57話
マップの端に赤い線が表れ、それが大陸全体を囲むように伸びて行く。
『いやいやいや、何この仕様、ゲームと違い過ぎなんだけど?』
マップ下、地図で言う所の南側から左右に伸びる赤い線を見ながら焦るユウキ。
ゲームであれば、マップを選択した後、パッと壁が表れ、それをクリスタル等で確認して終わり…のハズなのだが、現実となった今はと言うと、赤い線が大陸を囲むように動いて行くだけだ。
東側から時計回りに進む赤い線と反時計回りに進む赤い線、気が付けば全体の四分の一に達していた。
『もうすぐこの赤い線が繋がる。繋がればゲームの時みたいな城壁の完成になるのか…な?』
この時のユウキは、少しだけ不安があった。
この浮遊大陸が現実化し、色々な法則がゲームと現実とで合わさっている。
『本当にゲームの時のような感じで出来るのか?これは違うかもしれない…ならどうすればいい?』
そう考えて居る間に赤い線は進んで行き、もう少しという所まで来た。
ドクドクと心臓の音が鳴り響く。
寝っ転がっている自分の耳の奥に、心臓があるかのように響くその音に、不安感が増大していく。
『俺は何かを間違った…いや、勘違いした?!』
そう思った瞬間赤い線我繋がり、そしてユウキの体の中に異常が出る。
体の中から背中に向けて、何とも形容し難い『自身の何か』が吸い取られて行く。
「うわあぁぁー?!」
「マスター?!」
突然叫び声を上げたユウキに近づくリリーナだったが、その頭を持ち上げようとしても、何故か持ち上がる事は無かった。
「うそ!!何で!?」
ユウキの力は知っている…とは言え『この若返る前の状態』の力だ。
少なくとも、自分達十三人の将と比べて、それ程腕力等ある人物では無かった。
街にいる一般のドワーフと同程度の力だったと記憶していた。
それなのに今のユウキは、リリーナの腕力でも持ち上がらない程の力で座席部分に押し付られていた。
「なんでなんでなんで?!?!」
苦しそうに叫ぶユウキを必死に抱え上げようと手に力を入れるが、持ち上げる事は出来なかった。
リリーナは『十三の将』の一人であり、内政担当の『北斗の七将』の長でもあるが、それでも戦闘職の『南斗の五将』達と互角の力勝負が出来る程度には鍛えていた。
それなのに力づくでも持ち上がらない状態に、力以外の何かが働いていると推測した。
それ以前に、これ以上無理やり持ち上げれば、場合によってはユウキの首を支点に頭と体が折れるか千切れる可能性がある。
「くっ!!」
その事に気付くと、首下から手を抜き取り様子を伺う。
さっきとは違い、今のユウキは小さなうめき声を上げてはいるが、歯を食いしばって何かを耐えている状態だった。




