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65話

そんな暗い空と青い空の境界線をジッと見るリリーナは、徐々に変化する空を睨み付けている。

宇宙の黒い空が青い空へと、上からしたに溶けるように景色を変えていく。


それに合わせるように、リリーナの頭上を風が吹き荒れる。

吹き荒れる風に合わせるように、リリーナの髪の毛が宙を舞う。


これは、浮遊大陸を球状に覆っていた結界が真上から消えていった為に起こった現象だ。

この浮遊大陸だが、高度二万メートルの高さを浮いている。


当然ながら、ゲーム内での設定であり、実際にマップ上の空中に浮いている訳では無い。

ところが、彼女達ゲーム内のキャラ達にしてみれば、空にポツンと浮かぶ浮遊大陸を認識していたらしい。


そんな高度に、浮遊大陸とは言え人が住む事が出来るのかと言うと、普通であれば出来ない。

そこはファンタジー世界、気圧の変化や空気の薄さを防いでくれていたのが、エルザ達の言う『不可視の壁』と呼ばれるモノであった。


この不可視の壁や浮遊大陸の認識などは後日、ユウキが情報のすり合わせをした際に知る事となるのだが…。


エルザは、この現状がとても不味い事には気付いていた。

不可視の壁と呼ばれている謎のアレが消え、天候がまるで嵐のように荒れ狂っているからだ。


更に言うなら、この浮遊大陸自身が下がり始めている事もある。

浮遊大陸に住む鳥達が、急激な変化に対し敏感に反応し、森の中を右往左往しているのが見て取れる。


遠く大陸の端を長時間見ていたエルザだから分かる微妙な揺れ、それに合わせるように体が下へと下がる感覚、下から斜めに上がって行く雲など、雲行きが怪しくなっていく。


「ふん、雲の動きで『雲行きが怪しくなる』なんて言うとは皮肉かくだらん洒落の類いって話だな」


そうポツリと呟くと少し顔を傾け、後ろにいたリリーナを横目で見る。

先程まで空を見ていたリリーナだったが、何かに気が付いたのか顎に手を当てて考え込んでいる。


その様子を見てニヤリと笑うエルザ。

何しろ、リリーナとの仲は悪くは無いが良くも無い…っと言うのがエルザ本人の感想だ。


リリーナとの付き合いも七年になるかどうかと言う所だ。

相棒と呼んでいるユウキが、リリーナを伴ってエルザの住む村にやって来たあの日。


そして仲間になってから今日まで、共に戦い、共に生きてきた。

だからこそ、しっかりと本質を見極める眼を持つリリーナが、現状把握をしっかりとすれば、大抵の事は何とかなると思っていた。


…たまにポンコツ具合を見せてくるが、それはまぁ…仕方がない…と、誰に言うとでもなく目線を元へと戻すエルザだった。



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