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73話


リリーナの叫び声が耳に響く…が、ユウキはそれどころでは無かった。

さっきの地面の亀裂を直す時よりは魔力の放出量は少ないが、それでも『コレはマズイ』とハッキリ分かる状況だった。


『一難去ってまた一難かよ!!』


心の中で悪態を付きながらも、マップ上で指先を動かして行く。

色々やっていると、マップ上を移動させるだけではなく、画面を横に弾くフリックや、人差し指と中指を当てて拡大縮小が出来るピンチアウト、ピンチインまで出来る事が分かった。


今の浮遊大陸落下には全く関係無いシステムだったが…それでも必死に何か出来ないかと焦る。

画面が色々と変わるが、それ以上の事は出来ない、やろうとしても魔力が足りないと感覚で分かった。


『持ち上げる魔力が必要だけど、今の俺では…ってか、俺の大量の魔力何処行ったんだよ!!』


どうすれば…そう思った瞬間、口元に何かが触れ、喉に液体が流れ込むんで来た。

反射的に目を開けると、そこにはリリーナの顔のアップがあった。




〜〜〜〜〜

震える指先を空中に這わせるユウキを見るリリーナだったが、握った手から、ユウキの体内の少ない魔力が流れ出だしている事に気付いた。


『こんなに減っているのに、まだ魔力が流れ出ている?!』


彼女達アルテミア大陸に住む者達にしてみれば、自身の持つ魔力が大凡おおよそ十分の一以下になれば昏倒、場合によっては死んでしまうとされている。

だからこそ、数の少ない魔力回復薬を持って来たのだったが、回復させる方法によこしまな感情が出てしまい今に至っていた。


勿論この理論は、彼女達アルテミア大陸の住人だけの話であり、ゲームの中で化身アバターで活動しているプレイヤーには当て嵌まる事では無い。

その事を知らないリリーナは、魔力の減少が死に繋がると半狂乱状態にあった。


『どうしようどうしようどうしよう、このままだとマスターが、どうしようどうしようどうしよう、マスター、どうしようどう』


ユウキと繋ぐ手を通して自分の魔力を送ってみるが焼け石に水状態。

ユウキとリリーナでは魔力量が違い過ぎて、リリーナの送る魔力以上の消費量になっている。


『どうしたら?!』


周りを見渡した際、自分の持って来た回復薬に気が付く。


『そう…だった。これをマスターに飲ませれば』


そこから先の行動は早かった。

片手でユウキの手を支えてつつ回復薬を取り、口で噛んで蓋を開ける。


姿形すがたかたちに拘っている場合じゃない!!』


リリーナの口の中に液体を含むと、そのままユウキの口元に近付き流し込む。

さっきまでの邪念など無く、ただユウキに生きて欲しいと願う一心だった。

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