60話
少しずつ伸びて行く緑の線、それと同時に削れていく精神力?…多分。
微妙に体力も削られているような気がするユウキだったが、それでも目を瞑り耐える。
『もうちょっと…後少し…』
最後の長い一分を切り緑の線が大陸を一周すると、身体中に掛かっていた負担が一気に無くなる。
軽くなった事で『ぷはぁ〜』っと息を吐く。
どうやら、無意識の内に息を止めていたようだ。
ちょっと危なかったようだ、恐らく残り二十秒辺りから必死になっていた為だろう。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
「お疲れ様ですマスター」
息を整えていると、額にヒンヤリとしたモノが当てられた。
薄く目を開くと、リリーナがユウキの額に左手を添えていた。
その事に気が付き、リリーナの手を払い除けようとしたが、ユウキの手はピクリともしなかった。
『あ、あれ?手が動かない…ってか、体全体が動かない?!』
なんとか動くのが瞼だけだったが、それすらも僅かに開くだけだった。
その状態で見たリリーナは、とても良い笑顔をコッチに向けている。
なんと言うか…とても恥ずかしい、今の状況はそれが全てだ。
ユウキがそんな思いをしているとは一切思ってもいないリリーナだったが、次の瞬間、その異変に気が付いた。
小さな異変、それは玉座の間の中程にある窓の外、そこから聞こえてくる野鳥の鳴き声だった。
この黒帝城…黒い城の裏には、高い山々と森が続いている。
城から見て北側と東側、北側に背の高い山、東側は少し低い山と森が広がっている。
その森から、多数の野鳥の鳴き声が聞こえてくる。
どう考えても普通では無い鳴き声だ。
それに気が付いたリリーナは、ユウキの額から手を離すと、一足飛びに窓枠へと移動する。
本来やってはいけない行為だが、そのままスルリと窓の外へと出る。
広いテラスになっているその場所で、リリーナは背中の羽を大きく広げると、一つ二つと軽く羽ばたかせる。
その動きに合わせるように軽く前へ『トントン』と音をたてながら一歩二歩と走ると、三歩目にはフワリと空中に体を浮かせる。
テラスから城の外へと飛び出すと、そのまま滑空する。
上から見ても分かる程、森の中は混乱していた。
鳥達が木々の間を飛び回り、その下の地面を鹿などの野生動物が逃げ惑っていた。
その光景を見た後、反時計回りに旋回しながら城の方へと向かう。
向かう先は城の四隅、円筒状の高い塔がある場所。
最初にユウキが見ていた場所、四方を監視する見張り台へと向かって行くのだった。
目的はただ一つ、その見張り台に立つ偉丈夫に会うためだ。




