70話
ユウキが突然苦しみ出したかのように見えた為、慌てるリリーナだったが、そこで動きが止まってしまった。
「マスター苦しそうだけど…体を動かして良いのかどうか…」
ユウキの唸り声を苦しんで居ると思ったリリーナだったが、だからと言って体を起こして良いものかと判断に悩む。
そうしていると、ゆっくりとユウキの右手が持ち上がる。
とは言っても僅か数センチ程度だったが、リリーナにはしっかりと見えていた。
僅かに上がった右手をそっと両手で包み込むリリーナ。
「マスター?」
何をしたいのか?何を伝えたいのか?それを聞きたくて声を掛けたが、やはりユウキからの返事は無かった。
返事は無かったが、その指が何かをしようとしている事は伝わった。
「指?マスター、何かをされるのですか?」
返事の出来ないユウキに目を向けるリリーナ。
そこで、ユウキの瞼が少しだけ開いている事に気付いた。
『意識がある?!』
一瞬ビクッとしてしまったリリーナだったが、今はそれどころでは無いと頭を振る。
リリーナが持ち上げたユウキの右手だったが、その人差し指だけがプルプルと震えながらも空中を指差す。
「えっとマスター、このまま支えますか?それとも何処かに動かしますか?」
その動きを見たリリーナは、その状態が『浮遊大陸を直す仕草』に見えた為、ユウキの顔を除き込むように近付く。
僅かに開いた目を見ながら質問すると『支える』発言をした際、眼球が下に動いたのが見えた。
「支えていれば良いのですね?」
再度聞くと、確かに目が動いた。
それを了承と見たリリーナが、ユウキの右手を包み込むようにして支える。
それを見たユウキは、そっと目を閉じる。
本人の心臓は、ドキドキバクバクと激しい動きをしていたのだが…。
『あっるぇぇぇぇぇ〜?何で手を握られてるの?いや、支えてくれるって言ってたケド、支えるのってこうじゃないよね?違うよね?もっとこう…自由で…何と言うか…救われ…ちくわ大明じ…いや待て、誰だ今のは?!』
っと、とあるグルメネタとチクワネタが混ざる程の混乱状態だったが、直ぐに気持ちを切り替え集中する。
それによって、瞑った目の裏に浮かんだのは、さっきまでお世話になっていたゲーム内のマップ画面だ。
そのマップを見ながらも、焦る心を落ち着かせようとする。
何しろ、こんな事をしてる間に『自身の体が斜め右にズリズリと滑り出していた』からだ。
玉座の間の座席に寝転がっているユウキの体が斜め横に滑る。
つまり、それだけこの浮遊大陸が傾いていると言う事だった。




