81話
必死になって持ち上げる手の動きに合わせるように、浮遊大陸は僅かながらも上下の動きを繰り返していた。
じっくり見ても分からない程のゆっくりとしたスピードで、五〜十メートルの感覚で浮き沈みしている。
現在の高度は、地上から千メートル程の位置をキープしているが、王宮内にいるユウキには分からずにいる為、『兎に角浮かせなきゃ!!』と必死になって引っ張り上げていた。
ユウキの閉じた目に映し出されたマップには、進行方向に山脈らしきものがジワジワと映し出されていく。
『よ、避けないと!!』
そう思いなからも、薄く見える自身の手を南の方へと動かすが、残念な事にマップ中央に映る浮遊大陸はびくももしない。
近付いくる山脈の表示だったが、『何故か』その上を何の障害も無く浮遊大陸が通過していく。
その事に『ふぅ〜っ』と息を吐くユウキたったが、直ぐにマップへと視線を向ける。
先程から何度か似たような状況があったのだが、その度に必死に移動させようとするユウキの姿があった。
ユウキにとっても浮遊大陸にとっても運が良かったのは、この進路上にある山々が、標高千メートル以下しか無かった事だ。
もしも、もう少し、北側に浮遊大陸の進路があったら、ここまで無事に通過する事は出来なかっただろう。
この異世界では、大陸北側に大きな山脈が、東から西へと細長く連なっていた。
その北側の山脈のお陰で浮遊大陸の下に見える大地は、温暖な気候が保たれている。
その事実を後々知る事になるユウキは、「ホントに運が良かった…良かったぁ〜」っと、玉座に座りながらも呟く事になる。
残念ながら今現在のユウキは、そんな事実を知らないので、必死に高度を取ろうと頑張っている。
頑張れば頑張る程、魔力がどんどん消費されて行く。
『うぐぐ…浮かばない…どうすれば…どうすれば…』
ユウキ的には、高高度とまではいかないまでも、そこそこの高度で安定してくれればと思っていた。
問題なのは、この時点で『安定させる方法が分からない』事なのだが…ユウキとしては、兎に角浮かせるしか無いという強迫観念に囚われたいた。
ジワジワと過ぎていく時間と減っていく魔力に、ユウキの気持ちだけが空回りしていく。
そうしてどれくらいたったのだろう、浮遊大陸の下に映る知らない地形に変化が見えて来た。
緑色の平原から砂浜が表れ、その向こう側には『大きな青色』が表示されだした。
『まさか…これは?!』
その地図の色の変化こそユウキが待っていたモノだった。
この異世界、魔法の無い別世界にあるだろうと思われた場所。
『海』だ。




