62話
『有角族』は、分類上はモンスターであるオーガに属する種だ。
しかし、オーガと違い知性があり、人族と呼ばれる各種族との対話が出来、商売も出来ている事から『人種』と認められ、新たに『有角族』の種族名を付けられる事となった。
元々の種族がオーガなだけあり、体力に特化した種族となっている。
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ゲーム内では、新種族として追加されるハズだったのだが、残念な事に見送られる事になった。
理由は『有翼族』と同じで、バランスを壊すと言われたからだ。
体力特化型の割には知力も育ち、力もある為、かなり強いキャラになり易い。
魔力の成長率だけが低いが、それでもドワーフよりは能力が上がる為、しっかりと育成していけば、かなり早い段階で上位陣並の活躍をしてくれる。
それだけに開発側は、新規のプレイヤー用にと力を注いだのだが、残念ながら『強過ぎた』為、追加される事は無かった。
ただ、そのまま消去はイヤだと開発陣がゴネた結果、レベル上限のあるNPCとして使用される事となった。
レベル上限がニ百五十の為、同レベルのNPCとしては強いが、当然ながらプレイヤーと比べればイマイチと言える。
プレイヤーであれば、レベル三百辺りの能力値だが、当然ながらNPCはこれ以上成長しない。
レベル上限の無いプレイヤーには、NPCは絶対に勝てない仕様であり、ゲームとしては当たり前とも言える。
とは言うものの、理由があってレベル十から一切上げていないユウキにしてみれば、レベルニ百五十のNPCという存在は、自身を守ってくれる有り難い存在だ。
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そんなエルザだが、今はこの見張り台から周囲の確認をしていた。
いや、本当なら街中に行って住人の安否から建物の被害状況まで、全ての確認をしたい所なのだが…。
『相棒とリリーナを二人っきりにするなんて出来るかって〜の』
などと言う理由から、外の事は城の周囲に居たドワーフとエルフの偉い奴らに任せて、この見張り台に居たのだった。
ちなみに彼らドワーフとエルフ達だが、『いったい何があったのか?』と城へと聞きに来た所、何故か街の様子と住人の安否確認をさせられると言う理不尽な状況に追いやられたのだった。
その際、何気に玉座の間の窓から見えた光景が、リリーナが相棒であるユウキを膝枕したり、その額を撫でるなどしていた為、なんとなくイライラしていたのだった。
「アタシは、こんな所で頑張ってるって言うのに、アンタは何したやがったんだよ?言ってみろ?!」
「マスターのお顔を拝見してましたが何か?」
「アンタのそのバカ正直な所が気に入らねぇって言うんだよ!!このバカ!!」
なんだかんだと言いながらも、初期の頃からユウキの元で互いに戦っていた仲ならではの言い合いだったりする。




