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95話


そんな状態だったが、珍しい事にアントニウスの口論にバレシオスが反応したのだった。

これには見ていた全員が驚いた。

普段からどれだけ言われようとも反応しないバレシオスが、席を立ち司会者の居る壇上へと上がる。


「昨日、我が港から高速船を出し、北西の海域を調査した」

「な…貴様、我が国の最新鋭艦を勝手に使ったと言うのか?!」


その言葉に会場がザワつく。

高速船は、一本の三角帆を使った現代で言うヨットのような物だ。


最高速度は約十二ノット(時速二十キロ程度)で、この世界の船舶としては最新式だ。

だが、彼らにとっての最新技術が使われており、又製作に掛かる費用も高い為、僅か三隻しか存在していない。


その三隻の内の二隻をバレシオスが所持している。


「私の所有物を使うのに何の問題が?」

「ぐっ!!しかし、あの高速船使用には議会の承認が必要なハズ」

「それは『三隻同時使用』の話だ。私の判断で一隻使用する事に制限は無い」

「うぐぐ…」


バレシオスの反論にアントニウスが黙り込む。

そもそも、この高速船の建造は、バレシオスが独自のルートで手に入れた図面を元にした事であり、使用方法に関しても他者が口を出せる事ではない。


左唇をいびつゆがめながらも唸り声しか出せないアントニウス。

そんな彼を無視して話を進めるバレシオス。


バレシオスの持って来た議題は、『三日前に落下した物体の調査』と『調査用ガレオン船の出港許可』だった。

高速船に関しては、落下海域に対する調査の為の先発隊であり、本隊はこのガレオン船となるらしい。


「ふむ?既に高速船を許可無く出しているのだ。追加のガレオン船を出すのに許可がいるのかね?」


そう疑問を呈したのはアトスだった。

アトス自身は、都市国家同盟での力は七番目だが、バレシオスとの仲は可も無く不可も無くと言う所だ。


「そうだアトス殿、ガレオン船には許可が欲しい。乗せられるだけの傭兵を連れて行く予定だからだ」


その言葉に会場内のザワつきが大きくなる。

大型船に傭兵を乗せる、つまりは戦闘が出来る状態だと言う事になる。


都市国家同盟は、寄合所対よりあいじょたいであり、信頼関係が元となっている。

そんな所で、大型船に傭兵が乗り込むとなれば、他者に対する戦争行為と取れる。


問題は何処へと攻め込むのかと言う事だが…。


「勘違いしないで欲しい、私は何処かの国家やそれこそ都市部に攻め込もうと言ってる訳ではない」

「では何の為に?」


アトスの質問にバレシオスが笑みで答える。


「三日前の落下物。目撃者によると『巨大な島』だったと言う話だ」

「な、何と?!」


バレシオスの言葉に、集まった代表全員の動きが止まる。

巨大な島が落下した、そんな有り得ない話に思考が止まる…だが


「他国が動く前に、我が国である程度確保する。その為の許可申請だ。とは言え、まずは本当かどうかの確認をするがな」


現実離れをしたバレシオスの言葉に、正気に戻ったアントニウス達反対派との口論は、この日から九日間も続く事となる。

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