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54話

座席の上で目を瞑り、瞼の裏へと先程の画面を映し出す。


「ゲーム画面とシステムが同じと考えれば…恐らくいけるハズだけど」


中央に映し出されるマップへと意識を集中させ、自分の指を動かす。

勿論、現実の指は何も無い空中を右に左に上に下にと動いているのだが。


画面上のマップを半透明の指がなぞると、丁度地割れの部分でアイコンが出る。

ゲームの時のような『ピコン』と言う音は聞こえてこないが、それはゲームと仕様が違うからだろう…現実世界にスピーカーは無いし。


そんな事を思いながらも、出て来たアイコンに触れる。

感触は無いが、『触れた』と言う認識が頭の中に入って来た。


「なんだか不思議な感覚だな」


そう独り言ちると、アイコンの下を見る。

何やら文字化けしているが、恐らく作業実行に対する『YES』『NO』の選択肢だろうと予想する。


実際、ゲームをしていた時は、似たようなアイコンが出ていたので、間違ってはいない…ハズ?

それに、記憶が合っていれば、今出ている表示は『地形操作を初めますか?YES、NO』のはずだ。


地形操作とは、このキング·オブ·キングオンラインで領地を得た後、最初に実行している内政コマンドだ。

ゲーム内では、戦争をして奪った場合を除けば、最初の領地はランダム生成になる。


このランダム生成がクセモノで、運が悪いと、水場も無い小高い丘の上に小さな村と砦が一つなんてモノに当たる事がある。

当然、水場が無い為、作物を作ると言う事がとても難しい環境になる。


それをどうにかするには三つの方法がある。


一つ目は『井戸を掘る』。

これは、村人に命令する事により実行する事が出来るのだが、必ず水が出る訳では無い、これもランダムで出る仕様になっている。

しかも、出来た井戸のすぐ側に井戸を作っても『出ませんでした』の表示が出る事がある。


二つ目は『水源を引く』。

何処か水場、この場合河川があれば、そこから水路を引く方法だ。

こちらは井戸と違い、必ず水が用意出来るのだが、かなりの日数と費用が掛かってしまうのがネックだ。


大体のプレイヤーがこのどちらか、あるいは両方を選択するのだが、余裕があれば次の方法を取りたい。


それが三つ目『地形操作』だ。

これは、その名の通り地形を好みに作り変える事が出来る。

だったらそれで好きなようにイジれば良いんじゃね?っと思われるが、実はそう簡単にはいかない。


その理由が『必要ポイントの高さ』だ。

この地形操作を行うには、『名声ポイント』か『課金』のどちらかを使う事になる。


名声ポイントは地道に貯めれば、領地を得た時点でそれなりの数値になっているハズだが、それでも必要数値の高さに二の足を踏んでしまう事が多い。

更に名声ポイントは、他にも使う事が多い為、使い過ぎると後々困ってしまう事になる。


そして課金、こちらの場合、名声ポイント程は使わないが、当然ながら課金しないと使用出来ない。

無課金勢には厳しい選択になる。


では、ユウキはどうかと言うと…


「やべぇ、文字化けのせいでどっちを選択してるか分からない…」


そんな状態に陥っていた。



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