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63話


「そんな些細な事はいいんです。それよりも落下しているとはどういう事です?説明しなさい!!」

「ワタシにとっては些細じゃねぇぞ!!落下してるってのは落下してるって事だよ、何当たり前の事言ってんだ?」

「あぁぁぁぁ〜もぉ〜!!」


綺麗な髪の毛を掻き毟るリリーナだったが、すぐに気を取り直すとエルザへと向き直す。

先程から伝わる振動は覚えがあった。


この世界…恐らく別世界と思われるこの地に来る直前、本来あった世界で、この浮遊大陸が崩れ去った時と同じ振動。


「また、この大陸が崩れそうになっているの?」


真剣な目でエルザに問いただすが、それに対してエルザは顔の前で手を振りながら「あ〜、違う違う、これはそうじゃない」と言う。

エルザの言う『これ』とは微弱な振動の事なのだろうが、それが何が原因なのか分からないリリーナには、何ら安心する事が出来ない。


そんなリリーナの内心に気付いたのだろう、面倒そうな顔でエルザは親指を北の方へと向ける。

そちらに目を向けるが、見えるのは先程と同じ青い空と境界線とも言うべき海だけだ。


「海と空に何かありましたか?」

「何で分かんねぇんだよ、ってか、下の方じゃねぇ、上だよ上」

「上?」


エルザの指し示す方向は、間違いなく海と空だ、だが、違うと言う。

『上』と言うワードに、目線を少し上へと向ける。


青い空だけが見える…と思っていたのだが、何かが違った。

色合い、そう色合いが違う。


リリーナは有翼族だ。

当然、空を飛び回る事もある。

とは言うものの、有翼族は鳥とは違い、その羽で浮力を得ている訳では無い。


人が鳥のように空を飛ぶとなった場合、必要な翼の大きさは、自身の三倍とも四倍とも言われる程、大きな翼が必要となる。

更にその羽を羽ばたかせる為の筋肉が、とてつもなく必要となる。


兎に角、通常であれば人が空を飛ぶなんて事は、それこそ人体の構造を変更させなければ無理な代物であぅた。

では有翼族はどうかと言うと、流石ファンタジー世界の生物と言うべきか、人の身長より少し大きめの羽で飛ぶ事が出来る。


正確には飛ぶのではなく、浮かせる為の羽と言うべきだろう。

彼女ら有翼族の羽には、大量の魔力が含まれており、それらの力が羽の表面に『浮く』という魔法を発動させているというものだ。


この手法はドラゴンも同じであり、その背中にある翼の皮膜部分に、有翼族と同じ原理の『浮く』と言う魔法を発動させて空を飛んでいるのだ。

体を浮かせた後に、羽の先端部分から『前へと進む』と言う魔法が発動すると、自分の思うように空中を移動する事が出来るようになる。



閑話休題

そんな空を飛び回るリリーナの目には、普段飛ぶ空の青さが、やけに深い黒色に見える程、今、目の前にある空の変化が見えていた。

さっきまでとは違う、青黒い空の色は、リリーナの不安を煽るには十分な代物だった。



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