97話
少しの間、真っ白い羽を撫でていたが、『俺何やってんだ?』と自問自答から我に返る。
『何の羽だか分からないけど、この先に何がある…のか?ってか、何で俺は羽に埋もれてるんだよ?』
自分の全身を覆う羽の塊に驚きながらも、そこから抜け出そうと右手を突っ込む…羽の中へ。
『これで、魔物とかの体でもあったら…やばい?』
ゆっくり右手を前に進めながらも、今更な事を考えるユウキ。
とは言え、もうすでに右手を突っ込んだ後だった為、『えぇい、いきあたりばったりのコンチクショー』っと、半分ヤケになりながらも突き進む。
実際、突き進んで行ったのは右手なのだが…。
急に右手に触れていた羽の感覚が無くなり、少し肌寒い空気が右手に触れる。
『ぬぁっ?寒…いって言う程では無いケド、微妙な温度?それにこれは、何も無い空間?あれっ?』
今のユウキの姿を言うならば、仰向けで白いシーツの上に寝っ転がりながら、右手を目の間で真っ直ぐ伸ばしている状態であり、結構間抜けな格好だ。
とは言え、何かしらに触れると思っていたユウキは、何かないかと右手を左右に振る。
その行動を直ぐに後悔する事となるのだが…最初は小さく振っていた右手を、思い切って大きく振る。
伸ばした肘を中心に右側に五十センチ程度振ると、『ぷよん』と何やら弾力のあるモノに、右手の甲が当たる。
『ん?何だこれ?』
空中らしき場所で弾かれた右手の甲を 先程の弾力えるモノに何度か当てる。
二〜三度繰り返した後、手首を回して手のひらで触ってみる。
『う〜ん、何かサラサラしてるって言うか手触りが良い?少し冷たい…かな?』
ゆっくりと撫でながらそんな感想を思っていると
「んん♡」
「?!」
っと、なんとも艶めかしい声が聞こえてくる。
その声に思わず止まる右手。
「おいおい相棒、やけに積極的じゃねぇか、んん?」
ハスキーボイスのセリフに、顔色が青くなるユウキ。
素早く右手を引こうとしたが、何かに手首を掴まれる。
「おや、もうおしまいかい?そりゃ〜ないんじゃないかね〜」
そう言うセリフが聞こえたかとおもったら、いきなり右手を引っ張られる。
「うわぁぁあ?!」
目の間に迫って来る羽を避けようと顔を背けようとしたが、引っ張る力が強過ぎて体が動かず、そのまま白い羽の中へと突入してしまう。
思ったよりも柔らかい羽が頬を打つが、目を閉じてなすがままにされる。
ずぼっと音が響いたと思ったら、顔に当たる羽根の感覚が無くなる。
そっと目を開けると、そこは広い部屋だった。




