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88話

〜〜〜〜〜

白一色で統一された立派な神殿。

その神殿の大広間では多数の人が集まり、中央に設置してある物体へと一心不乱に祈りを捧げていた。


両手を組み両膝をついた状態で、老いも若いも男も女も貴族も一般人も関係無く、一人を除いた全員が跪いている。


その視線の先にあったのは、縦四メートル、横二メートルはある巨大な六角形のクリスタルの塊だった。

巨大なクリスタルは、豪華な台座に埋め込まれており、その輝きを周囲に煌めかせていた。


台座に近い下の部分には無数の小さなひび割れが付いていたが、全体を見れば些細な事だった。


その巨体なクリスタルの中央部分、どうやって削り出したのか分からない程の精巧で綺麗な表面には、巨大な竜と戦う人々が映し出されていた。

それぞれが光り輝く武器を持ち、自身の十倍はある竜と正面から切り合っているその姿を周囲で見る人々は固唾を呑んで見守っていた。


所々で映し出された画像が乱れ、その度に人々の嘆きの声が聞こえてくる。

全員が見守る中、徐々に映像の乱れが進み、ノイズのようなモノが増えていく


それでも見守る者達は、全員ある人物の姿に釘付けになっていた。

チラリチラリと映るソレは、背中に真っ白い羽を生やし、両手に持った巨大なハルバードを振り回しながら、竜の巨体へと一撃を食らわせる。


長い髪の毛がフワリと靡くと、それを見ていた者達のため息が室内に漏れ聞こえる。

体型的にも女性と思われるその人物に、集まった人々の視線が集中するが、映像の乱れは酷くなり、そしてついにブツリと音を立てて消えてしまう。


「あああ…」


誰とも分からない悲鳴が上がるが、それ以上の言葉は出なかった。

暫くの間、大広間に沈黙が過ぎ去っていく。


クリスタルに一番近い位置に、唯一立っていた人物が、人々の方へと振り返る。

身長二メートルは有ろうかという巨漢、歳の頃は五十代から六十代、筋肉質の体を持ち、頭部に髪の毛は無いが、その両目からは滂沱の涙を流していた。


「我が子らよ、神に愛されし民達よ、神託は下された。心して聞くのです」


祈りの形に組んでいた両手を離して頭上に上げると、よく通った声で語り出す。


「今から百年前、偉大なる神から送られたこのクリスタルは、我々マーティーン神聖王国に様々な神託を託されて来た。ここ十年沈黙されて来たのは、神聖王国が平穏であったからだ」

法凰ほうおう様」


両手を振りかざしながら力説する法凰と呼ばれた人物は、笑顔を周囲に振り撒きつつ心の中で罵っていた。


『この愚か者共が』


‥っと。

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