令長官の韓信は幕僚たちを召集し、斉国攻略作戦の最終確認に入っていた。
実は既に本日の朝、一度作戦本部は召集され、全幕僚の総意で準備が整い次第、順次攻略に入る事になって居た。
ところが、いざ兵に昼食を取らせる段になってから、榮陽からの使者が慌ただしく到着し、劉邦の勅書を持って来たとの報告があった。
韓信も副将格の漢嬰や周勃、軍事参謀の蒯通や趙攻略で配下に納めた李左車などと一緒に歓談しながら、昼食を採っている最中であった。
漢嬰は至ってのんびりと『陛下の士気高揚の一環でしょうな…頑張りたまえ♪君たちならやれる♪とか何とか(笑)』とあくまで平静そのものだ。
かたや周勃はと言うと、今食わねばしばらく食えん(笑)と必死に食い物を口に運んでおり、余り関心は無さそうである。後は韓信殿宜しく♪てな感じに見えた。
韓信はと言うと…、
『まさかこの後に及んでまた兵を寄越せ!じゃないだろうな??』
とやや心配している。
それと言うのも、北方攻略時に一度成らず…せっかく鍛え上げた韓信精鋭の兵を根こそぎ抜かれているからだ。
榮陽の兵が足りないから、韓信兵を廻してくれ!と半ば強引に命令してきたのであった。
『陛下の命令と有らば仕方ない…。』
韓信は泣く泣く精鋭の兵を劉邦に送った。
劉邦としては、連日…化け物・項羽相手に兵を削られ、やむ無し!という訳だ。
さらに言えば、『儂が一手に項羽を引き受けているのだから当然だろう!』と思っている。
作戦と言えば作戦なのだが、重要拠点・榮陽を死守しながら、項羽の意識を自分に向けさせて置くのは、ある意味、命賭けだ。
連日、一方的な項羽の攻勢に晒され続け、まるで生きた心地がしない。
それだけの覚悟で儂がやってるのだから、北方攻略はやって当たり前!兵くらい気前良く寄越せよ…てな具合なのだ。
韓信はそれが分かっているから、『またか?』とまずそっちに意識が行っても不思議では在るまい。
『さすがにこのタイミングは不味い…。』
今まさに兵に食わせて、さあ頑張れ!と送り出そうとしている刹那である。
『韓信ちゃん♪また兵をおくれよ♪』
陛下なら言い出しかねない(汗)
『そう書いてあったらさすがに今回は断ろう…。』
韓信は心に決めた。
さて、片やで軍事参謀の蒯通はと言えば…。
『かなり嫌なタイミングだな…。』
とあくまで現実的にこの件を捉えている。
『まさか…攻略に待ったが掛かったのでは?』
と心配していた。
『陛下なら、突然変質しても不思議は在るまい…。』
理由は解らぬが、今まさになにかが起きており、そのため、事情が変わったのかも知れぬ…。
ある意味さすがは軍事参謀である。
この場で事実を一番冷静沈着に言い当てていたのは、蒯通だけであった。
李左車はと言うと…。
『抜かれるな…。(笑)』
とやはり、韓信同様の心配をしている。
…と言うのも、陛下に韓信精鋭の兵を抜かれた際に、主・韓信から…
『李左車ちゃんどうしよう??(ToT)…。』
と泣きつかれた事が在るからだ。
『志願兵募って鍛え直すしか無いですな…。ちょうど軍全体が疲れから士気が落ちてますから、休ませておき、その合間にチャチャっと新しい兵に訓練しましょう♪』
と教えてあげた事があったのだっだ。
さて、いよいよ韓信たちの前に勅使がやって来た。
韓信たちは膝立ちで拝手しながら、勅を受ける。
勅使は厳かな言葉で、
『陛下の勅をお伝え致します。』
と前置きした上で次のように述べた。
『現在、士人の酈食其を斉国・田広の元に和平交渉に向かわせているから、そう心得よ♪以上である。』
そう言うと、韓信に勅書を差し出した。
『お受け致します。』
と言って、韓信は勅書を受け取りながら…、
『はい??』と混乱している。
仕事の済んだ勅使はとっとと引き揚げようとしているが、韓信はそれを慌てて引き留めて確認をした。
『あのぅ…陛下は何が仰りたいのでしょうか?今ひとつ意味が飲み込めないのですが…。』
勅使はめんどくさいなぁ…という体で『ウオッホン』と咳払いしている。
よく見ると傅首ではないか…。
この当時、傅首は榮陽で兵站を担っており、小うるさいのが少しの時間でも居ないとせいせいすると、厄介払いも手伝って派遣されたのだ。
韓信は傅首の顔をまじまじと見つめながら、
『早く言えよ♪』
と眼をキラキラさせて待っている。
漢嬰も『どう言う事だ?停止命令か?』と息巻く。
周勃はどっちでも…てな具合で口に饅頭を放り込み、ムシャムシャ咀嚼に余念がない。
蒯通はというと、李左車とぶつくさ言いながら、意見交換をしている。
傅首は再び『ウオッホン』と咳払いをすると、皆を手招きして集めて、頭を寄せ合うと、小声で呟いた。
『いいですか…私は事実を伝えたまでです。他には何も言うなと釘を刺されている。つまりはそう言う事です。解った??』
五人とも一様に『う~ん?う~ん?』と首を振っている。
傅首は『ウンガッ!!』と擬音を発すると鼻を鳴らして、めんどくさいと言った感じで付け加えた。
『つまりですなぁ…陛下は交渉が設立すれば、ラッキー。失敗しても代償は縦横家の首ひとつだからオーケー。そのために攻略は停めたくないが、万が一が在ると不味いから、明確な指示は避けて、判断は現場でしてちょ♪…てな事ですな(笑)では皆さんご機嫌よう♪』
と言って、回れ右をすると再びスタスタ歩き出す。
『ちょっと待て…』
今度は漢嬰が傅首の肩を掴むや強引に引き戻す。
傅首は『何をする!』と怒り心頭に漢嬰を睨みつけるが、漢嬰がそれ以上の激昂を顔に浮かべているのが分かると、『参った…。』と困った顔を見せた。
漢嬰は『言質を与えぬと言う事か?』と再度確認した。
傅首は『どうもそのようですな…。』と困り気味だ。
すると、興味のかけらもなかったはずの周勃が、ポツリと呟いた。
『どうせ陳平さんの発案でしょう♪あの方ならやりかねない(^-^;…。』
漢嬰はそれを聞くと激怒して『そうなのか?』と傅首に詰めよった。
傅首は役目を押しつけられた時から、嫌な役目を押しつけられたと乗り気じゃなかった上に、めんどくさいし、こんな事に成りそうな嫌な予感がしていたから、最早、泣き面に蜂と言った具合に、苦虫を噛み潰したような顔で応えた。
『詳しくは知りませんが…崔洋がお気の毒てな顔で見送ってくれましたので、その可能性は大ですな…。』
そう言うと『後は皆さんで宜しく♪』と言って、再び回れ右をすると、スタスタ帰っていった。
最後『あークソッ!』とこれ見よがしに悔やんだ言葉が聞こえてきた。
(ToT)キャラが増えて来るとやはり言葉の化学反応が楽し過ぎますな…(笑)
さて、ますます展開が楽しみになって来ました。
引き続きお楽しみ下さい♪
byユリウス・ケイ




